転生省特典犯罪制圧課活動記録   作:蒼かえる

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ファイル24 蒼兎のEcho

蒼兎が消えた日、学校は事後処理に追われたため龍斗達含め生徒達は帰宅した。帰宅後、結衣は直ぐに自室へとこもってしまい龍斗達も何も言えず、ただ黙っていることしかできなかった。

 

午後五時をまわった頃、インターホンが響く。龍斗は周囲を見回し、全員顔を俯かせたままだったので自身が見に行く。ドアを開けて顔を出すとそこに居たのは自分と風華、雷華を蒼兎の元に行かせた上司の女神と黒いスーツに頭に光る輪を浮かばせた複数の天使、そして白衣を着た緑の長髪の少女が立っていた。

 

「今後のことについて、少々お話してもよろしいですか?」

 

 

 

 

 

天使たちは蒼兎の部屋があった場所へ向かって行き、上司と白衣の女性はリビングに来た。上司の登場により風華と雷華は少し驚くも話を聞く。

 

「どうしてここへ?」

 

「いえ、白神くんが死んでしまったので今後のことについてお話しようかと。」

 

「……ッ!」

 

「あーあ、ちょっとは言葉選びましょうよ女神さま~?」

 

「そうは言ってもですね、詩音?」

 

「とにかく、みんな話聞いて欲しい。」

 

龍斗が全員に言ってリビングのソファに座らせる。咲夜が結衣を呼びに行ったが反応がなかったため、エボルトが結衣の体を半ば強引に借りて代わりに話を聞くという。

 

「揃いましたね、ああ、彼ら彼女らはお気になさらずに。」

 

今でもリビングのドアの後ろでせっせと何かしている天使達、そして上司が口を開く。

 

「まず、今回のことについて私からなにか貴方達に言うことはありません、引き続き、転生者達の魂と特典を回収してください。」

 

「なっ!?」

 

「今回について何も言うことがない!?」

 

「ふざけてるんですか!?」

 

「まぁまぁ落ち着いて、話を聞いてくれ?」

 

白衣の女性が龍斗達をなだめる。

 

「女神さまも、あんまり刺激するようなこと言っちゃダメだって?」

 

「分かりました、では本題です。」

 

「先程も話した通り、これからも転生者たちの魂と特典の回収、並びに元凶であるとされる女神の退治を命じます。」

 

「………。」

 

「女神さま?そんなことを話すためにここに来たんじゃないでしょ?」

 

「この今後についての話も蒼兎の部屋の片付けも全部それっぽい理由付け、早く話したらどうです?」

 

「……はぁ、そうですね。彼も自身の過去について一切話さなかったようですし。」

 

「どういうことです?」

 

龍斗が上司に訪ねる。

 

「貴方達は今まで疑問に思わなかったのですか?彼がなぜ転生者と戦い続けるのかを。」

 

「「「!!」」」

 

「さて、ではお話しましょうか?そこの妹さんですら知らない彼の、白神蒼兎の話を。」

 

 

 

 

 

とある夫婦がかわいい女の子を欲しがっていた。そんな願いが双子の兄妹となって叶うのです。女の子が欲しかった夫婦は大層喜び、女の子には『結衣』男で兄の方には『優斗』と、名付けたのでした。

 

しばらくして二人が小学三年生になった時、優斗の成績が中の下、そんな理由で優斗は両親から罵詈雑言、しかし妹の結衣はどんな成績でも0点で無ければ何も言われず、むしろ褒められる。そんな格差が出始めた時期。

 

学校でも優斗は目立たないという理由でいじめを受けていた。その集団のいじめはただの腹いせでしか無く、相手は誰でも良かった。たまたま優斗が選ばれただけだった。

 

しかしいじめは年齢が上がるにつれてどんどんエスカレートしていった。学校のホースリールで水責めにあい、泥になった土の塊を投げつけられるなど。

 

その度に家に帰れば服を汚した、妹を危険な目に合わせようとした、お前が悪いと言われ殴られる。食事も出されず外に放り出され暑さ寒さに耐える日もあった。

 

小学六年生になり、優斗が努力し成績が学年一位になっても学校でも家でもその環境は変わらなかった、むしろ悪化していった。いじめを受けて解放され家に帰れば結衣がいない間は熱湯をかけられ、殴られ蹴られる。

 

食事は出ないので自ら調理し、食べる。そして勝手に台所を使いまた罵詈雑言を浴びせられる。学校に行けばいじめを受けて殴られ蹴られる。そして毎日を過ごしていた優斗の心はボロボロだった。今までされた数々の行為は全て結衣のいない場所で行われてきたため、当然結衣は兄がどんな仕打ちを受けているの全く知らない。

 

兄の変化を見て気にかけるも優斗はただ、「大丈夫」の一言で済ませた。優斗には心の拠り所があったからだ。それが『仮面ライダー』。そしてありとあらゆる創作物。

 

