龍斗がシェアハウスで手当てを受けている頃、住宅街の外れにある小屋、そのソファに寝ている青年の元にスクラッシュドライバーが投げられた。
「さぁ仕事をしてもらうわよ。わざわざ彼らにそのドライバーを取ってきてもらったのだからその分はキッチリとね。」
ソファから体を起こしてドライバーを手に取る青年。
「まずは彼らに挨拶でもしてきたらどう?」
「……。」
青年は何も言わずに小屋から出て行った。
朝を迎え龍斗はシェアハウスの面々を集めて頭を下げていた。
「心配掛けた、すまん!」
「全く…傷は大丈夫なの?」
少し呆れながらも風華は怪我の具合を聞く。龍斗はバーサーカーの宝具によってかなりの傷を負っていた。
「痛いところは痛いけど、問題は無いな…」
「龍斗さん?貴方がバーサーカーの宝具を食らって生きているのは奇跡なんですからね?」
「というか、数時間の気絶で済んだのがもはやありえないことなんですよ!あのバーサーカーの宝具なのに!」
「そ、それは何回も聞いたって!」
「……まぁいいです、でも動けるからと言って無理をしては行けません、今日はできるだけ運動なんかは控えてください。」
「分かったよ……」
「お説教は霊夢さんや咲夜さんたちに任せるとして……龍斗さんに一応、渡しておくものがあります。」
「え?」
詩音から渡されたのは白い魔法使いとの戦闘によって破壊されていた筈のスクラッシュドライバーであった。
「あれ!?なんで詩音が持ってんの!?」
「蒼兎さんの部屋から発見しましたので私が修復しました。壊れていたようですがほぼ直っていました。蒼兎さんが直していたんだと思います。」
「蒼兎が……」
「……とりあえず、学校に行こっか!」
その後、特に事件が起こる訳でもなく、襲撃による影響で午前中のみ授業を全て受け終えた龍斗達は南宮に昨日の学校襲撃の事細かな説明と龍斗の怪我について報告し、本日の業務は風華、雷華、結衣の3人のみで行われることになった。
「ああ、それから暁古城と遠山キンジの記憶が戻ったそうだ。丁度お前たちが学校を襲撃した怪人たちを倒したタイミングでな。」
南宮が2人についての報告をした後、ふと気がついた龍斗は質問する。
「那月ちゃん、もしかして2人にはなにか特別な力とか……イデ!」
「教師をちゃん付けで呼ぶな、あるわけないだろう?あったとしてもお前たちに話すわけが無い。学生のプライバシーにも関わるからな。」
「ですよねぇ……」
龍斗に扇子を投げつけながらも至極当然なことを言う南宮。続けて南宮が話し出す。
「ハァ、まぁいい。今日貴様らにやってもらうのは街のパトロールだ。最近学生による強盗が相次いでいる。仮面ライダーに変身はせずに対処しろ。」
「相手は武器を所持しているようだがお前らなら問題ないだろう。」
「神木は激しい運動はできないだったか?なら今回は学校の清掃でもしていろ。」
「休みはくれないんですね……」
「昨日の襲撃、お前が戦っていた廊下はまだ使えない、理由は戦っていたお前の責任だ。後片付けはしっかりしろ。」
「了解……」
「他の3人も頼んだぞ。」
「「「了解しました!」」」
学校の清掃を終えた龍斗はシェアハウスに帰宅している間であった。小腹がすいたため、コンビニに寄ろうとするところで雷華から電話がかかる。
「もしもし?どうした雷華?」
『あ、龍斗!今どこにいる?パトロールが終わったから一緒にお昼ご飯食べない?』
「早いな、強盗もう捕まえたのか?」
『なんてことなかったよ!ぶいぶい!』
時刻は午後2時過ぎ、お昼には少し遅いが腹は減っている。せっかくのお誘いでもあるため承諾する龍斗。
「いいぜ、どこ行けばいい?」
『じゃあ場所メールで送ったからそこに来て!待ってるねー!』
「おう」
通話を終えてメールで送られた場所を確認する。ビルドフォンを変形させてバイクにして早めに向かう。その間、龍斗はアーチャーに強奪されたスクラッシュドライバーについて考えていた。
「(アイツら、女神もいるんだしスクラッシュドライバー奪う意味無くないか?)」
「(奪う労力より作ったり転生省から取ってくるとかのほうが安上がりなんじゃないのか?)」
「(目的が見えないな……)」
