シャルルが女だと判明して、手を冷やして、やっと落ち着いたところでアキラは尋ねてみた。
「シャルはどうして男の真似を?」
その質問に少し悲しそうな顔をしたまま、シャルルは応えた。
「実家からそうしろって、言われて」
「実家って、デュノア社のことだよね?」
「そう。僕の父がそこの社長。その人からの直接の命令でね」
「・・・・・・」
「僕はね、アキラ・・・・・・」
一呼吸おいて、こう告げた。
「父の本妻の子じゃないんだよ」
とんでもない爆弾が落ちた。
「え?」
「父とはずっと、別々に暮らしてたんだけど、2年前に引き取られたんだ」
悲しげな表情のまま続ける。
「そう、お母さんが亡くなったとき、デュノアの人が迎えに来てね」
「それでいろいろ検査を受ける過程で、IS適性が高いことがわかって。で、非公式ではあったけど、テストパイロットをすることになってね」
「でも、父にあったのはたったの二回だけ。話をした時間は1時間にも満たないかな」
「そのあとのことだよ。経営危機に陥ったんだ」
おかしい、アキラが知っている情報とシャルルの情報が食い違う。
「え? だって量産型のISの世界シェア第3位なんじゃ?」
「そうなんだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ」
ちょっと身を乗り出して語る。
「現在ISの研究は第三世代型の開発が主流になってるんだ。セシリアさんやラウラさんが転校してきたのも、それらのデータをとるためなんだと思う。あそこも、第三世代型の開発に着手しているんだけど、なかなか形にならなくて。このままだと、開発許可が剥奪されてしまうんだ」
そこまで来て疑問は確信に変わった。
「なるほど、君が広告塔として機能すること、そして男なら特異ケースの一夏との接触も容易になるというわけね」
「そう、一夏のデータを盗んで来いって言われてるんだよ。今となってはアキラのでもライのでもいいんだけどね」
伝えるのはためらうはずの、重い内容を背負わされた女の子。それはアキラにとってみれば、とても不愉快な話であった。
「あぁ、ホントのこと話したら楽になったよ、聞いてくれてありがと。・・・それと今まで嘘をついて来てごめん」
確信ができ、疑問が解消されれば、新たな疑問が不快感として生まれる。
「・・・気に食わないな」
「え?」
「僕はね、君のお父さんの考えがわからないんだ」
そう前置きをして、ベットから立つ。
「まず、この学園について。ここはIS学園だよね?」
「うん」
「つまるところさ、この学園は全世界で保護されている場所なんだよ。そんな場所からどうやって盗みを働くのさ」
「あっ!」
「そう。それこそ超能力でもない限り、簡単に盗み出せる代物じゃないんだ」
「たしかに」
「次に君を入学させたい意図だ。保護されているところに送り出すと回収が困難になる。なのになんで送り出したのか」
その二つの疑問を出したところでアキラは己の導き出した結論を出す。
「僕は、君安全を考えたのではないか、という結論に至ったよ。まぁ、所詮は過程さ。本心とはかけ離れてるかもしれないからね。あまり本気に受け止めないでほしいかな」
「そう」
「まぁ、いずれにせよ。両親がいないと、子は生まれないけどさ。君はそれでいいの?」
「え?」
シャルルの前まで行き、しゃがみ、シャルルと目線を合わせる。
「親だからって子に何をしてもいいわけじゃない。僕は君と違って両親に大切にされてきたし両親を大切にしたよ。だから、君の境遇は僕にもわかる、なんてことは言えない。けどね、君には自由に生きる権利があるんだよ」
親が子を諭すように、優しくとも芯の通った思いをアキラはぶつける。
「僕にばれてしまったから、シャルは本国に呼び戻されると思う。さらに偽りの資料で入学しているんだ。よくて牢獄行だと思う。でも、僕はそんなの認めないよ。それは君みたいな子の未来じゃない」
(そう、投獄されるのなあ、僕の方だ。僕は、両親を、家族を手に掛けたのだから)
シャルルは瞳を泳がせながら告げる。
「でも、結果として僕はそうなることに・・・「だったらさ、ここにいればいいじゃん」・・・え?」
アキラは立ちあがり背伸びをしながら、とんでもないことを言ってのける。
「さっきも言ったでしょ? この学園は、保護区なんだよ。それに、僕が黙って入ればそれでいい問題。違う?」
「ふふふ、そうだね」
嬉しそうに、心の底から嬉しそうに立ち上がると、その優しい笑顔のまま、
「アキラ。かばってくれて、ありがと」
見惚れるような笑顔で、優しい声音で。
「うん、気にしないで。僕としても、こんな後味の悪い終わり方は嫌だからね」
アキラはそのまま何も考えずに視線を下げ、そしてすぐに顔をそらした。頬は微かに赤い。
「わぁっ! ・・・そ、そんなに気になる?」
シャルルは己の胸を隠すように身をよじる。
「えっと、その・・・こういうの、耐性なくて・・・」
「ひょっとして、みたいの?」
「っ!?」
「アキラのえっちぃっ!」
「どうしてそうなるんだよぉ」
アキラが泣き言を言ってすぐ、ドアのノックの音がした。
「アキラ、いる?」
「アキラ、晩御飯まだ食べてないみたいだけど、どこか具合でも悪いの?」
「だ、大丈夫です。すぐ行きます」
返事をしながらゆっくりシャルルをベットに背中を押して顔を見せず寝るように誘導する。
「アキラ、入るよ」
扉があき、ライとカレンが入ってきた。声の主はこの二人のようだ。
「何してるの?」
「シャルがちょっと体がだるいっていうものですから。ちょっと様子の確認をと」
「ゴホゴホ」
「それは申し訳ない」
「シャル、僕ちょっと行ってくるよ。君のご飯は部屋に持ってくるから。おとなしく寝とくんだよ」
「ゴホゴホ、うん、ゴホゴホ」
「じゃあ、ライさん、カレンさん、行きましょう」
そのまま部屋を出た。
「父上、母上、わざわざすいません。お手数をおかけしました」
「何言ってんの、息子を気にするのは当然でしょう」
などと会話をしながら、食堂まで歩を進めた。
アキラはこの時、両親にまた一つ、隠し事を作った。
待たせてないなぁ。おかしいな、別の作品の更新は止まってるのに、これの投稿は止まらないぞぉ。
次はアキラ君の設定等を公表していこうと思っていますので、よろしくお願いいたします。