蒼兎は極度の集中状態となって三人の攻撃を退けていた。肉弾戦を仕掛けるネクロムの一挙手一投足全てをかわすかいなし、絶え間なく迫ってくる龍玄の援護射撃をギリギリの状態で避け、ネクロムと龍玄の射程距離から離れすぎれば現れる爆裂の魔法陣をかわす。三人の攻撃を紙一重でかわすが決定打が与えられない状態に歯を食いしばる。
避け続けているがそこにもいずれ限界がくる。しかし相手は自分が倒れるまで攻撃するのを止めはしないだろう。
「(クソ!龍斗の戦線離脱がこれほど響くとは!)」
「(相棒を使う暇さえ無い!)」
「(この状態を切り抜けられる決定打が無い!)」
雷華はスナイプに向かっていくが足を撃たれてしまい近づけない。階段近くに隠れてエネルギー弾から身を守る。先程からずっと近づけずにいた。近づこうとすれば撃たれてしまい攻撃ができない。
持っているネビュラスチームガンも風華ほどの射撃の腕があるわけではないのでエネルギー弾を撃ち落とすこともできない。せいぜい牽制程度の役割しか持たなかった。
「(これ詰んでる……近接戦闘の私とは相性が悪すぎる……!)」
「さっきの威勢はどうしたコラァ?」
「(うぅ……ヤバい……!)」
「(雷華ちゃんが……わたしは見ていることしかできないの!?)」
被弾覚悟の突撃をかけようとした雷華だが潜めていた場所から被弾する。牽制のスチームガンの射撃も撃たれながらで狙いが定まらず余計に被弾してしまう。
仮面ライダーでは無いとはいえそれなりの装甲があるエンジンブロスでもあまりのダメージに装着者の雷華は内出血を起こしかなりダメージを負っていた。
「(うぅぅ……痛い、でも諦めるわけにはいかない!)」
「(雷華ちゃん!!)」
「
『戦うの?痛いと思うよ?』
「誰!?」
『私は貴女に仕える者。あれを見て、止めたいって思うってことは戦うってことでしょう?』
「……。」
『戦う力が欲しいの?痛い思いをするでしょう、辛い思いをするでしょう、それでも戦いたいと思うの?』
「………戦うってことは痛い思いをするのも辛い思いをするのも、当然なんだよ……。分かってる。」
「龍斗くんも、風華ちゃん雷華ちゃんも、それほど覚悟して戦ってるってことは。」
「私には無いよ、覚悟なんて……。人を殴ったことなんてないし、なんなら傷つけるようなことも言ったことがない……。」
「だから、何もできなかった……お兄ちゃんの時も……何も……。」
『それで?』
「だからお兄ちゃんはいなくなっちゃった……失ってしまったの……。」
「もうあんなに悲しい思いはしたくない!戦うってことはそれより痛いし辛いかもしれない!けど!」
「今私が立ち上がらなかったら!同じことを繰り返すだけだから!!」
『ふふ、分かったよ。我が主様?』
『私なら貴女に力をあげられる。あの娘も助けてあげられる。』
『傷つく覚悟ができた、辛い思いをする覚悟ができた、なにより、力を欲した。これほど求められればもう何も言わなくていいね!』
『いいよ!力をあげる!さぁ、主。』
『私を存分に使って!!』
「うぅぅぅ……痛ったぁぁ……。」
「おいおい、情けねぇ声出してんじゃねぇよ。ここはもう戦場だぜ?命掛けてかかってこいや!!」
隠れている雷華の横から結衣が通り過ぎる。
「ええ!?結衣ちゃん!?」
「ああ?なんだぁてめぇは?」
結衣はただ、雷華の横に立っているだけで何も言わない。
「結衣ちゃん!危ないから離れてて!!」
雷華に呼ばれた結衣は雷華の方を振り向き、笑顔で答える。その目は赤く光っているように見えた。
「大丈夫だよ、雷華ちゃん、私も戦うから。」
腰に赤い液体のような物が現れ、それは紅と金を基調とした青いレバーが付いたドライバーを形成する。それを見た瞬間、使い方が何故か頭から浮かんでくる。
『エボルドライバー!』
電子音が鳴り響き、結衣の右手に赤いコブラを模したフルボトルによく似たアイテム『コブラエボルボトル』左手に歯車のようなマークが描かれたピストンを模した『ライダーエボルボトル』が現れる。
キャップを合わせ、ドライバーの二つの窪みにエボルボトルをセットする。
『コブラ!』
『ライダーシステム!』
『エボリューション!』
ドライバーから結衣の前後にパイプが伸びてパイプの中に成分が注入されていく。