10分もしないうちに到着した龍斗は店に入ろうとしてとっさに危険を感じて後ろに飛ぶ。龍斗がいた場所には数発のエネルギー弾が地面を焦がした。
「誰だ!?」
周辺を見回し店の反対側から姿を表した人型。
「そこか!誰だお前は……………は?」
龍斗が目にしたのは自身が持っているのと同じスクラッシュドライバーを腰に装着し、黄金のスーツと特徴的なアーマーを身に纏った黄金の兵士、『グリス』だった。
「なんの冗談だこれ?」
「あの女神はふざけてんのか?」
「よりにもよってアイツと同じ……グリスを差し向けてきやがったのか?」
「ざけんなよ……。」
「ふざけんなよ!!!」
あまりの状況についに怒りを爆発させる龍斗。詩音からの制止など思い出すことなど全くなくスクラッシュドライバーを腰に装着する。ドラゴンスクラッシュゼリーのキャップを回転して合わせ、叩きつけるようにドライバーに装填する。
『ドラゴンゼリー!』
「変身!!」
そして怒りを表すようにレンチを勢いよく下げた。
『潰れる!流れる!溢れ出る!』
ビーカーに絞られスーツを形成し、頭部から溢れ出る水色の液体がアーマーを形成する。ゼリーの飲み口部分が胸に向かってドラゴンの顔を横にした胸アーマー。頭部はドラゴンの顔を象った仮面。
『ドラゴン イン クローズチャージ!』
『ブラァァァァ!』
ドライバーから変身した戦士として名を高らかに宣言し、咆哮の声を上げる。久しぶりにクローズチャージに変身した龍斗だが、感慨などに浸っている余裕などなく怒りをあらわにさせながら左腕にツインブレイカーを装備する。
『ツインブレイカー!』
「ぶっ飛ばす!」
ビーム砲を掴んで変形させてパイルバンカーを出現させる。
『アタックモード!』
相手も同じくブレイカーを変形させる。
『アタックモード!』
「「……」」
互いに走り出し、ブレイカーをぶつけ合う。お互いに下がり、またお互いに突撃する。戦法や体術などはなく純粋に殴り合うように攻撃を与える。
龍斗のブレイカーのパイルバンカーをグリスが掴む。高速回転しているのを気にも止めず龍斗のもまた関係ないと言わんばかりに右の拳でグリスを殴りつける。
互いに離れず殴り、パイルバンカーをぶつけ、蹴りを入れる。
「龍斗!!」
雷華に声を掛けられた龍斗はふと我に返る。一度距離をとってみるもグリスから追撃はない。
「龍斗、大丈……え?」
雷華がグリスに気付く。そしてつい今まで龍斗が戦っていたことに気が付き衝撃で頭が真っ白になる。
「ねぇ龍斗……あれは蒼兎なの?」
「そんな訳ないだろ……!俺を襲ってきた、ドライバーはあのクソッタレ女神が持ってる……グリスを俺らに差し向けるくらいできる!」
「…でもよりによって蒼兎の……蒼兎が変身してたライダーで来させやがって!」
グリスは立ち尽くしたままである。その様子が余計に龍斗の神経を逆撫でした。
「あの野郎!すぐにぶっ倒してその仮面の下の顔ぶん殴ってやらぁ!」
「待って龍斗!」
雷華の制止を振り切り、ドライバーのレンチを下げつつツインブレイカーにクローズドラゴンを装填する!
『スクラップブレイク!』
『READY GO!』
『LET'S BREAK!』
「ウラァァ!!」
グリスはドライバーのレンチを下げて右手を握り構えるだけである。
「こんのヤロォ!!」
しかし龍斗のブレイカーが到達する前に、グリスは先程の殴り合っていた様子から考えられないほど無駄のない俊敏な動きでカウンターを繰り出し、龍斗の頭へ拳を叩きつけた。
空中に打ち上げられて雷華の元まで吹っ飛ばされる龍斗。強制的に変身が解けて雷華が駆け寄る。
「龍斗!!」
騒ぎに気付いた風華と結衣も駆け寄り、グリスに気がつく。
「龍斗!雷華!」
「……!?」
「あれって……!?」
驚く2人を一瞥し、グリスはその場から立ち去ろうとする。
「待て……!」
龍斗が体を起こしてグリスに向かって叫ぶ。
「誰なんだよお前ぇ!勝手に俺らの大切な仲間の姿してんじゃねぇよ!」
その叫びをきいたグリスは自身の変身を解除し、その姿を見せた。しかしその姿は龍斗達にとって1番想像できなかった人物……
「え……?」
「……うそ」
「
「あ……おと……?」
「……。」
第一高校を襲撃した龍玄を命の引き換えに倒し、この場にいる全員の目の前で消えた、『白神 蒼兎』であった。