『学園島』
全世界の政府、企業、機関、団体、財団が共同で開発した教育、育成、研究を重点に置いた機関である。ここでは近年発見された魔族の他に、超能力、空間震の原因、武偵の育成を行っている。蒼兎が通う高校は、そんな数ある学園島の中でも比較的一般な普通科校である。
時刻は午前7時半。着替えを終えた蒼兎は登校する時間までの間、多重クロスの世界へ転生者を送った神について考えていた。
「(……この世界に転生者を送った思惑が分からない……?どんなメリットがあるんだ?世界が崩壊して困るのは神々なんじゃないのか?)」
『それに関しちゃ俺は全く力になれんよ。誰かの考えを読むなんて俺にはとてもとても……。』
相棒とあれこれ話し合っている内に登校時間が来てしまう。
「(しょうがない……仕事しますか。)」
今日は(この世界で)初登校。入学式である。その高校には転生者が多く存在し、邪な考えを持たない者などいない。高校生ともなれば精神年齢が高くても行動を起こすのに活発になる。
「(流石に入学式から問題を起こす奴はいないと願いたいね。)」
『まぁ、罪を犯すことに躊躇いのない奴の考えなんて分からないしな。』
時刻は7時50分。体育館で行われる入学式で指定されたの席へ座る。辺りを見回すと、中々個性的な面持ちをした者が多かった。入学式が始まり、校長や様々な人々から賛辞を受け取ったが、蒼兎は仕事柄、高校に入学することはよくあるので見慣れたような光景であった。
『こういう長い聞き話は得意じゃないんだがなぁ……。』
「(しょうがないだろ?こういう物だよ。)」
入学式が終了し、各自教室へ移動していく。蒼兎は1年A組である。少しの間待っていると担任が来たのかドアが開く。蒼兎は一応しばらくの間お世話になるであろう担任の顔を確認しておこうと思い窓の桜から教壇の方へ顔を向ける。
「(さて、どんな先生かn…………)」
『「……………」』
ウネウネとした黄色い触手、満月のような丸い顔に三日月のような笑顔な口。アカデミックドレスと三日月をあしらったネクタイ。何処からどう見ても人間ではない生き物を目の当たりにし、蒼兎はしばらく硬直した。
「(はっ!いかんいかん!うっかり固まってしまったが、あれは知っていた……。)」
謎の超生物が現れ、教室にいる全員が硬直したと思っていたが何処からか驚くような声がした。
「殺せんせー!?どうしてここに!?」
担任の名前(?)なのか殺せんせーと呼び、立ち上がる青みがかった髪をツインテールにした女子と見間違うほど小柄な男子生徒。その他数名も、殺せんせーが登場したことより、ここにいることに驚いているような表情の生徒が数名。
「(なるほど……殺せんせー以外にもいるのか……ここに。)」
「渚くん、まずは先生の自己紹介から初めてもいいですか?」
「あっ、はい。分かりました。」
そう言って渚と呼ばれた少年は席に座る。殺せんせーは全員を見回した後、言葉を紡いだ。
「皆さん、はじめまして!少し前にちょっとした騒動がありましたね?あれは私が原因です。」
「私は去年から今年の3月まで、とある中学の担任をしていました。そしてそこの生徒達に私を暗殺させようとしていました。しかし何故暗殺させようとしていたかというと、私の命は今年の3月までのハズでした。」
「しかし、私の生徒達の必死の努力のおかげでこえして延命し、今は日本政府の監視下に置かれながらもこうして、教師をしています。どうかよろしくお願いします。」
十何人から拍手を貰う。次に殺せんせーが入ってきたインパクトがありすぎていつの間にかいたスーツに身を包んだ男が言葉を紡ぐ。
「私は防衛省の烏間 惟臣だ。ここの副担任を務めると同時に、この怪物から君達を守り、そして監視することが私の役目だ。だが、副担任なので相談などは受け付けよう。」
一部女子から悲鳴が上がりつつ教師側の自己紹介は終了したようだ。次に生徒側。現在の席は出席番号順になっており、蒼兎は大分真ん中のようだ。一番から男女混合で自己紹介が進んでいく。やがて蒼兎に出番が回る。
「(学生生活の滑り出しで今後の仕事の効率も変わる。ここは上手くやらんとな……。)」
「白神 蒼兎です。特技は運動と勉強、趣味は……まぁヒーロー物ですかね?よろしくお願いします。」
「(どうだ……?)」
周りからまぁまぁな拍手を受け、悪くない結果となった。
『それでいいのか?もうちょい派手にやってもいいだろ?』
「(そうする必要がないだろ?仕事で来てんだからな。)」
生徒側も自己紹介が終わり、今後の連絡を聞き解散となった。途中、遅れてきた武偵と思われる生徒と初めからいた生徒が顔を合わせた途端銃撃戦が始まりかけたが殺せんせーが止めていた。
『やっぱ入学式はあっさりしてるなぁーー。』
「(お前さっき、長い聞き話は苦手とか言ってたろ?)」
『それとこれとは別さ。気にするな?』
帰路につこうとしたその時、ビルドフォンから通知が来る。内容は転生者が特典を使って
「(さぁて……仕事の時間だ……!)」
高校から少し遠ざかり、誰も居ないことを確認し、ビルドフォンに様々な成分が込められたアイテム『フルボトル』の中のロボットの成分が入った『ロボットフルボトル』をビルドフォンの窪みに差し込む。
