抜錨!対ブラック企業連合艦隊!   作:劉翼

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開幕

「……妙だと思わないか、名取(なとり)

 

 敵機動艦隊迎撃のため出撃し、長いサイドテールを靡かせて海上を滑走する那智(なち)は、脇を往く名取にポツリと話しかけた。

 

「はい。空母4隻の機動艦隊のはずなのに、敵艦どころか航空機1機すら見えないなんて……」

 

 那智の口振りから何が言いたいかを察した名取も、抱いていた疑問を口にする。

 地上施設へ空襲を行うための攻撃機や爆撃機はおろか、偵察機すらも影も形も無い。

 偵察機はその名の通り艦隊の目として攻撃目標の位置や兵力、戦力配置を偵察する他、気候の変化が極端な海では気象データの収集も役目となる。

 いわば艦隊の行動には必要不可欠な存在であり、これを出さずに手探りで攻撃を行うなど自殺行為とすら言えるだろう。

 それがまったく姿を見せないというのが不気味でならないのである。

 

「対空レーダーにもそれらしい気配は無し……いるのは海鳥ばかり、か」

 

「もしかして気まぐれに嫌がらせされたんじゃ……?」

 

「いや、燃料や出撃後の装備点検の資材もタダじゃない。それを浪費して困るのは奴だ。それを流して利を得るのが奴の目的なのだからな」

 

 知りたくもないが、嫌でもあの司令の特徴がわかってしまっている那智は訝しげに呟く。

 その時だ。

 

「……むっ……!」

 

 彼方の水平線上に、4つの影が見えてきた。

 人型の影が1に、クラゲのような影が3。報告通りのヲ級とヌ級だ。

 

「……出たぞ……! 先手を打つ!」

 

「は、はいっ!」

 

 足でブレーキをかけ、姿勢を低くしながら艤装の主砲を展開した那智と名取は、まだこちらに気付いていない敵空母を照準。

 

「……撃ぇっ!」

 

 そのまま那智の20.3cm連装砲と、名取の14cm単装砲が轟音と共に火を吹いた。

 その音で相手方も気付いたようで、3隻のヌ級は潜航して身を隠し、ヲ級は艦娘同様に海上を滑走して回避に動く。

 その素早さはかなりのもので、着弾地点からすでに大きく離れている。

 

「速い……!」

 

「(……おかしい。ここまでまったく見かけなかったという事は、艦載機はまだ格納しているはず。ヲ級の搭載能力からして、艦載機が入っている状態であれだけの機動力を出せるのは……)」

 

 深海側の空母はどういう原理か航空機をある程度縮小して搭載できるが、だからといって質量保存の法則を無視して重量まで減るわけではない。

 にもかかわらず軽快な動作で回避運動を行えるという事は……。

 

「(まさか……搭載していないのか……!?)」

 

 だとすれば、なぜこんなところをうろついていたのか。

 空母4隻が航空機も他の護衛も無しに活動するなど普通はありえず、はぐれ艦にしても駆逐艦や巡洋艦といった随伴艦が1隻もいないのは不自然だ。

 

「……ヲッ!」

 

 そんな思考を巡らせていた那智の隙を突き、一気に肉薄したヲ級が手にしたステッキを振り下ろした。

 

「むっ……!」

 

 右腕に取り付けた砲塔で反射的に受け止め、重巡のパワーで押し返す。近接戦闘ならば空母にパワー負けはしない。

 

「なっ、那智さん! ……えっ? ひゃあぁぁぁーーーーっっっ!?」

 

 那智の援護のため再度主砲を構える名取であったが、突如海中から飛び出したヌ級に激突されて転倒してしまった。

 だが、ヌ級達は再び海中へと消え、追い討ちしようとはしなかった。

 

「(……さっきのヲ級も本気でこちらを討とうとはしていなかった……こいつら、何が目的だ……!?)」

 

 海面を滑って名取へ近付いて助け起こすと、距離を取ってヲ級とその周りをぐるぐる回るヌ級と対峙する。

 相手の意図も掴めぬまま、状況は膠着状態へと移行する事に……。

 

 

 

「……んん……?」

 

 研究員が扉の横に取り付けられたコンソールを操作している。だが、何度ロック解除を打ち込んでも扉は閉ざされたままだ。

 

