ファイル26 怒り
あやふやな意識で即座にこれを夢だと理解する。見える景色は一面が血で汚れた大地、真っ暗な雲の空。煙や炎が上がる中、その惨状の中心に一人たたずむ男。右手に血が滴る刀を握り、何も映さない蒼い瞳。
雨が降り出し顔についていた血が洗い流される。見間違うことはなく、これから見たくても見ることができないその人物を見て、その名前を呼ぼうとして手を伸ばす。
手になにか柔らかいものを鷲掴みする。ボヤけた視界とうまく回らない頭を振りながら、手に掴んでいるものを確認しようとする。
「(……なんだ?なんか……なんだこれ?)」
突如、顔に思い切り鋭い痛みと絶叫が聞こえてくる。寝ていたソファから吹っ飛ばされるように殴られて変な声を上げてしまう。
「キャァァアア!!」
「アベシ!」
「ちょっとなになに?」
「どうしたの雷華?」
「……りゅ……龍斗のバカ!!」
「な、なんでだ……」
制服に着替えて朝食を済ませた龍斗達は殺せんせーの約束通り、学校へ向かっていた。
「だから悪かったって、寝ぼけてたんだよ……」
叩かれた場所を擦りながら龍斗は雷華に謝る。
「だ、だからってなんで揉みしだくのさ!?ホントバカなんだから!」
「だから悪かったって……あとせめて筋肉とか付けてくれ……」
「バカ!変態!変態バカ!」
「混ざってるし……」
雷華から罵詈雑言を浴びせられつつ龍斗は歩く。その後ろで霊夢は何故か一緒に来ているエボルトに結衣の状態について聞く。
「結衣ちゃんは……?」
「主には一応言ったけど、来ないって、無理して連れてきても、あれでしょ?」
「エボルトはいいの、一緒にいなくて?」
「今後について今日話すんでしょ、一応私も居た方が情報伝達も少なく済むと思ったから……」
「そっか……」
全校生徒からの視線を感じつつも無事、全ての授業を終えた龍斗達。那月からの放送で呼び出しがかかった龍斗達は那月がいる部屋まで向かう。
「校長よりも上の階にいるよ……。」
ノックして返事を返された龍斗はドアを開ける。かなり豪華な椅子に座った那月とその傍に青い髪のメイドが立っていた。置いてあるソファに座ることを促された龍斗達は青い髪のメイドにお茶を貰いながらデスクを挟んで向かい合うように座る。
「さて、今後について何か聞きたいことは?」
「えーとじゃあ、俺達はどんな時に駆り出されるんです?」
「そうだな……凶悪な犯罪組織、治安部隊が対処できそうにない大物が出た場合、あとは転生者だったか、そいつらが出た時はお前らに丸投げする、だが昨日言ったように殺傷は許さない。」
「それ以外では?」
「基本は大規模作戦の時に呼ぶ、それ以外であれば護衛くらいか?」
「一応お前らが使っている仮面ライダーがどんなものなのか教えろ。」
「俺は『クローズ』大した能力はあんまりないですよ………頑丈で基本の身体能力が強いくらいですね。」
「私達姉妹のは厳密には仮面ライダーじゃないですけど、龍斗以上の装甲がある、あとは……」
「お姉ちゃんには切り札があるよね!」
「まぁ、そうね。」
「でワタクシ、エボルトは超高速移動!エネルギーの光弾を撃てるなどなど役に立てますよ!」
「あれ?エボルトだけで変身できるのか?」
「ホントは主が居た方がいいんだけど、まぁフェーズ1なら半分のスペックで変身できるよ。その場合頑丈なのと早く動けるのが取り柄かな?」
「でも戦闘スキルは素人並だからあんまり期待しない方がいいかも……それだと早く動けるのが取り柄に……。」
「ああ!分かった分かった!だからネガティブになるなって!」
「おおよそ把握した、では早速仕事を与える。」
「マジですか!?」
「ああ、お前らには」
突然、那月の携帯からコールがかかる。龍斗達に一声かけた後すぐに電話に出てその内容に顔を険しくする。
「お前ら、今すぐ商店街に行け。恐らく転生者だ、人質を取っている。」
「ッ!?」
「分かりました!みんな行くぞ!」
校門を出ると一台のバンが止まっていた。運転席には詩音が座っている。
「やぁやぁ皆さん!現場に急行しますでしょう?乗ってくださーい!」
「いつからこんなの用意してた!?」
「私がここに来た時点で車庫にありましたよ!ていうか持ってきました、こちらでも転生者反応出てたので迎えに来ました!」
「龍斗くん、後ろにあるヤツ、ぜひ使って見てください!」
