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「─して、目を覚まして……! ソラくん!」
必死に呼び掛ける女性の声がきこえる。
ここは地獄と呼べる様な場所だった、横転し、転がり落ちていった車内ではほとんどの乗客が無惨な姿となっているか、痛みや怪我等で身動きがとれないでいた。
「─────」
ソラと呼ばれた少年は全身が痛み声を出すことができない。
女性はすぐにソラが目を覚ましたことに気がつくとまるで自分の子供にするかの様にソラの頬を優しく撫でる。
その頬を撫でる手は驚くほどに冷たく、自分の血で濡れていた。
彼女は腹部に酷い傷を負っていた。
その傷が原因で女性は命を落とす事になる。
彼女だけではない、彼女の夫、その友人であるソラの父もソラのためにその全てを懸けて死んでしまった。
「…私達には、ソラくんと同じ年頃の娘がいるの…もしも会うことがあれば娘と友達になってくれる?」
最期の力を振り絞り女性はソラに二つの指輪託した。
「はい、約束します」
三年たった今でもソラはこの時の夢を見る。
波乱の日々が幕を開けるこの瞬間にも─
──────────────────────
「──それじゃあSHRはじめますよー」
という声で俺は目を覚ます。
声の主はこのクラスの副担任の山田真耶、ここに入学するにあたって、何かと世話になっている人物だ。
「深雪くん、みんなで自己紹介するからちゃんと起きてて下さいね?」
めっ! といった感じで山田先生に声をかけられる。
どうやら寝ているのに気がついていたらしい。
「……はい」
そう答えて、背伸びして外をみる。
今いる場所はIS学園。
普通なら男には無縁の場所ではあるのだが、俺と隣の席の幼なじみは話が別である。
俺の幼なじみである織斑一夏がISを起動させた影響で他にも男性で起動出来る者が現れるのではと世界各地で検査が行われて見つかったのが俺、
今は自己紹介が進んでいたはずだが何故か周囲がざわつきだす。
その原因は一夏の自己紹介の番であったかららしい。
「織斑一夏です、よろしくお願いします─────────以上です」
山田先生と一夏以外の人間が思わずずっこけてしまう。
その彼女でさえ困った顔をしている。
この後、クラス担任を名乗る女性が現れて出席簿で一夏の頭を叩き、周りも静かにさせて自らの名前を名乗る。彼女の名は織斑千冬、つまりは一夏の姉である。
彼女の登場で一部生徒(九割程)がお祭り騒ぎになるが、なんやかんやで順番が回ってきた俺は席を立ちクラスメイトの方を向いて自己紹介をする。
「深雪空です、趣味は料理で好きなものは昼寝と甘いもので苦手なものは夏です。 ISについてはわからない事だらけだけれど、これからよろしくお願いします」
まぁこのくらいなら十分だろう、と俺は席につく。
その後は問題なく時間は進み、今は一時間目の休み時間、少しでも復習をしておこうと、分厚い分厚い参考書を取り出そうとしていると、
「なぁ空、ちょっといいか?」
一夏に声をかけられた。
一夏の方に顔を向けると彼の隣にもう一人の幼なじみである箒がいたのだ。
「あぁ、平気……本当に久しぶりだな、箒」
「空もな、一夏もそうだがよく私だとわかったな」
「ほら、髪型一緒だし」
「一夏…それだと髪型違うとわからなかったって事にならないか?」
「確かにそうなるな、どうなんだ一夏」
等と久しぶりの再会で会話が盛り上がる三人だが二時間目開始のチャイムが鳴りそれぞれ席に戻る。
その直後に織斑先生と山田先生が教室に現れ、二時間目の開始となった。
◆
「──であるからして──」
と、すらすら教科書を読み授業を進める山田先生。
ギリギリではあるが何とかついていけている俺に対して隣の一夏はというと。
「…………」
教科書をぱらぱらとめくっては難しい顔をしている。
今はまだあの参考書さえ読んでいれば理解出来る内容のはずだが、一夏は誤って捨ててしまい一切読んでいないのだ。
「織斑くん、深雪くん、何かわからない所がありますか? あったら訊いてくださいね、私は先生ですから」
山田先生が一夏の様子に気がついたのだろう、えっへんと胸を張りながら一夏と俺の近くに来る。
「俺は今のところついていけているので大丈夫です、ありがとうございます」
「そうですか良かったです、織斑くんはどうですか?」
「先生! ほとんど全部わかりません!」
本日二度目のずっこけ、今度は山田先生もバランスを崩した。
「いってぇっ!?」
織斑先生により、一夏の頭上に出席簿が振り下ろされるまでそう時間はかからなかった。
ヒロインが出てこない1話。
長くなるので千冬はほぼカットな1話(セリフなし)