「開かないのかい?」

 

「は、はい……おかしいな」

 

 こうなると研究員の心中には恐怖や焦燥が渦巻き始める。

 

「(ま……まさか……まさかそんな……)」

 

 その時。後方からガラスの割れる音が響き、3人が振り向くと、3隻の駆逐イ級が床をのたうちながら近付いてきているではないか。

 

「っ!?」

 

「ひぃっ……!!」

 

 次の瞬間、開いた大口から一斉にせり出した砲身が震え、3人目掛けて主砲が発射された。

 

「チッ……!」

 

 レンは右手に浅井(あざい)を抱え、左手で研究員の首ねっこを掴んで横へと飛び退くと、デスクの陰に2人を放り込む。

 3人のいた場所には3発の砲弾が着弾し、壁に風穴が空けられている。

 

「(……コイツラ、死ンデヤガル。……死体ヲ無理矢理働カセルヨウナ真似シヤガッテ……!)」

 

 離反したとはいえ、自分が深海棲艦である事実が変わったわけではなく、彼らがかつての同胞であるのもまた事実。

 その死体に鞭打ち、死してなお動かされる仲間の姿にレンは怒りが込み上げるのを感じる。

 

「ひっ……ひっ……ひぃぃっ!」

 

 と、その時、ガタガタ震えていた研究員がパニックを起こして走り出し、扉を叩き始めた。

 

「しっ、司令! 開けてください司令っ! 龍造寺(りゅうぞうじ)司令! 大佐ぁっ!!」

 

 喉が潰れるのではないかと不安になるほどの叫びを上げながらガンガン扉を叩くが、そんなもので開くのならロックなど無意味であろう。

 完全に暴走状態となったイ級は、センサーが捉えた動体反応……すなわち研究員を標的と認識し、じりじりと近付き……。

 

「あっ……」

 

 魚雷のような身体からは予想もできない挙動で飛び跳ね、研究員の頭目掛けて頑強な歯の並ぶ口を開いた。

 決して鋭い牙とはいかないものの、人間の頭蓋骨程度ならば顎の力で強引に砕いてしまえるその大口が、今まさに研究員に襲いかかろうとした瞬間、その前に横から飛び出した影が立ちはだかった。

 

「……ワリィナ……」

 

 そう言いながら腕を引いたレンは、眼前に迫るイ級へと弾丸のように拳を突き出した。

 その拳はイ級の表面装甲を砕いたばかりか、まったく減速する事無く進み続け、なんとイ級の身体の上半分を抉り千切ってしまった。

 見るも無残な状態となった下半分が慣性のままに飛んでいって壁に激突し、上半分はひしゃげ、潰れ、ただの黒い金属の塊にしか見えない状態でレンの拳にしばらく付着していたが、少し間をおいて床に落下した。

 飛び散った青い体液を拳から滴らせるレン。

 この個体は恐らくは元から自我など持たない、いわば人形、兵器だったのだろう。

 だが、感情が無くとも、すでに死していようとも、確かに自分と同じ深海棲艦だった存在なのだ。そんな相手にこのような残虐なトドメを刺した事に、レンはわずかながら罪悪感を抱いた。

 ……が、今は感傷に浸っている暇など無い。イ級はまだ2隻残っているのだ。

 

「……フッ……!」

 

 浅井へ砲身を向けていた1隻に飛びかかって床へと押し付け、そのまま腕と肩に力を込めて胴を真っ二つに粉砕。

 残る1隻に目を向けると、研究員へ主砲が発射されようとしていた。

 今の立ち位置では本体への攻撃は間に合わないと判断したレンは、床が削れるほどに足腰に力を込めて走り出す。

 そして、レンが立ちはだかるのと、イ級の主砲が発射されるのはほぼ同時だった。

 

「ッ……! ……アッブネェ……」

 

 熱を持ったレンの手の中から白い煙が上がり、砲弾がその回転を完全に停止する。

 そう、研究員とイ級の間に立ったレンは、なんと発射された砲弾を掴んで受け止めたのである。

 レンは相手が次弾装填を始める前に一気に距離を詰め、その顔面に拳を叩き込んで装甲を突き破り中枢回路を破壊。これで3隻のイ級全てが機能を停止した。

 深々と刺さった腕をイ級の残骸から引き抜き、浅井へと歩み寄る。

 

