幼なじみのおしっこが最高に美味い。   作:雨宮照

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お菊の井戸。

それから三の丸御殿を見て、石垣に使われた石臼や石棺などの珍しいものもマツリに解説して回って。石棺に至っては説明書きがどこにもなかったから、勉強しておいたことが役に立ったと初めて思った瞬間でもあった。

だってさ、石垣に古墳から掘り起こした棺を使ってたなんて面白くないか?

知らなかったらなんてことないが、知っててあの石垣を見るとなんとも不思議な気持ちになってくる。

 

「あっ、あそこに人だかりが出来てるよ!」

「お、行ってみっか!」

 

突然マツリが前方を指差す。

その方向にあった人だかりに近寄ってみると、その中心には金網の張られた井戸があるようだ。

 

「すいません、いっぱい人がいるけどこの井戸はなんですか?」

 

俺が近くにいた観光客に声を掛けると、そのおじさんは親しげに話してくれた。

 

「ここは怪談で有名なお菊の井戸って言ってね、ほら……一枚、二枚……って例のあれだ。結構深いから覗いて行くといい」

 

おじさんに勧められるまま、俺もマツリも人がある程度捌けるのを待って、井戸に近づく。

すると、なるほど。

井戸の金網の奥を覗くと、床なんてなくて、底のない虚無な空間なのではないかと錯覚するほどにその穴は深かった。

 

「すごいね……、こんなとこに切り落とされたらお菊さんが呪っちゃうのも分かる気がするよ……」

「……うーん……」

「……? トモヤ、なに考え事してるの?」

「いや……ちょっとな」

「え〜、教えてよ〜」

「……わかった、隠すことでもないしな」

 

井戸を見て考えごとをしていた俺に、マツリが興味を持ったらしい。

食い下がってくるので、勿体ぶらずに教えてやることにした。

 

「……うちにも井戸を作って、マツリのおしっこをいつでも汲めるようにしようかと思ってな……」

「な、なんてこと考えてるのっ! バカっ!」

 

正直に答えたのに、怒られてしまった。

 

そして、ついに幼なじみと幼なじみは姫路城天守閣へと足を運ぶことにした。

時刻は午後三時。

階段を上った先にそびえる天守に近づくにつれ、頬を撫でる風が気持ちよくなっていく。

そんな天然のクーラーを肌に感じながら、俺たちの足取りは軽い。

 

「随分歩き回ったし、この辺で休むか」

「そだね! 写真撮ろうよ!」

 

天守閣前の広場で二人、自撮りで集合写真。

今年の年賀状の写真はこれに決まりかな、なんて数ヶ月も先のことを語って鬼を笑わせていると。

 

「なんか……こうしてると、新婚旅行みたいだね」

 

なんて、ちょっぴり恥ずかしそうにマツリが言うではないか。

……恥ずかしいなら言うなよ!

そんなふうに脳内で軽くツッコミを入れるも、自分も恥ずかしいのは事実。

でもこんなところで負けてられない!

俺は照れたことがなんだか負けたような気がして、マツリをもっと辱めようと画策する。

 

「……お前と本当に新婚旅行するんだったら、もっといい思いさせてやるよ」

「……っ」

 

おー、効いてる効いてる。

徐々に耳から赤くなっていくマツリを見て、ほくそ笑む俺。

こんな日常が続けば、或いはもっと甘い日々が訪れれば……なんて。

そんなことを強く意識する城前なのであった。

 

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