上司の訪問から数時間後。詩音の部屋やその荷物運びを手伝っているとインターホンが鳴る。
「今日は来客が多いわね……。」
「はい?」
「お前達に聞きたいことがある。」
「お話を伺ってもいいですか?」
風華が玄関のドアを開くとそこに居たのは蒼兎と龍玄の戦いに介入していた南宮那月とその後ろに殺せんせーが居た。
「どうぞ。」
「これはご丁寧にどうも。」
先生二人の訪問に多少驚きつつも咲夜はお茶を出し、ソファに二人と向かい合うように龍斗と風華と咲夜が座った。その他の者達は詩音の部屋の改装に付き合わされている。
「それでお話って言うのはやっぱり……」
「ああ、察しの通りお前らについてだ。」
「分かりきってはいるだろうがあえて聞く。」
「お前達は『仮面ライダー』だな?」
「一部例外もいますけど……そうです。」
「私達がここへ来たのは今までのことについて聞くためです、彼は………。」
殺せんせーが言葉を詰まらせる。
「……ッ!」
「奴が消えたのは……死んだということか?」
「ええ……そうです……。」
「すまない、だがお前らに余裕は与えられない。」
「私が聞くことに嘘を交えることは許さない、全て真実を話せ。」
「……分かりました。」
「では聞く、お前らは何者だ?」
それから龍斗は自分が伝えられる限りの真実を話した。この世界について、転生者について、自分達が仮面ライダーを使って転生者の魂と特典を回収する役目を持っていること。学校を襲撃したのは転生者ライダーで自分達は守るために戦っていたこと。
「ではあの時、私をスナイプ……と呼ばれていた男から守ってくれたのは……。」
「私の妹の雷華でしょうね。」
「そうですか……。」
「一つ聞きたい。何故私達のような、そうだな……お前らのように言えば『この世界の住人』に、協力を仰がなかった?」
「蒼兎の方針だったんです。俺達が借りてる仮面ライダーの力を、悪用しようとする奴らの手に渡らないようにっていう。」
「ふむ……なるほど……。」
「あの……これから俺達をどうするつもりですか?」
「こうして話を聞いたわけだからな……仮面ライダーが我々を害すものではなくなった、これが分かったならもう我々がお前らをどうこうするつもりは無くなった。」
「だが、我々はどうもしなくても我々以外がどうするかは分からない。お前らが言っていた通り、お前らの力を狙う者が現れるだろう。」
「………はい。」
「仕方ない……でしょうね。」
「そこで一つ提案がある。」
「提案ですか?」
「ああ、お前らには私の仕事を手伝ってもらう。」
「え……学級委員……みたいですか?」
「そんな訳ないだろう、教師ではなく攻魔官としてのだ。」
「はーい!龍斗!私の部屋の改装終わったよー!」
「あれ?お邪魔だった?」
「神木、あれは誰だ?」
「初対面であれ呼ばわり!?地味に傷付くぅ〜。」
「えーと、今日来た詩音です、俺達の技術顧問って奴らしいです。」
「技術顧問の詩音でーす!よろしくお願いしまーす!」
「技術顧問……ということは仮面ライダーを開発したということか?」
「いえ、開発したのはとある世界の人達で、我々は再現しているだけです。」
「再現したと言っても、そこには言い表せない苦労と努力があった訳で……」
「使うことができる人間も、平行世界全てを見ても一握り、要するに技術提供しても全くのオーバーテクノロジーなので意味は無いかと。」
「できている理論を理解していなくとも、使えるものは使えますが、そんなことは天界が許しても私が許しませんよ!」
「まぁ天界が許すことなんて万に一つもありませんけど!」
「そうか……。」
「あ、て言うかお名前は?」
詩音は出されていた茶菓子を横取りしながら今更聞いてくる。那月は詩音と殺せんせーは自己紹介し、龍斗はふと気になったことを那月に質問した。
「あの、仕事を手伝ってもらうって具体的に何を……?」
「そもそも攻魔官についてどの程度知っている?」
「悪いことした魔術師的な人を捕まえてる……みたいな?」
「まぁ概ねそうだな……。」
「だから転生者についてはお前達が先に見つけて魂と特典……だったかを回収しているがお前らがいなければ私の仕事だった訳だ。」
「あ、確かにそうですね」
「だが、これからのお前らはそうはいかない。」
