抜錨!対ブラック企業連合艦隊!   作:劉翼

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着任

「ここが鹿屋基地か……」

 

「辺境とは言っても、ちゃんと最低限の設備は整っているようですね」

 

 基地入口に設けられたゲートに停まった軍用車両の後部座席から基地施設を眺める男女1組。

 確認を終えて開いたゲートをくぐり、車は敷地内へと入り、大きな建物の前で停車した。

 

「お待ちしておりました。基地司令不在につき代行を務めております、妙高(みょうこう)型重巡洋艦1番艦・妙高と申します」

 

「大本営より当基地司令としての異動を申し渡されました、浅井誠貴(あざいまさたか)中佐。ただいま着任しました」

 

川内(せんだい)型軽巡洋艦2番艦・神通(じんつう)です。僭越ながら浅井中佐の補佐を務めさせていただいております」

 

 建物の入口で妙高が2人を出迎え、挨拶を済ませると、建物の中へと案内する。

 

「前任者の事は聞いています。さぞ苦労なさったでしょう」

 

「お心遣い、痛み入ります」

 

 廊下を歩きながら浅井から発せられた言葉に、妙高が頭を下げる。

 否定しない辺り、実際にとんでもない苦労をしたであろう事が窺える。

 

「基地司令ともあろう方が、艦娘を物のように扱うだなんて……」

 

 神通が拳と声を震わせ、目を伏せる。

 浅井の下で他の仲間達共々、戦友として大切にされてきた神通にとって、この基地で当たり前に行われていた筑紫元司令の暴挙はにわかには信じがたい出来事なのである。

 

「まぁ、唯々諾々とそれを受け入れるしか無かった私達にも非がありますが……全ては勇気を出して告発に踏み切ってくれた皆さんのおかげです。……こちらが基地司令の執務室となります。すでに所属艦娘が待機中です」

 

 妙高が扉を開けると、4人の艦娘が整列し、1名を除いて素早く右手をかざして海軍式の敬礼を行った。

 

「当基地司令として着任しました、浅井誠貴中佐です。よろしく。……こほん……あー、上下関係はあまり気にせず、仲良くしてもらえたら嬉しい。それじゃ、皆の事を聞かせてもらっても良いかな?」

 

 明らかに雰囲気の違う1名が気になりつつも、浅井は順番に自己紹介を促した。

 

伊号(いごう)第百六十八潜水艦(だいひゃくろくじゅうはちせんすいかん)……えっと、伊168です。気軽にイムヤとお呼びください!」

 

「コンゴウガタジュンヨウセンカンゴバンカン、レンゲデス。ヨロシク」

 

(あかつき)型駆逐艦3番艦、(いかずち)です。よろしくお願いします」

 

「あ、暁型駆逐艦4番艦、(いなづま)です! よろしくなのです!」

 

「うん………………うん? なんか……変なの混ざってなかったか?」

 

 一通りの自己紹介を聞いた浅井は、納得しかけた首を傾げる。

 

「……チッ。オイ、ミョウコウ。ヤッパスグバレルジャネェカ」

 

 そう言うと、巫女装束のような服に身を包んだ艦娘は、スカートの中に巻き込んでいた尻尾を展開した。

 それと同時に床を蹴った神通が、その艦娘の喉笛に貫手を突き付けた。

 しかし、神通の首筋にもまた相手の手刀が添えられている。

 

「ヘッ……ハヤイナ、テメェ。フチョウノセイニスルツモリハネェガ……ワズカニテメェノガハヤカッタヨウダゼ」

 

「……妙高さん、これはどういう事ですか? なぜここに深海棲艦が?」

 

 神通の視線を受け、妙高と雷達は降参といった素振りを見せる。

 

「まぁ……いずれは話さねばならない事ではありましたから……。申し訳ありません、浅井司令。彼女は深海側の上官によって廃棄された個体で、我々が救助したのです。義理堅い性格で、筑紫元司令の失脚は彼女の功績と思っていただいてかまいません」

