大規模作戦当日
龍斗達は最後に南宮を含む攻魔師、治安部隊の隊員達、武偵の代表との作戦の最終確認を終えて奇襲をかける廃工場の持ち場へついた。
分担は風華と雷華が攻魔師、治安部隊、武偵達と共に転生者の対処、結衣は女神と戦闘、龍斗のサーヴァントであるセイバーとランサーは女神のサーヴァント達を抑え、そして龍斗は蒼兎と対峙する手筈になっていた。
奇襲作戦を始める1分前になり緊張が高まる。廃工場からは転生者達の大きな笑い声が響き渡る以外は静まり返っている。龍斗達が耳元に付けた通信機から連絡が入る。
『「作戦開始30秒前だ、各自突撃用意……!」』
『「突撃ィ!!」』
通信機越しの合図によって作戦が開始した。
廃工場の入口が爆破され、工場内へ催涙ガスとスモークが投げられる。一番最初に廃工場に入っていくのはリモコンブロスの風華とエンジンブロスの雷華の2人。
煙の中を突き進みながら転生者達に拳と蹴りを入れていく。数人の転生者の意識を奪い、残る者も催涙ガスにより全く動けない。専用のガスマスクを付けた治安部隊が突入し、転生者達と戦闘、拘束していく。
2人の人影が見えた風華と雷華は蹴りを放つが両名の人影は受け止めた。ガスとスモークが晴れてその姿があらわになる。
2人の攻撃を防いだのは女神のサーヴァント、アーチャーとバーサーカーだった。女神のサーヴァント2人はほぼ同時に自身の得物を風華と雷華に向ける。それを上から降りて遮るように現れた龍斗のサーヴァント2人が弾いて防ぐ。
「させねぇよ!!」
「同じ過ちを繰り返して騎士の名折れ!行くぞアーチャー!!」
セイバーとランサーの攻撃を避けて下がるアーチャーとバーサーカー。アーチャーは面倒そうな視線を送りバーサーカーは鼻で笑う
「厄介なのが来たな…」
「ハッ……」
結衣はエボルトを憑依させて腰にエボルドライバーを巻く。
「行くよ!エーちゃん!』
『オッケー!任せて主!」
結衣からエボルトへ体の意識は切り替わりエボルトは詩音から渡されたラビットエボルボトルとライダーシステムエボルボトルを振りキャップを合わせる。
『ラビット!ライダーシステム!』
『エボリューション!』
ドライバーのレバーを回して自身の前後にランナーとそれを包むモヤが形成されていく。
『Are you ready?』
「変身!」
ランナーが合わさり黒いモヤがエボルトの体を包んだ。
『ラビット!ラビット!エボルラビット!』
『フッハッハッハッハッハ!』
暴風のようなエネルギーが吹き荒れると同時にモヤが晴れてその姿を現す。胸アーマーはエボルドラゴンと同じく、エボルコブラより簡略化された軽装。腕や足もエボルドラゴンと似た箇所が多い。
唯一全く違うのはその頭部。2匹のウサギが向かい合うように形成された複眼の仮面。エボルトはウサギの耳を指でなぞり上げて宣言した。
「フェーズ3……完了!」
「クソ……お前らやるぞ!!」
「言われんでもやってやらぁ!」
「ボケがァ!!」
この場で変身を完了させたエボルトへようやく催涙ガスの効果から開放された転生者3名がエボルトへ攻撃を仕掛ける。
「ウォーミングアップと行こうか、主?」
エボルラビットへ変身したエボルトはうさぎの名に恥じぬ超高速の跳躍と脚力で転生者へ一瞬で肉薄した。目の前に突然現れたように見えた転生者は持っていた特典と思しき銃を構える暇なく、そのまま鳩尾を勢いよく蹴られて壁へ亀裂を走らせながら激突して気絶した。
「ちょっと加減が難しいかも……」
「嘘だろ!?クソ!!」
壁に叩きつけられた転生者を見ても怖気付くことはなく他の転生者もエボルトへ向かっていく。最初に巨大な大剣を持っていた転生者が思い切りエボルトへ振り下ろす。
エボルトは横に飛んで回避し廃工場の柱と天井を蹴って大剣の転生者の背後へ周り、頭を狙った回し蹴りをほぼ目視できない速度で行う。
高速で、なおかつ背後からの蹴りを受けた転生者は即座に意識を刈り取られて地面に倒れた。
隣にいたもう1人の転生者は何が起こっているのか把握出来ぬまま周りに見渡す。前と横にいた仲間とエボルトを見失い、右往左往するがそんな隙をさらした転生者へエボルトは背中に飛び蹴りを食らわせる。足場にした廃工場の柱に激突した転生者はそのまま気絶した。
『エーちゃん!女神のもとに向かおう!』
「オッケー!」
結衣の言葉に頷き、エボルトは女神を探す。辺りを見渡すと転生者達がエボルトの方へ集中していることが分かった。
