幼なじみのおしっこが最高に美味い。   作:雨宮照

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緊張。

物は試しだ。

ということでマツリと二人、一つの椅子に腰掛けてみることにした…………んだけど。

 

「……なあマツリ」

「……なぁにトモヤ」

「……あのさ」

「……なによ」

「…………タゲ取ってるな」

「…………タゲ取ってるわね」

 

……あーもうっ!

俺たち二人の見られること見られること!

クラスメート全員こっち見てるぞ。

穴があきそうなほど見られてるぞ。

穴があきそうなほど見られてるし、もう胃に穴があきそうだぞ。

 

「……なあマツリ」

「……なぁにトモヤ」

「……やめるか」

「……やめましょ」

 

さすがにこんな状況に耐えられなくなって、二人の意見が合致する。

ちょっぴり残念だが、このままだと精神がどんどんすり減っていってしまいそうだ。

毒状態にかかったみたいにジワジワと痛みが増してくる。

だから一刻も早くこの状況を打開したい、それが二人の意向なはずだった。

なのに……。

 

「……なあマツリ」

「……なぁにトモヤ」

「……なんで立ち上がらない」

「……そっちこそ」

 

不思議なことに、お互いに席を経とうとしない。

 

「……ねぇ、なんで立たないの」

「……いや、なんとなくな」

「……恥ずかしいんじゃなかったの」

「……ああ、恥ずかしい」

 

お互い煮え切らない態度。

――それもそのはず。

 

「「なんだかこの体勢、すごく幸せ!」」

 

二人の意見が、合致してしまっていたのだ。

俺はマツリの髪や身体、柔らかいものに触れて心地がいい。

おそらくマツリの方も、懐かしいこの感覚に溺れていることだろう。

そんな二人の思惑が合致して今。

 

ーー この教室は今、ドーナツ化現象に悩まされていた ーー

 

教室の中心にいる俺たちを中心に、ぽっかりと穴があいたみたいに人が輪を作っている。

俺たちを見つめるのは、このいちゃつく不思議な二人組をどうしようかという困惑の視線だった。

かたや学校でも話題の美少女でありながらコミュニケーションがとりにくいマドンナ。

かたや誰の話題にも上がらない、ぼっちこじらせ系男子。

どちらにせよ、冷やかしにくい存在だ。

俺たちの一挙手一投足に、その場にいる全員が注目する。

そんな静寂の中、俺はある一人のことだけを考える。

 

(……マツリ、大丈夫か)

 

それは隣にいる幼なじみのこと。

マツリは昔から人に注目されるところで大失敗することが多かった。

そのため、今もこうして心配しているわけだがーー。

 

(いや、こりゃダメそうだぞ……?)

 

なんだか真っ赤になってプルプル震えてるんだが!

泣きだしそうなくらいに恥ずかしがって、耳まで真っ赤になっている。

 

「…………っと……」

「…………えっ?」

「…………ちょっと……助けてぇ……」

「……あ」

 

プシャァァァァァッ……

 

静寂の中に響き渡る、水音。

耳をすませばどうやらその出処は自分の隣のようでーー。

 

「あれ、なんだかあったかいな」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

まさかと思った。

さすがに夢であって欲しいと、嘘であって欲しいと願った。

だが、俺が顔を向けた先では。

 

ーー マツリが、真っ赤な顔でおしっこを垂れ流しながら、ぺたんと床に座り落ちていた ーー


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