「どういうことですか?」
「これからお前らはありとあらゆる殺傷を禁止する。」
「何故です?」
「なんの許可も認可もないお前達が好き勝手にこの世界で戦う訳にはいかないということだ、少なくとも世に認知されたこれからは、な。」
「……ッ!」
「まぁそうなりますよねぇー。」
「分かってたの、詩音さん?」
「逆に蒼兎は今までよくやってたってもんだよー、情報操作とか目をつけられないようにするとか、徹底してたでしょ?あと風華ちゃん、詩音でいいからね?」
「学校内であんだけやらかせばそうはいかないって訳だねー。」
「だから私の仕事を手伝ってもらうと言っているんだ。」
「私の仕事を手伝うという名目であれば仮面ライダーの力も使えて転生者についても対処ができる。そして黒幕とされる神とやらにも近づけるだろう?」
「(それしか俺達に道はないってことか……)」
「………分かりました、協力します。」
「ああ、これからよろしく頼む。」
「神木くん、私からも。」
「なんです殺せんせー?」
「学校にも来て貰えますか?」
「え?」
「転入してきたとはいえアナタたちは私の大切な生徒です、卒業するまでは来て貰えますか?」
「……俺や風華、雷華は問題ないと思いますけど……。」
「………」
蒼兎の部屋。本来は龍斗と共同の部屋だが結衣は学校から帰ったあとすぐに蒼兎の部屋に行き、鍵を閉めてしまい引きこもってしまう。エボルトが体の意識を強制的に変えて部屋から出て上司との話を聞き終え、エボルトが体の所有権を返してもすぐに部屋へ戻り鍵をかけて閉じこもってしまった。誰とも話すつもりは無いようだ。
意識内のエボルトが話しかける。
『主、心苦しいのは分かるけど……みんなを心配させるよ?』
「………」
エボルトは諦めて結衣の携帯から赤い球体となって部屋のドアの隙間から出ていく。白髪に赤い目を持つ少女に変わりながらリビングへ向かう。
「エボルト」
「結衣ちゃんは……」
「うんともすんとも言ってくれないよ……まぁしょうがないと言えばそうだけど……。」
今後の方針はまた別の日に話すことにして那月と殺せんせーはシェアハウスから学校へ帰っていた。リビングでは咲夜が食器を片付けていた。そんな中、詩音かなんでもないように言った事が龍斗達に衝撃を与えた。
「まぁあの箱入り少女の結衣ちゃんが兄である蒼兎の死亡を知ったのは彼の葬式に行った時ですからね。」
「え?」
「それまで兄が死んだことを知らなかった、転生して再開するも2度目の、しかも今度は目の前で死亡、さらにさっきの真実により追い打ち、心境はお察しすることもはばかられますねぇ……」
「そんな……嘘だろ……」
「ともかく今はそっとしとこうよ……流石に何か食べる気にもならないと思うし、今日は主抜きで飯は済ませなよ、お風呂とはその辺は私がなんとかしとくから。」
「ありがとう、エボルト。」
「ただいま戻りました、マスター。」
買い物を任せていたアルトリアとジャンヌが帰ってくる。
「ありがとう、二人とも。」
「マスター……結衣は……」
「今はそっとしてあげるってことで……」
「はい……」
なんとも言えない雰囲気になりつつも龍斗達は夕食を済ませる。咲夜の部屋には詩音がやって来て改装してしまったがこれからは二人が共同のスペースで暮らしていくことになった。
龍斗は結衣のことも考えてリビングのソファで寝ることにした。
「大丈夫?寒くない?」
「大丈夫、ありがとう霊夢、もうそろそろ寝ていいぜ。」
「……ねぇ龍斗、大丈夫?」
色々な意味を含めているような質問に龍斗は多少無理な笑顔をしつつ答える。
「大丈夫、安心しろ。頼りないかもだがこれからは俺がちゃんとしてみせるからよ!」
グッと腕を小さく構えてそう答える。
「……そう、なら安心ね。」
「ああ、だから心配すんな。」
「……ええ、ありがとう。」
ソファに寝転んで龍斗は考える。蒼兎に言われた言葉と今の自分の感情。
『「柄にもなくペラペラと喋っちまった……あとは頼んだ………
……龍斗」』
「(あの時、アイツは俺を見て俺の名前を呼んだ………頼まれたからには、やってやる……それに……!)」
決意と、今の自分を塗りつぶしている感情を抱きつつ、龍斗は瞳を閉じ深い眠りについた。