 

「今、電達がここにいられるのは、レンさんのおかげなのです!」

 

 妙高達の目を見て、その言葉に嘘偽りが無いであろうと判断した神通が身体を引くと、レンも同時に腕を引いた。

 

「失礼いたしました」

 

「オマエラトオレタチハ、ズットコロシアッテキタカンケイダ。トウゼンノハンノウダロウヨ」

 

 神通が浅井の右隣へ戻ると、レンはそっぽを向いて鼻を鳴らした。

 

「しかし驚いたな……深海棲艦が人間や艦娘の仲間になるなんて……」

 

「カンチガイスンジャネェ。カリヲカエスタメニココニイルダケデ、オトモダチゴッコスルキハネェ。ヨウガスンダラ、サッサトデテイカセテモラウ」

 

「まったく、レンは素直じゃないわねぇ」

 

「レンさんらしいのです」

 

「アー、ウットオシイ! ヘバリツクナチビドモ!」

 

 左右から肘で小突く雷電姉妹を、腕を振り回してレンが追い払う。

 それは殺し合いをする敵同士とは思えない光景であり、浅井にも神通にもかなりのカルチャーショックであった。

 

「さっそくですが浅井司令。デスクの上に当基地の資料をご用意しておきましたので、ご確認をお願いいたします。はい、皆さん、司令へのご挨拶も終えましたから、騒いでないで部屋を出てください」

 

「ヘイヘイ。オラ、サッサトイクゾチビドモ」

 

 イムヤが扉を開け、両手で雷電姉妹を摘まみ上げたレンが部屋を出るとイムヤが続き、最後に妙高が一礼をして出ていき、扉を閉じた。

 

「……深海棲艦がいる事を、基地の誰もが疑問に思っていない、か」

 

「これまでにたくさんの深海棲艦と戦ってきましたが、あんな個体は初めてですね……」

 

 レンの深海棲艦らしからぬ言動と行動、そしてそれに対する周囲の反応に驚きつつも、2人は用意された資料を読み始める。

 

「これまでに敵襲はほとんど無し。戦闘と言えば哨戒中に遭遇した駆逐艦や軽巡のはぐれ艦程度か……」

 

「以前はもっと多くの艦娘が所属していたようですが、他の激戦区に異動になったようですね」

 

 一時期ほぼ完全に支配されていた海の一部を取り返した事で、大陸間、国家間の連携が取れるようになり、敵をほとんど駆逐できた海域も存在する。

 早い話、この鹿屋基地の管轄区域もそのクチであり、過剰な戦力は不要とされたというわけである。

 とはいえ、敵は神出鬼没の深海棲艦……いないと思ってたら大挙して押し寄せてきた、なんて話もある。

 

「……しっかし……彼女達にはいつ話すべきかなぁ……」

 

「そうですね……ですが、早めにお話しした方がよろしいかと。彼女達は被害を受けていた当事者なのですから」

 

「だよなぁ……まったく、本営のお偉方も無茶を言うよ、本当に……」

 

「ええ、なにしろ……人間や艦娘と戦う事になりかねない計画ですから……」

 

 

 

【キャラクター紹介】

 

■レン

 金剛(こんごう)型巡洋戦艦5番艦・蓮華(れんげ)……という肩書きを用意されるところだった戦艦レ級。

 個体名が無いと不便という事で、上記の肩書きから取った名前を与えられた。

 倉庫に眠っていた金剛型共通の巫女風装束を着用し、元々纏っていたレインコートに留め金を付け、両肩に固定してマントのように羽織っている。

 尻尾の先端は南方棲鬼の攻撃による損壊が激しく、艦娘の艤装修復のノウハウを活かしてほぼ新造されている。

 そのため以前よりも生物感が減り、主砲や機銃、魚雷発射管、爆雷投射機などを選択して装着可能なハードポイントを4つ持つ複合兵装ユニットとなっており、鈍器にもなる。




テンプレのような『借りは返す系ツンデレ』。
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