幼なじみのおしっこが最高に美味い。   作:雨宮照

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水源。

妹に手渡されたおしっこをまじまじと見つめる。色味はスポーツドリンクのような夏に最適な様子で不純物もない、まさに純粋に生み出された聖水のような佇まいをしている。

そこには俺が求めていた、濃厚な一杯とは違ったゴクゴク飲めるタイプの清らかなおしっこがあった。

 

手に取ってみると、コップがほんのりとあったかい。おしっこに関しては夏だからといって冷たいほうがいいわけではなく、やはりほんのり温みがあるほうがいつの季節も美味しい。しかし少しだけ冬と比べるとぬるいような気もするので、千夏の体温調節も健康的なことが分かって少しだけ頬が緩む。

 

「お兄ちゃん、まだー?」

 

ズボンを上げずに急かす妹を横目に、コップの縁を口元へ近づける。と、その前に匂いをテイストしなければならないな。

 

「……すんすん……んーっ……」

「ど、どう? お兄ちゃん……っ」

 

鼻を直接コップに近づけて動物のように匂いを嗅ぐ俺と、それをわくわくした目で今にも飛びあがらんとばかりに見守る妹。

自宅でのおしっこは自由度が高くていいものだ。学校で直におしっこを嗅ぐと理科の先生に怒られたものだが、自宅ならば手で仰いで嗅がなくても咎める人はいない。

むしろ千夏は直に嗅いでもらえて満足なようだ。

 

「……んっ……ほほう……」

「お兄ちゃん、どうなの……?」

 

妹はやはり絶えず急かしてくるが、なるほど。千夏が今日まで精度を仕上げてきたっていうのが鼻腔で感じられるほど、爽やかないい香りが空気中に漂ってくる。夏にふさわしい海の香りが肺の中いっぱいに広がって、冴えないぼっちの俺でさえ、自分がリア充なのではないかと錯覚するほどの気持ちよさを覚えてしまう。これは世に出回ったら核戦争をも起こしかねない国宝級のおしっこに違いない。いや、まあ今回はゴクゴク飲めるがモットーなため、どちらかといえば国宝というよりは水源といったほうが近いだろうか。だとすると俺はこの水源を生涯手放したくはない。いつかこの水源を奪いに来るものがいたら……、いたら……。

 

「……ぐすん……うっ……」

「ど、どうして泣いてるのお兄ちゃんっ! そんなに嫌な匂いだった……?」

「……いや、お前が嫁に行っちゃうのを想像したら……涙が……」

「おしっこの匂い嗅いでどうしてそんな感想にっ!」

「……千夏、ずっとお兄ちゃんと一緒にいてくれるか……?」

「……ま、まあ千夏もお兄ちゃんとはずっと一緒にいたいけど……」

 

頬を赤らめて零す千夏。今はそう思っていてくれても、いつその考えも変わるかわからない。まだ千夏は小学生だし、これから思春期なんかを通過していくと、もしかするとお兄ちゃんが嫌いになっていくかもしれない。

そう思うとやっぱり不安になってしまうのだった。

 

「……よし、飲むぞ、千夏」

「う、うん」

 

気持ちを切り替えて、目の前の透き通ったおしっこを見据える。そしてその温度を喉奥に刻みつけるかのように、俺は一気にそれを呷った。すると、口の中に仄かな甘みが広がって、身体の中心から指先まで、クーラーに冷えた全身がほんのり暖かくなる。さらに汗と似た成分の薄いおしっこは身体にしっとりと馴染んで自然に吸収され、火照った身体を存分に癒してくれる。やっぱり夏はスポーツドリンクや麦茶なんかより、百倍おしっこを推奨するべきだ。清涼飲料水の会社はそろそろおしっこに目をつけるべきだと思う。

 

「……ど、どうだった? お兄ちゃん……」

 

そこで俺は期待と不安が入り交じった視線が向けられていることに気付く。ゴクリと音を立てて聖水を飲み込むと、俺は千夏に笑顔を向けてこう言った。

 

「……もう一杯用意してくれ!」

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