「あれ!?さっきまでこんなに居なかったのに!?」
「あれが女神の賞金首か!?」
「ちぃと面倒そうだが殺れば遊んで暮らせる上に特典も追加で貰えると来たァ!」
「お前ら抜け駆けすんじゃねぇぞ!」
「『えぇぇ〜!!?』」
女神の策略か徹底的にマークされてしまったエボルト。しかし転生者とエボルトを遮るように龍斗のサーヴァントであるアサシンとルーラー、そしてシールドを持った治安部隊が現れた。
「エボルト殿!貴方は女神の方へ!」
「ここは私達が食い止めます!早く!」
「ごめん!ありがとう!」
龍斗は静かに蒼兎の元へ来た。互いに無言で視線を交わす。
「蒼兎。一つ、明確に聞きたい」
無言な蒼兎を少し確認して龍斗は意を決して聞いた。
「お前が敵対してるのは……なにか理由があるからなんじゃないのか?」
「お前がこうするのは、なにか意味があるんだよな?」
蒼兎は目を瞑った思案したようだが、なにも答えなかった。
「………わかった」
2人はお互いにスクラッシュドライバーを取り出す。
「詩音……使わせてもらうぞ……!」
スクラッシュドライバーを腰に巻き付け、別々のスクラッシュゼリーを取り出し、キャップを合わせドライバーに装填しレンチに手をかける。
『ドラゴンゼリー!』
『ロボットゼリー!』
「スゥ……変身!!」
宣言とともに2人はレンチを下げてゼリーを潰す。対面する2人にビーカーが現れて黄色と水色のゼリーが満たされ、ビーカーが引き絞るように2人に纏わりライダースーツを形成する。
『『潰れる!流れる!溢れ出る!』』
形成されたライダースーツの頭部からゼリーが溢れ出て飛び散ったゼリーがアーマーを形成する。
『ドラゴン イン クローズチャージ!』
『ロボット イン グリス!』
『『ブラァァァァ!』』
ベルトから戦士の名がつげられ変身シークエンスを完了させた。互いに左手にツインブレイカーを装備し構える。
「「ッ!!」」
2人はほぼ同時に走り出した。
「オォォォ!!」
互いの胸部装甲にパイルバンカーをぶつけ合う。鮮血のように火花が散るが互いに構わず拳と武器を交わす。
不良の喧嘩にもボクシングの試合にも見える荒い殴り合いは拳をぶつけ合って互いに下がったところで変わる。龍斗はブレイカーにクローズドラゴンをセットする。
『READY GO!』
「オラァァ!!」
『LET'S BREAK!』
青い龍が龍斗の後ろに現れ、渾身の突きと共に炎の濁流が蒼兎を襲う。蒼兎は腕をクロスして防ぐが廃工場の壁を突き破って吹っ飛ばされる。
廃工場近くの港湾まで吹っ飛ばされた蒼兎は海に落下するのを取り出したスチームブレードを地面に突き刺して回避する。
蒼兎を追って港湾まで来た龍斗は蒼兎の持つ新しい得物を見て驚愕するが同時に納得する。
「はは、そりゃそうだよな?ネビュラスチームガン持ってんだ、スチームブレードも支給されてるわな……」
風華と雷華は2人で武器を共有していた。今でこそ蒼兎が消滅した際に残ったネビュラスチームガンで風華と雷華は別々で行動し、潤動による変身ができるようになっているが元はネビュラスチームガンとスチームブレードを2人で兼用。
2つの武器はセットで特典としてある。ならばネビュラスチームガンを持っていた蒼兎がスチームブレードも持っているのも当然であり、龍斗はすぐにそう思い至った。
「だったら俺も!」
龍斗もビートクローザーを呼び出し、蒼兎へ迫る。龍斗のビートクローザーの振り下ろしを蒼兎はスチームブレードをダガーのように逆手持ちで防ぐ。
龍斗はブレイカーで防御を崩しながら回し蹴りをする。蒼兎は上半身を逸らして蹴りを避けてスチームブレードを空中で持ち直し龍斗へ突き出す。
クローザーで軌道を逸らし龍斗は蒼兎へ問いかける。
「蒼兎!なんでお前が女神についたか!俺には分からない!」
「なにか理由があるって言われてもそれに納得できるかも!今の俺じゃ判断がつかない!」
クローザーを上へ振り上げて肩で蒼兎にタックルする。体勢を崩した蒼兎へ龍斗はクローザーとブレイカーで攻撃する。
「けど!あのクソッタレな女神についてる奴で、俺の兄貴を殺したようなクソ転生者がいるんなら俺は全力でソイツをぶっ潰す!!」
後退する蒼兎へビートクローザーを投げる。スチームブレードを弾かれてさらに下がる蒼兎。龍斗は空いた右手でスクラッシュドライバーのレンチを下げた。
「もうこれ以上だれも悲しまないように……俺が!!」
