殺せんせーの護衛任務は謎の黒い怪人の襲撃を受けた日以外は無事終了した。賞金狙いの転生者や現地の犯罪者などが来ることもあったが風華が変身したヘルブロスによって鎮圧され予定の5日間を無事終了した。任務を終えた翌日の土曜日。南宮からの指示も無く退屈な日々を過ごしていた龍斗はソファで寝転がっていると雷華に叩き起された。
「龍斗、買い物付き合ってよ!」
ショッピングモールを訪れた雷華は龍斗を連れて服やアクセサリーを見て回っいた。昼頃に昼食をとるために近くにあった喫茶店に立ち寄る。注文を終えて少し待っている間に雷華が話しかける。
「なにかあったの?」
「え?」
「最近元気ないな〜って思ってさ……相談あるなら乗るよ?」
「……もしかしてこうやって今日俺を連れ出したのも気遣ってのことか?」
歯を見せて笑う雷華を見て龍斗は少し笑う。
「そんなふうに感じてた、いや、感じさせてたのか……俺もまだまだだなぁ……。」
「何言ってんのさ、龍斗は私から見たら充分よくやってるでしょ?」
「転生者を捕まえるのもそうだし、今は進展がないけど事件の捜査だって頑張ってるし、何を気にしてるのさ?」
「……みんなの視線がちょっと気になるのさ。」
2人が注文したコーヒーとドリンクが運ばれてくる。店員が戻っていくのを見計らって龍斗は再度語る。
「ちょっと前まで気にしてなかったけど、やっぱり俺達が仮面ライダーであることに、怖がってたり嫌がってたりする奴が少なからず居て、その視線がお前らに向けられてるのが気になってるだけなんだよ。」
「それに、もし蒼兎が居たら、もっと上手くやれてたんじゃないか、ってな……。」
「……なんだ〜そんなことか〜」
今1番自分が悩んでいることをそんなことと言われ若干眉を顰める龍斗、しかし次の雷華の言葉で唖然としてしまった。
「そんなの、私たちは気にしてないよ!」
その返答に今まで悩んでいたのが馬鹿らしくなった龍斗は思わず笑いをこぼす。
「なんだよ、気にしてたのは俺だけか?。」
「そうじゃない?私達は私達で、こうしていれれば全然オッケー!」
「それに、龍斗は蒼兎じゃないんだからさ、少しずつ慣れればいいしゃん!」
雷華に言葉に今までモヤがかかっていたような思考が一気に晴れる。
「うん!いい顔に戻ってる!」
自然と表情に出ていたのか、そんなことをこぼす雷華。
「……ありがとな、雷華。」
「え、ああ、うんいいよ別に!」
龍斗がお礼を言うと雷華は顔を隠しながら気にしないようにと言う。昼食を終えた2人はシェアハウスに帰ることにした。横に並んでガードレールに守られた歩道を歩く2人。
「(………あれ、ひょっとしてこれ、デートになるのでは……?)」
雷華は不意に今まで自身が行なってきた数々の行いに顔が赤くなる。
道路沿いを歩く龍斗を見てみるとそれほど気にしている様子はなく前も見て歩いていた。
「(そう思ってる私だけ!?うう、今まであんまり気にしてなかったのに……!)」
突然龍斗が立ち止まり反対側の歩道を見ている。龍斗の目線を追うとその先には連続記憶喪失事件の写真の男と、細身な男が人気のない裏路地に入っていくのが見えた。
「雷華、見たか……!?」
「うん、あれって写真の……!」
「ッ!!」
「ちょっと!?」
龍斗はガードレールを飛び越えて乱横断する。突然動き出す龍斗に慌てる雷華。しかし雷華を気にせず龍斗は2人の男を逃がさないように追っていく。
写真の男と細身の男は何か話し合っている。やがてUSBメモリ型のアイテム、ガイアメモリを取り出して細身の男に渡す。耳をすまして会話を聞く。
「それはT2メモリ、次世代のガイアメモリだ、本来なら生体コネクタが必要だが、T2メモリは直挿しするだけでいい。」
「こ、これを使えば……僕は!」
会話の内容を聞いた龍斗は飛び出してショットライザーを2人に向ける。
「そこまでだ!写真の男、今回は話を聞かせてもらうぞ!」
「チッ、嗅ぎつけられたか。」
「龍斗!」
雷華も現れ、完全に道を塞ぐ。写真の男は溜息をつきながら手に刀身が取り付けられた銃を出現させる。龍斗もそれに合わせてバックルを腰に巻き片手でシューティングウルフのボタンを押してロックをこじ開ける。
『バレット!』
カバーを降って展開させショットライザーにセットする。
『オーソライズ!』
『Kamen-Rider!Kamen-Rider!』
「変身!」
『ショットライズ!』
掛け声と共に引き金を引いて射出された弾丸は写真の男に迫る。男は刀身で弾丸を防ぎ跳ね返す。返ってきた弾丸を殴りつけスーツとアーマーを形成していく。
『シューティングウルフ!』
仮面ライダーバルカンへ変身した龍斗はすぐさま写真の男へ迫る。ショットライザーを発泡しながら接近し鈍器のように殴りつける。刀身部分でショットライザーのエネルギー弾を防ぎ、銃を交差させて殴りつけてくる龍斗の攻撃を防ぐ。
