幼馴染は俺のいいなり 作:椚@
ある日のこと。
学校の放課後で帰り支度をしていると、雪羽に二人の女子が話しかけてくるのが見えた。
「おい。ちょっとついて来いよ」
「えっ? な、なに?」
「いいから。来いっつってんでしょ!」
「あ……う、うん……」
相手の態度に気圧されたのか、雪羽はしぶしぶ席を立って女子の後を追っていった。
なんだろうなあれは。
嫌な予感がする。俺も付いて行ってみよう。
雪羽達の追っていると、校舎の裏側に辿り着いた。ここはひとけの無い場所だ。
「──んだって? 聞こえねーよ!」
突然、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。
「なぁ。お前のせいだってこと分かってんのか?」
「そ、そんなこと知らないよぅ……」
「うるさいな! アンタのせいで迷惑してるだよ!」
なんだなんだ。
さっきの女子二人が雪羽を責めてるのか?
「わ、私は何もしてないのに……」
「はぁ? お前が誘惑したんだろ? じゃなけりゃお前みたいなやつに告ったりしないだろ!」
「そうだそうだ!」
「え、えぇ……」
何の話だろう。
雪羽が困惑しているのが目に浮かぶ。
「お前が竹中の気を引こうとしたんだろ? そんでキープ君でも増やそうとしたんじゃねーの?」
「うっわサイテー。とんだビッチじゃねーか」
「私はそんなことしてない……」
「はぁ!? 嘘ついてんじゃねーぞ! じゃあなんで竹中の気を引こうとしたんだよ!?」
「だから……それは向こうが勝手に……」
……ははーん。
何となく読めてきたぞ。
「とにかくだ! 竹中がアタシらを避けるようになったのはお前のせいだろうが!」
「マジでムカつくわー。こんなネクラ女に取られるなんてよぉ」
「うぅ……」
やっぱりな。
どうやら雪羽に告白した竹中のことで揉めてるらしいな。
あの女二人は、竹中に惚れてるらしい。けど振り向いてくれないのは、雪羽のせいだと思っている。
だから八つ当たりをした……ってところか。
……アホらし。
惚れた男が取られたと勘違いしただけじゃねーか。
「おい! なんか言ってみろよ! クソビッチがよぉ!」
「チョーシに乗るなよテメェ!」
あーあ。
仮にも女なんだから、そんな汚い言葉使わなくてもいいのに。
どう考えてもあいつらに問題がある。だから竹中に相手されないんだろうが。
全く。仕方ない。
雪羽はずっと縮こまってるし。助けてやるか。
「おい。その辺にしとけよ」
「なっ……響!」
「……ッ!」
スマホを片手に持ったまま近づいていく。
「寄ってたかって弱い者イジメとか、くだらねーことしやがって」
「べ、別にアタシらはイジメてたわけじゃ……」
「そ、そうだよ! ちょーっと聞きたいことがあっただけだよ! な、なぁ?」
「そ、その通りだよ! 普通に会話してただけだって!」
なに言ってんだこいつら。
そんな言い訳通じるわけないだろうに。
「ほお? あくまでイジメじゃないと言いたいわけか?」
「あ、ああ」
「そ、そんなことするわけないじゃん!」
なんでバレないと思ってるんだろうなこいつらは。
「まぁいいや。判断するのは学校側に任せるとするわ。さっきの場面、スマホで撮ってあるから」
「なっ……!?」
「マジかよ……」
うちの学校は、イジメに対して厳しく取り締まるほうである。先生達も目を光らせているし、暴力行為が発覚すれば退学ものだ。
にも関わらず、イジメが無くならないってのはどういうことなんだろうな。
世の中から犯罪が無くならないのと同じ理屈だろうか。
「わ、悪かったよ! 少し興奮しすぎただけっての!」
「ま、まさかセンコーにチクったりしないよな……?」
「さぁな。それはお前たち次第だ。二度とこんな真似しないと約束するなら、今回のことは忘れてやる」
「……チッ。もう関わらねーよ。これでいいか?」
「ああ」
「もう行こうぜ。やってらんねーよ」
「くそっ……」
そして二人は逃げるようにして立ち去って行った。
ふぅ。
ひとまずこれで一安心かな。
「あ、あの……リョウくん……」
「全く。何してんだお前は。あのくらい自分でケチらせよ」
「で、でも……」
「そんな態度だから舐められるんだよ。もっと強気にしていればいいんだよ。そうすりゃあんなアホみたいな連中に狙われることもないだろ」
「う、うん……」
雪羽は昔からこうだ。小学生の頃から変わってない。
常に弱気で大人しくしているもんだから、ちょくちょくイジメられることもあった。
その度に俺が助けてやってるんだよな。
「リョウくん……」
「何だよ」
「あのね……あ、ありがとう」
「……このくらい大したことじゃないっての」
「で、でもね……私、すごく嬉しかったよ。絶対助けに来てくれるって、信じてたもん」
「あのなぁ……いい加減、俺に頼らずに何とかしろってんだ」
「えへへ……」
こいつは本当に学ばないな。
俺が居なかったらどうするつもりなんだろうか。
「まぁいい。さっさと帰るぞ」
「うん。あのね。今日はハンバーグにしようと思うの。よかったらリョウくんも食べに来ない?」
「お。いいね。腹減らしてからいくわ」
「楽しみにしててね! ガンバって美味しく作るから!」
そんな会話をしつつ、一緒に帰宅することにした。