「だから蒼兎!もしお前がそれに加担したり、邪魔をするようなら……たとえお前でも許さない!」
「ウォリャァ!!」
蒼兎へ向かって渾身の右ストレートを放つ龍斗。
風華と雷華の連携、そして治安部隊と南宮による支援により、転生者を取り逃がすことはなく、あとは無力化するというところまで作戦は進んだ。しかし龍斗と女神のサーヴァント同士の戦闘は拮抗しているようだった。
バーサーカーの打ち据える槍を受け止めるランサー。己と戦っているが戦い方や得物の違いでランサーは押されつつある。セイバーもアーチャーの銃撃を弾きかわしながら接近に持ち込むが決め手に欠ける。
「チィ……めんどくせぇな!」
「マスターへ加勢したいが、このままでは……」
アーチャーもバーサーカーも戦闘力に直結する魔力を女神から無尽蔵に供給されているため決着はまだつかない。そんな中で転生者との戦いを終えた風華と雷華が参戦する。
「セイバー!ランサー!」
「お待たせ!大丈夫!?」
「嬢ちゃんたち、そっちは終わったんだな!?」
「ええ、全員キッチリ無力化してやったわ!」
「あの人らも倒しちゃうよ!!」
女神のサーヴァント達は加勢しにきた風華と雷華を見る。
「敵が増えたな、どうする?」
「どうもこうもねぇ、ただ殺すだけだ」
互いに睨み合う状況の中で風華は雷華に言う。
「雷華、今のうちに変わるわよ!」
「オッケー!」
雷華はエンジンギアを風華に投げ渡し、ショットライザーを腰に巻き付けた。そして、龍斗とは別のプログライズキーを起動させる。
結衣は女神を見つけ素早く迫る。周囲に転生者はいない、絶好のチャンスである筈だった。
「てぇぁぁあああ!!」
エボルトの新たなる形態による渾身の飛び蹴りは女神の後ろ姿を完全に捉えた筈であった。間に入る人物が防ぐまでは。
「よっと、ハハッ危ないですよー女神様?」
「!?」
間に割り込んできた人物はボロボロの布のフードの被っていた。飛び蹴りの体制であってエボルトに向けて腕を突き出し蜘蛛の巣のようなエネルギーを展開して女神を守った。
「だれ!?」
蜘蛛の巣型エネルギーから飛び退き、そしてエボルトは問いただすがその気配にすぐに思い至って驚愕する。
「なんで……!?」
その人物はエボルトを見ながらゆっくりとそれをフードを外す。
「ふふ、久しぶりだね、エボルト?」
「
『エーちゃんのお姉さん!?それって……!』
「ふふ、なかなか面白い格好になってるねエボルト?」
「あっエボルトの主人ちゃんとははじめましてだね、じゃあ改めて」
「初めて麗しいお嬢さん?私の名前は『キルバス』以後お見知り置きを?」
「どうしてねぇさんがここに!?まさか女神についてるの!?」
「うぅーん、どっちかっていうと蒼兎くんについてるかな。蒼兎くんは女神様についてるから私も女神様についてるって感じになってるけど」
「邪魔しないでねぇさん!そいつは倒さないといけないの!!」
「そうは言ってもねぇ……一応蒼兎くんとの約束が終わるまでは彼についてないといけないし?」
そう言ってキルバスは被っていたボロボロの布を剥ぎ取って投げ捨てる。黒いバイクパンツに赤いライダースジャケットを着た姿を晒し、どこからか現れた赤い蜘蛛型ロボット『キルバスパイダー』が地面から跳ねてくるのをキャッチする。
そして龍斗が持っていたのと同じビルドドライバーを腰に巻き付けてジャケットのポケットから取り出した『キルバススパイダーフルボトル』を数回振ってキャップを合わせる。
「まさかねぇさん、戦うの?」
「ええ、だってそうしないと止まらないでしょう?エボルトは?」
キルバスパイダーにボトルを装填し、足を畳む。ドライバーにセットすると周囲の空気が重く感じた。
『キルバススパイダー!』
ドライバーのレバーを回すとキルバスの前後に蜘蛛の巣型のランナーが現れ、赤い液体が中を流れる。
『Are you ready?』
「変身」
ランナーがキルバスを挟み込み、その中心が混ざり溶けるように姿を変える。
『スパイダー!スパイダー!』
『キルバススパイダー!!』
変身シークエンスを完了させて赤い霧のエネルギーを周辺へ撒き散らし、その姿を現す。
黒いスーツに蜘蛛を正面から見た状態を模した赤い胸アーマー、そこから足が伸びるように肩、そして腿のアーマー。腕や足には赤く毒々しい模様がついている。
『仮面ライダーキルバス』ビルドドライバーで変身したにも関わらず、その存在感はエボルトよりも上だった。
「じゃあ楽しもうか、姉妹喧嘩ってヤツを!」