腕を振り上げて離し、銃口を龍斗に向ける。腕を上げられた龍斗はその勢いで足を振り上げて銃の向きを変える。バク転の要領で一回転して着地し足払いを掛ける。
少し飛び上がって後退して避けた男に対して、それを追うように龍斗はショットライザーを発泡する。横に走ってエネルギー弾を避け続ける男は龍斗に向けて発砲する。
龍斗はローリングで回避し2人は銃口を向けあって硬直する。そこにエンジンブロスに変身した雷華がスチームブレードで切りかかる。既に細身の男を拘束し動けないようにしていた。
ブレードを刀身で受け止めた男は片手で受け止めたため、全身の力を入れて押し込んだ雷華に押される。そこに龍斗も肉薄しスライディングで蹴りを入れる。
腹部に入った蹴りで後退した男、そこに雷華が増援として電話で呼んだサーヴァントのアルトリアとクー・フーリンが現れる。
「マスター!ご無事ですか!」
クー・フーリンが槍を構えて龍斗達と男の間に割り込む。
アルトリアは
「サーヴァントを使役しているのか……それも2体もいるとはな。」
男は面倒そうな表情をしながら龍斗達を見ていた。ガイアメモリを渡した男の方を見ると既に拘束され何もできなくされていた。ため息をつきながら撤退しようとするも2人のサーヴァントがそれを逃がさないだろう。
明らかに詰んでいる状態だったが不意に周辺の空間が切り替わった。全員が瞬きした瞬間に切り替わった空間は学園島には存在しない採石場であった。
「一瞬で……どこだここは!?」
龍斗が周辺を見て幻覚ではないことを理解して驚く。そんな中、写真の男だけは驚く様子もなく龍斗達を見ていた。
「俺の
そう言って後ろを振り向き龍斗達もその視線を追う。そこに居たのは巨大な光の羽と、薄紫色の腰まである長い髪の女性、頭には光の輪が浮かんでいた。古代ギリシャで用いられていた衣服であるキトンを身に纏い、その姿を一言で表すならば『女神』。その存在は静かに龍斗達を見下ろしていた。
全員を見回すと写真の男を見て問いかける。
「この者たちが私の『THAAD』を倒したの?」
「恐らくな、俺が知る由はないが。」
「アンタが……この世界に転生者を送って、THAADを結成した……黒幕……?」
龍斗が発した言葉にその女性は反応する。
「ええ、そうよ。この私、『アドミニストレータ』がこの多重クロスの世界に転生者とTHAADを送った首謀者。」
「「!!」」
「いい加減私の部下の周りを嗅ぎつけられるのも目障りだわ、なので……ここで死んでもらいます。」
アドミニストレータと名乗った女性は、そう言って龍斗達に手を向けた。瞬間、視界が真っ白になるほどの爆破が起きた。
一切の予備動作もなく発生した爆破は雷華のエンジンブロスを強制変身解除まで追い込み、直感で防いだアルトリアも剣を杖代わりにして立つほどにダメージを負い、クー・フーリンも同様に槍を杖代わりにしているほど。
龍斗も地面に倒れ伏しアーマーやスーツからスパークが起きている。写真の男は霊体化で消えていた。
「呆気ないわね、本当にTHAADを倒したのかしら。ああ、倒したのは死んでいった白神蒼兎だったわね。」
「!!」
その言葉に龍斗は反応し、拳を握り締める。全く言うことを聞かない四肢を無理矢理動かし立ち上がる。
「お前が……そうだ、お前が……蒼兎を!!」
ショットライザーに装填されたプログライズキーのボタンを押して構える。
『バレット!』
軽快な待機音が鳴り銃口にはエネルギーが溜まっていく。引き金を引いてエネルギーを解放し放たれた巨大なエネルギー弾は相手に直撃する。
煙が周囲を覆い視界が悪くなる。やがてそれが晴れるとそこには何事も無かったかのように佇むアドミニストレータがいた。
「大した事ないわね。」
そう言って龍斗達の上に手をかざして大量の剣を出現させる。大量の剣は空中で止まっており、かざした手を振り下げる。
その動きに連動して降ってくる剣に対し、龍斗は生身の雷華を守るために雷華の前に立つ。剣を弾くか腕で受けてなんとか雷華を守りきるもスパークが激しくなったアーマーとスーツは限界を迎え変身を解除した。
変身が解除された龍斗は切り傷や、すり傷を負った部分を抑えながら膝をつく。アドミニストレータは頭上に数十本の剣を出現させ、龍斗達に向けて射出しようとしている。
龍斗はビヨンドライバーを取り出して腰に巻き身体を無理矢理動かす。そんな様子を見ていた雷華は龍斗に声をかける。
「無理だよ龍斗………そんな体じゃ……!」
「でも、それはみんな同じだ……このまま何もしないでいると俺もお前も死ぬ、せめて雷華だけでも……!」
FATEミライドウォッチを取り出して起動しようとするがその前に剣は放たれてしまった。迫り来る無数の剣に目を瞑る雷華、雷華を守ろうと前に出て庇う龍斗。自身が串刺しになる未来を想像し、目を瞑った2人。
しかし2人の前にはヘビの戦士が立っていた。