曰く、蒼兎が通う高校は親睦を深めるために遠出や泊まりで何かをする訳ではなく、スポーツによって親睦を深め合うそうである。入学式から約二週間、クラス内でも荒方グループという物ができ始めた頃、蒼兎は迷っていた。
「(いやぁ……名目上どっかのグループに入っておけば良かったか……?)」
彼は今、ボッチである。
「(そもそも、転生者案件でそこまで学校とか重視して無かった……どうしようか……。)」
入学式から約二週間。その間にも転生者は現れ、そして蒼兎が特典と魂を回収していた。そして巷で噂になっているのが、『仮面ライダー』である。
蒼兎が転生者と対峙する先々で呟くように名乗っていたのでそれが転生者や、目撃者の間で広がっていった。都市伝説近い存在として今注目されていた。
しかし、そんなことでクラス内のグループに入れる訳がなく、現在騎馬戦で誰が一緒になるかを話し合っていた。
「(なんか、別のグループに入るのも悪い気がするしなぁ……)」
「ね、ねぇ?」
「ん?」
その時、蒼兎に声をかけてくれたのは入学式に殺せんせーについて驚いていた潮田 渚であった。
「もし良かったら、一緒に騎馬戦のチームになってくれない?」
「マジで?」
「うん、人数があと一人足りなかったんだ。」
『他のグループから引き抜くのは悪い気がしたんだろうな、いつもボッチな相棒を選ぶのは妥当な判断だ。』
ポケットの中にいる相棒に蒼兎はデコピンで小突く。
「ありがとう、俺も誰と組めばいいか分からなくて助かったよ。」
渚に連れられ、騎馬戦となるグループの面々を紹介してもらった。
「彼は磯貝くん、僕と中学校が一緒だったんだ、でこっちが志田くん、武偵なんだって。」
「磯貝 悠馬だ、よろしくね。」
「志田 慎二(しだ しんじ)だ、よろしくな!」
渚に紹介された二人はとても好青年といった感じで蒼兎は仲良くできそうだと感じた。
「騎馬戦は4人いないとできないから、白神くんが居て助かったよ。」
「蒼兎でいいよ、潮田。そこの二人も。実はな、あんま好きじゃねぇんだ、俺の苗字。」
「そうなのか……分かったよ、蒼兎くん。」
「なにがあったかは聞かねぇが、まぁよろしくよ。」
「じゃあ僕も渚でいいよ、蒼兎くん。」
『中々仲良くできるじゃねぇかよ。てっきりコミュ障かと……。ちょ、痛いです相棒さん。』
蒼兎はポケットの中の相棒を力強く握る。体育祭のグループに入れたのでなんとかなりそうになったことに蒼兎はホッとする。
「(あとは転生者が余計なことしなけりゃ、完璧だがね……。)」
『そんな落ち着きを持ったような連中じゃあないだろ?諦めて、参加種目だけ参加して、処理していくしかないな。』
北欧 アルディギア王国にて。王室にて一人の執事が電話を受け持っていた。
「では、そのように。」
電話の内容はとある島の学校の催しに王女が出席するのでその護衛と手配である。
「ラ・フォリア様。準備が整いました。明日には出発し、観光も兼ねた物になっております。」
「ありがとう。」
ラ・フォリアと呼ばれた少女は静かに笑いかけて、とある人物に会うことを心待ちにしていた。
体育祭の準備、蒼兎は入場門の設置を行っていた。テープを別の場所から借りてきてくれと頼まれたので本部の準備をしている隣のクラスから借りようと声をかける。
「すみませーん、テープ借りてもー?」
「はーい、どうぞ……あ!!」
「どうも………あ。」
蒼兎の顔を見ると、驚きの声を上げた少女。彼女は蒼兎がこの世界に来て初めて助けた短い茶髪の少女だった。
「(うっ……まさか同じ高校とはね……。)」
「白神くん……だったよね?あの時は助けてくれてありがとう!」
「ああ、俺のことは蒼兎でいいよ、苗字あんま好きじゃないんだ。」
「じゃあ蒼兎くん、あの時は本当にありがとう!」
「あ、私は真藤 桜(しんどう さくら)よろしくね!」
「おお、よろしく。」
真藤は別の生徒に呼ばれ、「またね」と言って去っていく。蒼兎は終始引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。テープを持って元いた場所に戻る蒼兎。
「(あん時は記憶を消したとはいえ仮面ライダーとしての姿を見られてるし……てか同じ高校の制服かなんて気にしてなかった……失態だ……。)」
『まぁ、上手くやるんだな。でないと正体バレちまうぜ?』
項垂れながら戻っているとビルドフォンから通知が来る。転生者による犯罪などでは無く新しい転生者関連の情報だった。しかしその内容は驚くべきものだった。
〔この世界に転生者は送った犯人はまだ分かりませんが、犯人が従えている転生者について一部分かりました。名前と特典についてです。〕
そして名前とその下に特典が書かれていた。だが蒼兎が驚いたのはその特典がすべて仮面ライダーであるからだ。仮面ライダーは数多の創作物の中でも極めて強力であるものが多く、仮面ライダーの力を特典にできるのは信用がある神々だけであり、無闇矢鱈にライダーの力を与えては世界が崩壊しかねない。
「(従えている転生者が、ライダーだと……!?)」
信用されている神ということは、それは立場的にも強さ的にも言えることであり、敵対している者達の原因の実力は未知数、という事である。
「(こりゃ一筋縄じゃ行かないな………)」
『いつも通りじゃない訳だ……』
蒼兎達は今後出てくるであろう脅威に警戒していた。しかし、蒼兎はまだ知らない。もう脅威は動き出しているという事に。