「助かったよ、レン」

 

「イヤ………………トリアエズ、野郎ニハ落トシ前ツケテモラワネェトナ」

 

「ああ……まさか痛い所を突かれたからとこうも強硬手段に出てくるとは。あ、君、大丈夫か?」

 

 腕を組んで考え込んでいた浅井だったが、ふと思い出して腰を抜かした研究員へと声をかける。

 

「……も……」

 

 手を差し出された研究員は慌てて起き上がったかと思うと、深々と土下座を始めた。

 

「申し訳ありません! ぼ……僕はとんでもない事を……! 本当に申し訳ありません!」

 

「……よしてくれ。それより、これは君の独断てわけじゃないんだろう?」

 

 まさかの土下座謝罪に驚いた浅井だったが、穏やかな笑みを浮かべてしゃがむと、研究員の肩に手を置いて優しく語りかける。

 

「……は……はい……僕はここの研究スタッフで……龍造寺司令からあなた方をここへ連れていくようにと…………ど、どうなるかは薄々わかっていたのに……本当にどうお詫びすれば……!」

 

「いや、君に悪意があったわけじゃないのはわかる。むしろ君も被害者だ。……レン、次はどう仕掛けてくると思う?」

 

「一旦仕掛ケテ失敗シタンダ。ナニガナンデモ消シニクルンジャネェノ? コッチガクタバルマデヨ」

 

 イ級の残骸を1ヶ所に集めながら、浅井からの質問に答えるレン。

 呆然とその後ろ姿を見ていた研究員だったが、その内にふとある事に気付いてしまった。

 よく見ると、今の戦闘でレンの前腕部分の特殊メイクが剥げてしまい、青白い素肌が露となってしまっているのだ。

 その事とエコーがかったような独特な声、そして先ほどの暴れっぷりから、彼の中には1つの疑問が湧いてしまう。

 艦娘は艤装を装着する事によって初めて身体能力のリミッターが解除され、人間を圧倒し、深海棲艦と渡り合える力を得るのであり、そうでない場合は並の人間より多少打たれ強く力があるという程度のはずなのだ。

 

「……も……もしかして……彼女は……!」

 

「しっ!」

 

 レンを指差して何か言おうとした研究員へ、浅井が人差し指を立てて口止めする。

 

「……言いたい事はあるだろうけど、今は言わないでほしい。少なくとも彼女は人類の敵じゃないんでね」

 

 口調にも表情にも嘘のようなものは感じられない浅井の態度を見て、研究員は半信半疑ながらもコクコクと頷く。

 

「オイ、ソコノ。コノ扉ブッ壊シテ良イカ? ココカラ出ルナラ壊サナキャダシヨ」

 

「あっ……は、は、はいっ! どうぞどうぞ!」

 

 半ば反射的に答えてしまった研究員の返事を聞いたレンは、扉と向き合って右腕を振り回し……。

 

「……フンッ!」

 

 その拳で扉に風穴を空けると、そこに両手をあてがってメキメキと穴を押し広げていく。

 

「はー……完調状態だとこれほどのパワーが出せるのか……」

 

「コンナモン、軽巡クラスデモデキラァ。……ヨシ、コレデ通レルダロ」

 

 人1人が十分に通れる大きさに広げられた穴を見ながら、レンは首をコキコキと鳴らしている。

 

「ありがとう、レン。……君も一緒に来た方が良い。たぶん向こうは君も口封じしようとするはずだからね」

 

「はっ、はいっ……!」

 

 

 

「急げっ! 奴らが研究棟を離れる前に始末するんだ!」

 

 30名ほどの完全武装の兵士を焚き付けながら通路を進む龍造寺大佐。

 彼らは岩川基地に所属する兵士の中でも問題視されている荒くれ者達であり、龍造寺の悪行に協力する見返りとして多額の報酬を受け取っている、いわば龍造寺が効率良く搾取を行うための手駒達である。