『ビルドチェンジ!』
その音声とともにバイトとして展開した。ハンドル部分にはヘルメットも掛かっており、すぐに被り、バイトに跨り、エンジンをふかす。すぐさま通知があった場所へ急行する。
到着すると学園島という最先端にも関わらず、使われなくなった廃工場に荒れている跡を見つける。何かに吹き飛ばされるように壊れていたため、蒼兎は転生者の仕業だと予想する。奥から男の断末魔が上がり、轟音が響く。
蒼兎は廃工場の扉を開ける。するとむせ返るような鉄の匂いが広がっていた。すぐに血の匂いだと分かり、その元を辿る。廃工場の奥に進んでいくと、頭が潰れている死体を見つけ、さらに奥に血が点々と続いていた。
先程聞こえた叫び声とは遮蔽物があっても距離が違うので別の人間の死体であると判断した蒼兎は続く血を頼りに奥へ進む。少し開けた場所に出ると、鉄柱が何本も建物を支えていたようだが本来ならありえない曲がり方や凹みがある鉄柱が何本もある。
その中に先程と同じ頭が潰れている死体を見つける。一足遅かったかと思ったが誰かの足音が近づいてくる。急いでこちらに向かってくるので蒼兎は隠れる。すると奥から出てきたのは昨日助けた少女だった。
少女も身を隠し、さらにそこから昨日襲っていた男も現れる。
「何処だァ〜〜子猫ちゃん〜〜?昨日は邪魔されたが今日は誘拐されたところを助けたんだ、隠れなくてもいいだろ〜〜?」
蒼兎は黄色いレンチが特徴の『スクラッシュドライバー』を取り出し、腰に巻く。そしてロボットフルボトルの成文をゲル状にし、ゼリーにした物を内包したアイテム『ロボットスクラッシュゼリー』のキャップを合わせつつ近くにあった小石を投げる。
死体の近くに転がり男は舌打ちする。突如、腕にスパークが走る。
「まだ生きてんのかァ!?」
男がそう叫び、豪風と共に建物に穴があく。拳を振り抜いただけでその威力。人間に当たれば頭が潰れるだろう。よく見れば手元は血で濡れている。
「(はぁ………殺るか。)」
蒼兎は隠れていた場所から立ち上がり、ロボットスクラッシュゼリーをドライバーの窪みに差し込む。
『ロボットゼリー!』
その音声が男と少女の耳に入り、驚く。
「なぁ!?何処だ!?」
「変身……」
レンチを力強く下に押し込み、プレス機が連動してゼリーを潰す。そして蒼兎の体にスーツ、アーマーを形成していく。
『潰れる!流れる!溢れ出る!』
『ロボット イン グリス!』
『ブラァァァァ!』
蒼兎はその黄金の姿を転生者の前に現す。
「なんだテメェ……?」
「特典を使って犯罪行為に及んだお前は……死罪だ。よってお前の特典と魂を回収する。」
「はっ!こいつはよぉ、もう俺のもんだ。もう誰にも俺を殺せやしねぇ!!」
「『SMASH』!!」
蒼兎に向けて拳を振り抜く。豪風が蒼兎を襲い掛かる直前、蒼兎は天井に向かってジャンプし、天井から右の壁へ素早く移動する。今度は男の左に着地し、左手にビーム砲が付いた『ツインブレイカー』を向けて、ビームを発射する。
至近距離で撃たれ腕に焼けるような激痛を負った男。右腕から出血し、あまりの痛みに腕を使わなくなり、そのまま垂らす。蒼兎はビームを発射した時点で既に移動しており、男の後ろでビーム砲を外側に回転させる。すると、ビーム砲の間から杭が現れ、高速回転する。
『アタックモード!』
「ウラァ!」
体を横にして縦に回転しブレイカーの威力が増していく。男は蒼兎に気づかず、そのまま背中を削り取られる。血飛沫が上がる中、蒼兎はドライバーのレンチを下げ、右の拳に力を入れる。右手からエネルギーによってロボットアームのような物が形成され、男を殴りつける。
圧縮されたエネルギーによって弾けるように飛んでいく男。自身が破壊した場所から建物の外に吹っ飛ばされる。蒼兎はその後を歩いて追う。そして今の一部始終を見ていた少女は恐怖に震えながら蒼兎の後を追う。
男は既に死にかけていた。しかしまだ息はあり、蒼兎を見て逃げようとしていた。しかし蒼兎はそれを許さない。ネビュラスチームガンを取り出し、男に銃口を向ける。
「最後になにか聞いておこう。」
「……俺はァ……まだァ……生きる……んだァ……。」
ヒューヒューと息をしながら逃げるように蒼兎を見ながら遠ざかっていく男。蒼兎は引き金を引いて男の眉間の間にエネルギー弾を撃ち込む。今度は完全に絶命した男を見て、蒼兎は後ろにいるであろう少女のせいで変身を解除できなかった。
蒼兎はため息をつきながら少女に近づく。人を殺した謎の戦士が近づいて来ることにより、少女は恐怖に震える。蒼兎は消しゴムの成分が入った『消しゴムフルボトル』をドライバーに嵌める。
『ディスチャージボトル!』
レンチを下げて成分を解放する。
『ディスチャージクラッシュ!』
少女の頭を触り、消しゴムの成分で記憶を消す。変身を解除した後、ため息をつく。
「フゥ………。」
死体は天界から支援としていつも通り回収してくれる。きっと少女もどうにかしてくれるだろうと考え、蒼兎は昼食を取ろうとシェアハウスに帰っていった。
「(この世界……ヤバいな……。)」
帰っている途中、空間震が発生したり色々問題があったが何とか帰ってきた蒼兎。この世界の厄介さを理解した一日でもあった。