時刻は午後七時。頭に包帯を巻いた蒼兎がリビングに行くとそこにはエプロン姿の咲夜が調理場で夕食を作っていた。
「悪いな、そんなことさせて。」
「いえ、好きでやってることですから。」
「あの!さっきはありがとうございます。まだお礼言ってなかったですよね?」
「気にするな、こっちこそ悪かったな。好きでもなんでもない異性から抱きつかれるなんて、嫌だったろう?」
「い、いえ、不可抗力ですから。」
「れ、霊夢達呼んできますね!///」
「ん?ああ。」
こうなったのは数時間前、ショッピングモールでのこと。
「霊夢……そこをどけ。」
「いやよ、咲夜には指一本触れさせない。」
「れ、霊夢……。」
「霊夢さん……。」
「お、おい蒼兎。いいだろ?別に正体を知ってるやつが増えたって……。」
「龍斗、知らないようだから教えてやる。今この世界はライダーに恐怖すると共にその力を欲しがってる。その力を手に入れるためならどんな情報にも巨額の金が入ってくる。仮面ライダーの正体なんて情報が出回れば取り返しがつかない。」
「これは俺の体験でもある……。」
「咲夜がそんなヤツに見えるの?」
「俺とその娘は、まだ知り合って数分程度だ。」
そこで突然、何かが倒れかけている音がする。咲夜の真横に置いてある雑貨店の棚が倒れそうだった。いち早く気づいたのは蒼兎で霊夢を追い越し咲夜を守るように庇って落ちてきた棚が頭と激突する。
突然のことに困惑している咲夜をよそに蒼兎は棚を片手で退かす。
「だ、大丈夫!?」
龍斗達が駆け寄ってくるが蒼兎は気にせず咲夜に声をかける。
「怪我はないか?」
「だ、大丈夫ですけど……!」
蒼兎は頭に激痛が走っており触れると手が血だらけになった。地面に鮮血の雫が滴る。
「チッ、分かったよ。事情も話すがその前に帰らないとな。」
「当たり前でしょ!?このバカ!」
白神シェアハウスで治療を受けながら咲夜に事情を話す蒼兎。仮面ライダーの事や、自分達の事を霊夢にしたように話した。
「ったく、怪我はあまりしたくないんだがなぁ……。」
夕食中、蒼兎は心底嫌そうに呟く。
「蒼兎、もしかして痛いのは苦手なのか?」
「いや、別にそういうわけじゃない。ただ、どんな怪我でも絶対治るがどんな怪我でも治りがクソ遅せぇんだよ。だからこの頭も一ヶ月近くは包帯巻いたまんまだ。」
「大丈夫なの?それ?」
「私のせいで……ごめんなさい……。」
「いやいや、咲夜ちゃんが謝ること無いよ!」
「私達も不注意だったわ。」
「俺が振った話題だかまぁ、気にするな。」
『でもどんな怪我でも絶対治るんだよなぁ……。』
「どんな怪我でもって……腕吹き飛んでも?」
「………まぁ。」
「目玉逝っても!?」
「………ああ。」
「脊髄やっても……?」
「………おう。」
「お兄ちゃんって今まで何やってきたの……?」
「この話は辞めだ。それより、なんでインベスが現れたか、だ。」
「確かに……あれはなんなんですか?」
「蒼兎は何か知ってんでしょ?」
「ああ、仮面ライダーの敵だったヤツだ。でも、とあるアイテムで召喚できる。」
「十中八九そのアイテムを持たせたのは転生者ライダーだ。実際会ったことあるのは白い魔法使いだけだからハッキリとは言えないが……。」
「そんなことしてなんの意味があるの?」
「分かるんなら知りたいね……。」
翌日、学校ではショッピングモールでの怪人騒ぎで話題は持ち切りだった。そして知人である渚や志田からは頭の怪我について心配されたが昨日のショッピングモールでの騒ぎに巻き込まれたと言うと信じてくれた。
「じゃあ蒼兎くんは怪人を見たの?」
「ああ、少しな。志田みたいな武偵が早く来ないからだぞ?」
「うっ、それを言われると心苦しいな。」
「いや、冗談だ。」
「龍斗、蒼兎って冗談言う奴だっけ?昨日頭打ってどうかしたのか?」
「失礼な奴だなおい。」
「ははは!志田、面白ぇ事言うな!」
そんな談笑をしていると蒼兎が殺気のような気配を感じ取り、教室の窓から校門を見る。そこには茶髪に様々な装飾をつけた軽薄な男と中性的な顔立ちに優しげな笑みを浮かべた青年が立っていた。
しかし、蒼兎はその二人から感じる尋常ではない殺気に警戒している。軽薄な男が腕にデバイスを付ける。そのデバイスに蒼兎は驚愕する。
上司から貰った転生者の情報の中の仮面ライダーが使うデバイスと青年の持つデバイスが同じだったからである。直感的に蒼兎はその彼が転生者ライダーであることを察知する。
そしてもう一人もそうであろうと予想し、蒼兎は席を外す。龍斗が小声で話しかける。
「転生者か?」
「ああ、だが普通のよりヤバい方だ。」
「ッ!?ライダーの方か?」
「こっちで接触してみるからお前はこいつらとの時間を稼げ。」
蒼兎はそう言って転生者ライダーの方へ向かっていく。一階に降りてスクラッシュドライバーを腰に巻く。ロボットゼリーを取り出しながら呟く。
「ったく、なんでうちの学校に……!」
蒼兎はグリスに変身し、裏門から回り込んで転生者ライダー達に声をかける。
「何するつもりだ?」
軽薄な男は声を掛けられると動じることなく蒼兎を見る。
「? ああ、マーシーが言ってた俺ら以外のライダーね。」
中性的な青年は憐れむように蒼兎を見る。先程は気づかなかったが、どうやら腰に小刀がついたドライバーを巻いていた。
「仮面ライダーグリス……か、僕らと同じ名前を冠することが出来るのに敵対とは……皮肉だね……。」
「まっ、いいや。今はアンタに用はない。」
「俺にはあるぜ。お前らが何しでかすか分からないからな。」
「はぁ、しょうがないね。」
軽薄な男は懐から緑色の目玉型のアイテム『ネクロムゴーストアイコン』を取り出しボタンを押す。
『スタンバイ!』
中性的な青年もブドウの装飾がある錠前を取り出し解錠すると頭の上にブドウ型のアームズが現れる。
『ブドウ!』
軽薄な男はアイコンをデバイス『メガウルオウダー』の窪みにセットしボタンを押す。
『イエッサー!』
メガウルオウダーからパーカー型のゴーストが浮遊する。ブレスレット状態からデバイスを起こして上に向くようにする。その上から目薬のような装置のボタンを押して、液体が滴る。
『ローディング!』
『テンガン!』
『ネクロム!』
『メガウルオウド!』
『クラッシュ・ジ・インベーダー!』
スーツが形成され、浮遊していたパーカーを着込むように纏い男は『仮面ライダーネクロム』に変身した。
中性的な青年も錠前『ブドウロックシード』を小刀がついたドライバー『戦極ドライバー』の窪みに嵌めてロックする。中華風な電子音が流れ、小刀を倒しカバーが開く。
『ブドウアームズ!』
『龍・砲・ハッハッハッ!』
ブドウが頭から被さりスーツを形成する。アームズが展開し中華的な甲冑となり『仮面ライダー龍玄』に変身した。
「戦うってか?」
「邪魔するつもりならね。」