中学三年生になり、優斗は家には帰らず外で一夜を過ごすことが、多かった。それでも学校に行けばいじめの標的にされ、その際に小学校の頃からのいじめの主犯格が持ってきたスタンガンで優斗を感電させるなど更にエスカレートしたいじめがあった。そしてある日、いじめの主犯格は優斗を呼び出す。

 

呼ばれた優斗はいじめの主犯格にサンドバッグとして殴られる。その時たまたま主犯格の顔に優斗の手が当たり、主犯格は逆上する。次の瞬間、優斗の右腕は肘から先が切り落とされていた。

 

いじめの主犯格は転生者だった。特典は刀を生成できるという単純なものだったが、一般人相手であればその能力の有無は明確に違う。切り付けられ、足を切り落とされ、地べたに這いつくばりながら蒼兎は考えた。

 

「どうして自分がこんな目に?」

 

そんな事を考え、何かが、決定的な何かが壊れて、二度と戻らないことを感じ取りながら優斗は心臓を突き刺され、絶命した。

 

 

 

 

 

「そして彼のビルド系統のライダーへの適性の高さから、我々は彼の魂を回収しました。彼は我々が求めていた条件に加えて、ありとあらゆる条件をクリアしていました。」

 

「仮面ライダーへの適性の高さ、心が壊れているからこそのチャーム系への特典の耐性、生前受けた様々な攻撃によってできた耐性。」

 

「熱湯をかけられたことから熱さへの耐性、絶え間なく水を浴びせられたことから水への耐性、その他様々な耐性をもった正に理想の逸材。」

 

「当時求めていた転生者狩りに彼を適用することに反対する者はいませんでした。彼もそれを引き受け仮面ライダーの力を使うことに若干のためらいを見せていましたがそれも次第になくなりました。」

 

「そして彼は自身を殺した転生者の魂を回収したことで初めて、転生省特典犯罪制圧課となったのです。」

 

「彼がなぜこの仕事をしようと思ったのか、二度聞いた事があります。一度目は俺しかできない上に頼まれたから、二度目はそれしかすることがないから……だそうです。」

 

「「「…………」」」

 

「女神様……。」

 

「はい?」

 

「なんで今になってそんな話をするんですか?」

 

「彼が話していなかった上に、そこれは大きな節目になると思ったからです。」

 

「今回の彼の死を乗り越えて、貴方達は黒幕を打倒する。彼の死を乗り越えるために、彼の経験を話したまでです。」

 

「私たちは蒼兎の過去を聞いてどうすればいいと?」

 

「彼は生前、あらゆる苦難を耐え凌いできました。ならば彼を知る貴方達も今回の件は耐え凌いで成長すべきです。」

 

「女神様、アナタには感謝してる。転生者を倒す力も使い方も教えてくれた、だが!」

 

「今の物言いには納得できない!」

 

「蒼兎の過去をまるで武勇伝みたいに語るなんておかしいだろ!俺らはまだ大きなものを失ったばかりだ!」

 

「だからなんです?優しく慰めればいいのですか?そんな余裕はありませんよ、敵は待ってはくれません。」

 

「ッ!!」

 

「あーあー、ヒートアップしちゃって、落ち着きなよ。」

 

「アンタはなんだ!?」

 

「あ、自己紹介がまだだったね、私は『詩音』。苗字とはないんでそこはよろしく〜。」

 

「まぁ転生省特典犯罪制圧課技術顧問ってところかな?」

 

「今後、貴方達のサポートをすることになっています。」

 

「そして、エボルト。」

 

「……え?」

 

「貴女の行いは本来は許されるべきものでは無い、しかし処分対象にしていないのは、彼の妹の特典であると同時に転生者のみを相手にしているからです。」

 

「………」

 

「よって今後は特別に転生省特典犯罪制圧課と同じルールを適用した転生者として我々も見て扱います。よろしいですね?」

 

「………分かったよ。」

 

「そしてサーヴァントの皆さん。貴方達はマスターに従うのでしょう、ならそのまま龍斗に従っていて構いません。」

 

「そしてそこの御二方、私の部下たちを支えてくれるのはありがたいですが自分の身も大切に。」

 

「はい……。」

「分かりました……。」

 

「では龍斗、最後にこれをあなたに。」

 

そう言って上司が机に置いたのは一つのアタッシュケースだった。蒼兎が使っていたものより小さい。

 

「これは……?」

 

「貴方専用のものです、自由にお使いください。」

 

「んじゃあ神様、ここら辺で?」

 

「ええそうですね、詩音、任せましたよ。」

 

「はいは〜い、任されました!」

 

上司は蒼兎の部屋を漁っていた天使達を連れてシェアハウスから出ていった。

 

「と、言うわけでみんな、よろしくね?」

 

残された詩音と名乗る恐らく龍斗達と同じ同年代だと思われる長身の少女はウィンクして手のひらをヒラヒラさせていた。

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