ドライバーのレバーを回すとベートーベンの交響曲第9番のような待機音が流れながら、パイプからランナーとして形成される。その後ランナーは黒い霧に覆われ、それぞれのランナーに黄金の歯車が纏われる。
『Are you ready?』
その電子音に結衣は「傷つく覚悟はいいか?」と問われているような気がした。しかし、もう自分は戦うと決めた。これから後には退けない、退かない。
「スゥ……変身!」
自身の変える、覚悟の合図としてその言葉を叫ぶ。
『コブラ!コブラ!エボルコブラ!』
その電子音と共に結衣を挟み込む形でランナーが合わさり、黒い霧と黄金の歯車が混ざり合う。現れたのは紅を基調としたボディ、地球儀を模した肩アーマーや星座早見盤とコブラを模した目が特徴の仮面。
『フッハッハッハッハッハ!』
対峙する敵をまるで嘲笑うかのように流れる電子音と共に現れたその戦士は数多の星々を喰らい自らの糧とする仮面ライダー。
『仮面ライダーエボル』
「エボル……Phase1」
「貴方には今から、雷華ちゃんが受けた分、攻撃を加えます。」
「ハッ、やってみろよ!「じゃあそうしますね」ッ!?」
瞬間移動したかのような高速移動でスナイプの後ろに現れた結衣は回し蹴りでスナイプを蹴り飛ばす。スーパーボールのように跳ねながら吹っ飛ばされたスナイプは校内の廊下の端の壁に激突することでようやく止まった。
「グフッ、マジかよ化け物が……!」
「まだ終わってませんよ。」
先程まで自分が元いた位置までそれなりに距離がある筈なのに、もう敵は目の前にいた。マグナムで撃ち抜こうとするが手を蹴られ狙いがそれてしまい、そのまま蹴られる。学校の壁を紙同然に破壊しスナイプは外へ放り出される。地面に落下した所で強制変身解除される。
「結衣……ちゃん……。」
雷華は困惑した様子で潤動を解除し、傷だらけの体で痛む部分を抑えながら結衣の元へ近づく。
「………!」
結衣は変身を解除し、雷華に抱きつく。
「ええ!?///結衣ちゃん!?///」
「ごめんなさい……もっと早く私が……戦えてたら……!」
「!! いいんだよ!?結衣ちゃん!私は大丈夫だから!」
自分の胸の中で泣く結衣に対して雷華はあたふたした様子だったが、そっと背中をさすってあげた。
「ッ!?」
「ハハッ!まだ避けんのかよ!」
「中々、シブトイデスネ?」
「でも、これで終わりです。」
ネクロムはデバイスを起こしてボタンを押す。
『デストロイ!』
目薬のような装置のボタンを押し液体を滴らせる。
『ダイテンガン!』
『ネクロム!オメガウルオウド!』
龍玄はドライバーの小刀を倒す。
『ブドウスカッシュ!』
白い魔法使いは指輪を変え、ドライバーに翳す。
『YES!』
『キックストライク!』
『アンダスタンド?』
ネクロムは足に緑のエネルギーを纏い、龍玄はブドウの果汁のように溢れるエネルギーを足に纏い、白い魔法使いは魔方陣を足に纏い、三人は飛び上がり、蒼兎へ足を向けて蹴りを放つ。
「「「ハァァァ!!!」」」
蒼兎はレンチを下げて足にエネルギーを集中させる。
「相殺はできなくても軽減はしてやる……!」
蒼兎も飛び上がり、スクラップフィニッシュを放つ。
三対一のキックは拮抗する暇もなく蒼兎が押し負け、蒼兎は三人のライダーキックを食らう。爆発を起こし落下する蒼兎。ハザードレベルが高かったおかげで変身解除はしなかったが、立ち上がるどころか腕すら上がらない状態だった。
「クソ……動け……!」
無理にでも立ち上がろうとするがそれでも膝をついてがやっとだった。
「マダ反抗ノ意思ガアルトハ。」
「すげーなおい?」
「あとは僕が
しかし三人は突如轟音が鳴り、その方向へ向くとスナイプが降ってきて地面に落ちたと同時に変身解除する。
「ナッ!?」
「スナイプ!?」
「どうしたんですか!?」
「(雷華か……?)」
『相棒!今のうちじゃないのか!?』
相棒が語りかけてくるが蒼兎の意識は朦朧としてきていた。
「不味……い、…この、ま……ま、じゃ………。」
三人はボロボロとなったスナイプの方へ向かっていったままだが蒼兎は覚束無い様子で懐から相棒であるアイテムを取り出そうとする。しかし白い魔法使いが魔法を放とうとする所を見て、蒼兎はブレイカーをビームモードにして地面に向かって撃つ。
驚いた白い魔法使いは腕で防ぐがその間に蒼兎は居なくなっていた。
「仕方アリマセン、仲間ガコンナ状態デハ今後ニ支障ヲキタシマスシ撤退シマショウ。」
『テレポート!ナウ!』