 龍造寺の行いが明るみに出れば、彼らも今のような甘い汁を吸えなくなるばかりか、芋づる式に処罰されかねない。

 そう諭された兵士達は、簡単に稼げる今の状況が消える事を恐れ、その危険因子たる浅井達の抹殺に動き出したわけだ。

 龍造寺は龍造寺で、イ級の暴走による事故に見せかける計画が破綻してしまい、やむ無くこの手駒達を使っての直接的な殺害へと切り替えたのだ。

 イ級が暴れて荒れ放題の研究室でならば、派手に銃器を使用しても、暴走を止めようとしたためと言い張る事ができる。

 

「(そのためにも、研究棟へ急がねば……!)」

 

 

 

「……ン……足音……多イナ」

 

 扉に空けた穴から顔を出したレンは、全神経を聴覚に集中させて辺りを探っている。

 

「敵か?」

 

「カモナ。普通ノ人間ヨリ重々シイ音ダ。急イデ離レタ方ガ良サソウダゾ」

 

 扉を抜けると、通路は左右と正面の3方向に伸びており、音は正面から聞こえるようだ。

 

「……レン。重武装の兵士を相手に時間を稼げるか? 無論、殺さずにだ」

 

「デキネェ事ハネェガ……妙高(みょうこう)達ガ何カ見ツケルノヲ待ツノカ?」

 

 浅井からの問いかけに、レンは決して不可能ではない事を伝える。

 

「こっちが下手に逃げ回って頭に血が上ったら、何をしでかすかわからないタイプだからなぁ、あれ……」

 

「……シャーネェナ。ダッタラオ前ラハ机ノ陰ニデモ隠レテナ」

 

 レンは研究室から引っ張り出した机や資料棚でバリケードを作り上げると、その陰に2人を放り込み、改めて通路へ戻りながらスカートを捲り上げ、太股に括り付けたホルスターから2梃の麻酔銃を抜き、曲がり角に身を隠して敵を待ち受ける。

 

「……サテト……人間ハ弱ッチイカラナ……力加減ヲ間違エネェヨウニシネェト」

 

 気配を殺して待つレン、そして浅井達に、悪意と殺意が迫りつつあった……。

 

 

 

「……ん……?」

 

 ダダダダダという廊下を駆ける2つの足音が聞こえ、兵士がそちらを振り向いたまさにその瞬間。

 

「ごめーーーーんっ!」

 

「なさいなのですっ!」

 

 2つの人影……(いかずち)(いなづま)のタックルを受け、兵士はたまらず倒れ込んでしまった。

 

「あがっ!? な、なんだ……」

 

「えいっ!」

 

 電が全身で押さえ込んでいる間に、雷が出力を抑えたスタンガンを兵士に押し当ててスイッチを入れる。

 

「かっ……!」

 

 兵士は起き上がろうとしたところへ電流を流され、ガクンと失神した。

 

「……2人とも見ない間にアグレッシブになったわねぇ……」

 

 自身の所属していた頃からは想像もつかない雷と電の大胆な行動に、足柄(あしがら)は頬をポリポリと掻いている。

 その後ろから顔を出した白雪(しらゆき)は、兵士の服を探り、1枚のカードを発見した。

 

「近海に深海棲艦が現れたこの状況下で、こんな基地の片隅を完全武装の兵士が見張っているなんておかしいですからね。きっとこの先の扉を開けるカードキーです。……少しお借りしますね」

 

 白雪を先頭に4人は廊下を駆け、その突き当たりに扉を確認する。

 見れば、周りの壁にはかつての火災の痕が残っているが、扉は新調され、横にはこの扉と連動しているであろうカードキーを通すロックシステムが設置されている。

 

「普通に考えて、火災事故で閉鎖した倉庫をそのままにした上、こんな物取り付けないわよね……」

 

「はい。つまり、ここには人目につかせたくない何かがある、という事です」

 

 白雪はカードキーをじっと見た後、システムの溝に当てて上から下へと通す。

 鍵を認証したシステムは、ランプの色を赤から緑へ変え、扉を開いた。

 

「……これは……」

 

 中に入った一行は驚いた。

 何しろそこは、後から作られたとおぼしきコンクリートの壁で仕切られたいくつもの部屋に鉄格子まで嵌まって、完全に牢屋の様相を呈していたのだから。

 

「……うっ…………雷ちゃん、電ちゃん。……右側の部屋は見ちゃ駄目よ」

 

