幼なじみのおしっこが最高に美味い。   作:雨宮照

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川にて。
ピエロ。


翌日は、休日だった。

時間に不規則な仕事をしてるうちの親父もその日は休みで、マツリのお父さんも休日。

ってことで、久しぶりにどこかへ遊びに行こうなんて、そんな話になった。

 

「わーい、川でバーベキューだー!」

「夏だねぇ、楽しみだねぇ!」

 

夏らしいことをしたがってた千夏やアウトドア派のマツリが、両手を上げて喜んでいる。

親たちは夏休みに川へ連れていこうと考えていたらしいが、なにかと忙しい大人からすると、行ける日に行ってしまったほうが確実らしい。

子どもにとっても夏休みを楽しみにしてて結局予定が合わなかったなんてことになったら嫌だから、大人しく楽しむことにしたのだ。

ただ、俺は未だお祭り気分にはなれないでいた。昨日の出来事が糸を引いて、頭から離れない。

……でも、ここは心を入れ換えて明るく振る舞うところだろう。昨日マツリが嘘をついたことなんて忘れて、今日は楽しむべきだ。

今日の俺はピエロでいい、泣くのは心の中だけで充分だと、しっかりと自分に言い聞かせる。

それから、うちとマツリの家。

二つに別れて河原へと向かうため、別々の車に乗り込む。車内では待ちきれなくなった千夏が俺のスマホで川のレジャーを調べたり、川の生き物を調べたり。

窓の外を過ぎ去っていく景色と合わせてそんな光景を微笑ましく見守っていたんだが、無慈悲にも危機は突然やってくる。

 

「……お兄ちゃん、どうして失恋からの立ち直り方とか、幼なじみの嘘、真意とかで調べてるの……? やっぱり、昨日のこと?」

「……千夏、やめてくれぇ。お兄ちゃんはピエロになるって決めたんだ……」

「そうなんだ! 頑張ってね! ……玉乗りとか練習しなきゃだね」

まだ小学生の千夏には遠回しな言い方がわからなかったらしい。俺は将来サーカス団に入るとでも思われてるんだろうか。

 

「……なぁ、千夏」

「どしたのピエロのお兄ちゃん」

「……ええっと、その事にも関連してなんだが……このことは、マツリには内緒にして欲しい」

「いいよー、千夏、秘密守れる!」

「よしよし、いい子だ」

 

俺がわしゃわしゃと頭を撫でてやると、千夏は嬉しそうに目を細めて「んんっ」と声を漏らす。こうすると、ほぼ百パーセントの確率で千夏はちゃんと秘密を守ってくれるんだ。

ってことで、俺の心の虚しさがバレないような環境づくりはだいたい準備が整った。

そして、車は河原に到着。

マツリの家の車はまだ到着していなかったため、うちの車に積んであったバーベキューの道具やら川遊びの道具やらを先に下ろして準備しておく。

すると、まもなく到着したもう一台からマツリが降りてきて……。

 

「マツリちゃん、昨日ショッピングモールでなにしてたの!」

「…………えっ」

「アウトォォォォォォォ!」

 

千夏が、秘密にすると約束しておいた昨日のことを開口一番にバラしやがった!

えっ、なんでなんで!

ちゃんと頭もなでなでしたのに!

 

「……ちょ、千夏……どうして……?」

「どしたのお兄ちゃん」

「いや、だって秘密にしてくれる約束じゃ……?」

「えっ、うん。秘密にしてるよ、ピエロのこと」

 

……そこじゃない!

俺はピエロのことも含めて昨日のことを黙っていて欲しかったんだが、千夏は俺がピエロになるってことを黙っていていて欲しいだけだと勘違いしたらしい。

ここでうまい具合にマツリが聞いてなければ九死に一生なんだが……。

 

「……千夏ちゃん、なんで私が昨日ショッピングモールにいたって知ってるの……?」

 

現実は、そんなに都合よく進んでくれないらしかった。


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