白い魔法使いは人数分の魔方陣を出現させ、その中へ全員消えていく。すぐ近くの壁の後ろでもたれていた蒼兎は転生者ライダーが撤退したことに安堵する。
「もうダメだなこりゃあ……。」
クラクラする頭を抑えると手全体が自身の血で真っ赤に染まる。頭を抑えながら防犯カメラが映らないような場所へ向かう蒼兎。校舎裏に着いた蒼兎は緊張の糸が切れたのかバタリと倒れ込む。
二時間後、蒼兎は意識が戻った龍斗によってシェアハウスへと連れていった。更に三時間後、蒼兎も意識を取り戻す。
「………シェアハウスか?」
「蒼兎!!」
「蒼兎!」
「お兄ちゃん!」
「大丈夫か!?頭からスゲー血流れてたけど!?」
「痛っ……まぁな。そういうお前こそ、意識失った挙句変身解除したろ?大丈夫なのかよ?」
「お兄ちゃん、私も戦うから!お兄ちゃんが怪我しないように私も戦うから!」
「何言ってんだお前……?」
「結衣ちゃん、変身したんだよ。詳しくはそこの人?から聞いた方がいいよ。」
雷華が指さす方向は結衣の携帯だった。携帯の画面には赤い球体が映されていた。
『ヤッホー、主のお兄さん?私はエボルト、まぁ見ての通り人間じゃあないよ。』
「は?」
「つまりお前は結衣の転生特典で、原作と違うのは神に作られて女だってことか?」
『まぁそゆこと、こんななりだけど女の子なんだぞ?』
「はぁ……この頭痛は怪我だけじゃない……きっと怪我だけじゃない……。」
「原作ってどういうこと?」
「こいつ、エボルトは仮面ライダービルドのラスボスでホントは男で星を狩ってるブラッド族なんだよ。しかも超がつくほどの極悪人。」
『ところが私は超がつくほどの善人な女の子でーす!』
『イェーイ!』
「私は結衣ちゃんとエボルトちゃん?のおかげで命拾いしたの……。」
「全く持って自分の弱さを実感したよ……。」
「蒼兎、ホントに悪い!悪かった!俺が足引っ張ったばっかりに……。」
「わ、私も……なんの役に立てなかった……。妹どころか仲間まで守れなかった自分が腹立たしい……!」
風華は悔しさのあまり涙を流す。
「お姉ちゃん……。」
「誰も悪くねぇよ。慰めを言ってるわけじゃねぇ。もしお前らが来なかったら、俺は一人だったし、もっと早い段階でこうなってたかもしれないしな。」
「「「「…………」」」」
蒼兎が寝ていた隣に霊夢が寄ってくる。
「……霊夢?」
霊夢は蒼兎の顔を見据える。目から涙を流していたがそれでも蒼兎を見据えて言う。
「もう、絶対……無理して来ないで……!!」
「最初はアンタなんか、そんなに興味無かったわよ……でも一緒に暮らしていくうちに、アンタが……仮面ライダーがどんなものか分かって……だから……」
「……傷ついてるところ見てるとこっちまで気分悪いのよ……だから!」
「……もうそんなになってまで、無理して来ないで!!」
霊夢の心からの叫びを聞いた蒼兎は、既に壊れた感情にも少しだけ響いた。
「お前、そんなこと言うような奴だったか?」
「……なによ、悪いの?」
「……仮面ライダーってそんなに大変なんですね……。」
「十六夜、これを見て分かったろ?俺らがどれだけ危険なことしてるか?どれだけ危ないか?」
「今ならまだ、引き返せる。」
「………考える時間を、くれませんか?」
「ああ」
「蒼兎、まだんな事言って……。」
「龍斗、これは俺らだけの問題じゃない。十六夜の問題でもある。
「咲夜に100%害がないとは言い切れない。むしろ俺らと関係があると思われれば襲われる可能性だってあるんだ。だから、お前らがただ一緒にいたいっていう理由だけで、巻き込んだらいけねぇんだ。」
「これは霊夢にも言える。一緒に暮らして仲間意識が芽生えるのも結構だが、身の安全も考えて欲しい。」
『相棒、言い方ってもんがあるだろ。』
「止めるな、これは事実だ。」
「俺も危険が及ばないよう死ぬ気で努力する。だが、努力だけじゃどうにもならない事だってある。」
蒼兎の重い発言に霊夢と咲夜は考える。
「龍斗達は覚悟して、結衣も覚悟してくれた。結衣はまだ引き返してもいいと思うが、今日のことで戦力不足を実感したし、折角の覚悟を無下にはしたくない。」
「だが、しつこいようだが霊夢と十六夜は別なんだ。」
『とりあえず今は休んだ方がいい。今日の騒動で学校もどうせ明日は休みだ。体を休めた方がいい。』
各々自室へ休息をとるため、部屋へ戻っていった。