「あれ?これ上司に貰ったものじゃなくない?」
「上司に貰ったアタッシュケースは忘れました!とりあえず今日はそれ使ってください!」
バンの後ろにあったのは青い銃に電子キーのようなアイテムがあった。走行中、詩音から使い方と説明を受けた龍斗。現場に着いたのか車が止まりドアが開く。
「さぁ、皆さん!どうぞ!」
ドアを開けて目の前の惨状を見る。至る所を破壊され瓦礫が散乱している。転生者と思われる男が小さな男の子を抱えて治安部隊と睨み合っている。
左手に赤い籠手を付けた転生者が右脇に子どもを抱えて治安部隊に叫ぶ。
「動くんじゃねぇ!コイツをぶっ殺すぞゴルァ!」
「ママ!!」
「翔太!!」
母親らしき女性が治安部隊に抑えられながら子どもの名前を叫ぶ。その光景を見た瞬間、龍斗の中に抑えきれないナニかが溢れていた。
「行くよ龍斗!」
「龍斗……?」
風華達の声を無視して転生者に向かって走しる。バックルを腰に巻き、銃である『エイムズショットライザー』を取り付ける。電子キーのアイテム『シューティングウルフプログライズキー』のボタンを押してショットライザーにセットする。
『バレット!』
しかしなんの反応も無い。明らかに何かが噛み合っていない。
「あれ!?おかしい!?絶対変身できるはずなのに!」
運転席から覗いていた詩音の声が聞こえる。龍斗は聞いていた通りにならないことに困惑しながらも転生者が投げてきたと思われる原付バイクをローリングでかわす。
「お前ら仮面ライダーだろ!?俺に近づくな!コイツを殺してもいいんだぞ!」
「ッ!!」
「翔太!!」
それを見た龍斗は先程と比べ物にならない感情、怒りが頭に登っていくのを感じた。抑えきれないと感じて転生者へ叫ぶ。
「ふざけんな!!」
「ッ!?」
「何も関係のない人を巻き込んで!あんなに人を怪我させて!ここまで色んな物を壊しやがって!」
転生者によって怪我した人や治安部隊、周辺を指さして声を荒らげる。
「お前みたいな転生者がいるから!兄貴も……蒼兎も!!」
ショットライザーからシューティングウルフを抜き言われた通りに動くなら開くはずと聞いていたため、強引に開こうとする。どう開くかは構造的に理解して、力を入れる。
「やはり転生者は悪だ!人々を傷付け!平和を脅かす!!平和の……いや、人類の敵だ!!」
「一人残らずぶっ潰す!!!」
「今の俺は、それが全てだァァァ!!!!」
強引に開いたプログライズキーのボタンを再度押し込む。
『バレット!』
ショットライザーにセットすると聞いていた通りに反応する。
『オーソライズ!』
『Kamen-Rider!Kamen-Rider!』
ショットライザーをバックルから引き抜き、その銃口を転生者に向け引き金を引く。
『Kamen-Rider!Kamen-Rider!』
「変身!!」
『ショットライズ!』
銃口から放たれた弾丸は、そうとは思えぬ軌道を描きながら転生者に向かう。怯んだ転生者は子どもを投げてその弾丸を鬱陶しそうに腕をふる。投げられた子どもに向かって龍斗は走る。
弾丸は龍斗に向かっていき着弾寸前で弾丸を勢いに乗って殴る。弾丸は弾けて散らばり、その先からアーマーが展開し龍斗の姿を変えていく。姿を変えた龍斗がスライディングでなんとかキャッチする。
『シューティングウルフ!』
『The elevation increases as the bullet is fired.(弾丸を撃つ度に気高さは増す。)』
子どもをキャッチした龍斗は治安部隊の方へ預けて転生者の対峙する。右半身のアーマーは青く、オオカミを連想する毛の形に赤いラインが入っている。白を基調としたボディに青い複眼が転生者へ向けられる。
『仮面ライダーバルカン』
怒りで覚醒した龍斗はその青い複眼で転生者を睨みつける。
「私達も!」
「うん!」
「(蒼兎……借りるよ!)」
風華と雷華はネビュラスチームガンに各々ボトルをセットする。
「「潤動!」」
雷華は拳を構え、風華は数歩引いた場所から転生者を狙う。
「エボルトちゃん!周囲に逃げ遅れている人がいないか確認を!」
「OK!」
詩音に指示されエボルトはすぐさま変身して高速移動を開始し、周囲を捜索する。
「……ぶっ潰す!」
龍斗は転生者へ向けて駆け出した。
あけましておめでとうございます(今更)