それから結局マツリにもらった麦茶を飲みながらホルモンうどんを食べて、水分補給もしっかり出来て。
それでもマツリのおしっこを逃すことが出来ない俺は、骨董市で日本風な湯呑みを購入して、そこにおしっこをしてきてもらうことにした。
「お、いらっしゃい! 若い人が珍しいね」
「あはは、ちょっと湯呑みを探してて……」
「おっと、それなら夫婦茶碗があるよ! 兄ちゃんたちカップルだろ? それなら縁起物を使っといたほうがいい! ほら、半額にしてやるから持って行きな!」
「「あ、ありがとうございます……」」
骨董市のおじさんの勢いに押されて、夫婦茶碗を購入してしまうというハプニングもあり。
「……さっきおじさんにカップルって言われたとき、お前否定しなかったな」
「……な、なによ! トモヤだって否定してなかったじゃん!」
「嬉しかったからな!」
「わ、私だって嬉しかったわよ! もうっ」
そのおかげでこんな会話もできて、お互いの気持ちがお互いの中でハッキリとしてきて。
そんな幸せに包まれながら、マツリのおしっこを一人、広場で待つ。
それからしばらくしてトイレから出てきたマツリは、二つの湯呑みを抱えていた。
一つにはもちろんまだあったかいおしっこが注がれていて、もう一つは空っぽだった。
さっきの夫婦茶碗を包んでもらったまま両方、マツリに手渡したからである。
「……してきてあげたよ?」
「ごくろう! いただきます!」
ゆっくりと近づいてくるマツリを見ながら、ふとなにかに違和感を覚える。
……マツリの持っている湯呑みのうち、おしっこが入っていないはずの女性用の湯呑みまで、少しだけ濡れているのだ。
まさか買ってすぐだからって、両方の湯呑みを洗ったのか?
それとも、水滴がついただけ……?
まあ几帳面なマツリのことだ、洗って持っていようという考えなんだろう。
そう思い、俺はその場では深く考えないことにした。
と、そんな思考に気を取られていたときだった。
「……ちょっと、なにジロジロ見て……ぁっ!」
「おま、大丈夫か!?」
湯呑みを運んで来ていたマツリが、盛大にすっ転んだのである。
幸いケガはないようだったが、湯呑みの中のおしっこは全て地面にぶちまけられてしまった。
「……うぅ。ご、ごめんね……、楽しみにしてくれてたのに……」
俺がとても楽しみにしてたこともあって、マツリはすっかり落ち込んでしまっている。
このままでは、せっかくの観光が台無しだ。
と、思っていた矢先、俺は足元にとんでもないものを目にした。
俺はそれを見つけるやいなや、マツリの肩を抱いて、そのとんでもないものがある地点を指さす。
「……どうしたの、トモヤ……?」
「……あれ、見てみろよ」
「……あ、あれって……!」
俺の指をたどった先、足元から視線の遥か先まで広がる、緑の大海。
……さっきまでがらんどうだった空き地に、森が出来ていた!