 先行した足柄が口元を手で覆い、雷達に忠告する。

 雷達も馬鹿ではない。その言葉が何を意味しているのかは、足柄の表情からもわかった。

 その時、奥の方の部屋からわずかな息遣いが聞こえてきて、一行はそちらへ目を向ける。

 

「……!」

 

 足柄は姿勢を低くして歩みを進め、こっそりと部屋の中を覗き込む。

 

「っ! 羽黒(はぐろ)っ!!」

 

 そして、部屋の中に座り込んだ人物を見て、思わず声を上げたのだ。

 名を呼ばれた獄中の人影も、初めは力無く俯いていたが、その声を聞くと目を見開いて顔を上げる。

 

「えっ……? ……ぁ………………足柄……お姉ちゃん……?」

 

 チカチカと一定のリズムで光る首輪と、頑強そうな手枷を付けた少女……羽黒は足柄の姿を見るや、じわりと目に涙を浮かべる。

 

「お姉……ちゃん…………足柄お姉ちゃぁん……!」

 

「羽黒……良かった……! ……助けに来たわよ! 妙高姉さんも来てる! 今すぐ出してあげるからね! ……ぬ……ぬぬぬぬ……うりゃあっ!!」

 

 足柄は格子を両手で掴むと、渾身の力で左右へ引っ張って歪めてしまった。

 

「さぁ、その悪趣味な首輪と枷も……」

 

「ぐすっ……ま、待って足柄お姉ちゃん…………この首輪……爆薬が埋め込まれてて…………ぐすっ……龍造寺さんの持ってる端末からじゃないと外せないの……うぅ……無理に外そうとしたら…………ごめんなさい……迷惑かけてごめんなさい……」

 

 首輪を指差して泣きながら、力任せには動けない理由を話す羽黒の話を聞いた足柄は、目を丸くする。

 

「ばっ……爆薬っ……!? あのオヤジ何考えてんのよ……!」

 

 足柄は舌打ちしながら無線機を手に取り、敷地外で待機中の神通(じんつう)へ連絡を取る。

 

「……あっ、神通、足柄よ。羽黒を見つけたわ。……でも、爆薬を取り付けられてる上、迂闊に手を出したらドカンといきそうなの。操作できる端末は龍造寺が持ってるらしいんだけど……」

 

「なるほど……妙高さんにも連絡し、司令執務室に無いか探してもらいましょう」

 

「お願い。あと、どうにか那智姉さんと連絡を取れない? 羽黒の身柄を確保できた以上、もう戦ってる必要は無いもの。あまり時間をかけると、こっちの事情なんか知らない那智姉さんがヲ級達を沈めちゃうわよ」

 

 艦載機を積んでいないのでかなり身軽になってはいるが、所詮は空母であるヲ級達では戦闘技術もパワーも那智には及ばない。

 時間が経つほどに不利になると考えて良いだろう。

 

「了解です。恐らくヲ級さんは戦闘中で手が離せないはず……私が直接行って那智さんに伝えてきます」

 

「間に合う?」

 

「軽巡の機動力を甘く見ないでください。川内型の名に懸けて間に合わせます。そちらは妙高さんからの連絡をお待ちください」

 

 足柄との通信を切った後、改めて妙高に先の件を連絡した神通は、那智達とヲ級達の戦闘が行われている沖合へと走り出した。

 

 

 

 

 

《キャラクター紹介》

 

羽黒(はぐろ)

 妙高型重巡洋艦4番艦。

 妙高型姉妹の末っ子で、那智と共に鹿屋基地から岩川基地へと異動となった。

 気弱で臆病な性格で、口癖なのかと思うほどに「ごめんなさい」と謝る。

 性格に引っ張られてか身体も縮こませている事が多く、背筋を伸ばして歩く事はあまり無いが、仲間が多かった鹿屋基地所属時には明るい表情を見せる事も少なくなかった。

 最も気弱だったために龍造寺に目を付けられ、爆薬入りの首輪を取り付けて人質とする事で那智をタダ働きさせる餌にされてしまった。

 その後は怪しまれないように那智と役割を交代させられる事もあり、自分のせいで不自由な身となってしまった那智への申し訳なさで日々胸を痛めている。




どうしよ…龍造寺の悪辣さがどんどん増していく…。
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