「シャル、戻ったよぉ」
「あ、うん、おかえり」
アキラは配膳トレーを持って戻ってきた。
「はい、持ってきたよぉ」
コトッ!っと軽快な音を立てて机にトレーが置かれる。内容は、ご飯、みそ汁、漬物、きんぴらごぼう、焼き魚だ。
夕食を見たシャルルの顔がゆがんだ。
「どうかしたの?」
「う、ううん、何でもない」
シャルルは椅子に座ると、慣れない手つきで割箸を割り、慣れない手つきで箸を持つ。箸を持つ手さえ、たどたどしい。
「シャル、もしかして、お箸、仕えないの?」
「うん・・・練習してはいるんだけどね・・・・・・」
「フォーク貰ってるくるよ」
「えっ!? いいよ、そんな」
「はぁ・・・シャル、遠慮しすぎ。遠慮しすぎると、チャンス、逃しちゃうよ?」
「で、でも・・・」
「だから、頼りなって。みんなに頼っていくのが難しいなら、僕だけでもいいからさ」
(頼ることを覚えないと、壊れてしまうよ)
アキラは誰かを頼らない。頼ることを知らない。でも、アキラとは違う、優しい世界にいるシャルルなら、誰かを頼れる。
「ね? 僕は君に弱みを握られてるんだ。君の経緯というね。だから、問答無用で使いなよ」
「それって僕の弱みなんじゃ・・・」
「知ってる時点で僕も同罪さ。何なら、隠す提案をした僕のほうが悪い」
「ほら、僕に何かできるなら教えてよ」
「じゃ、じゃあね」
何かを決意したようにシャルルがもじもじし始める。
「なになに?」
「アキラが食べさせて?」
「ん?」
「あ、甘えてもいいって言ったから・・・だめ?」
「いや、大丈夫だよ」
アキラが箸を受け取り持つ。
「アキラ、お箸使えるの?」
「うん。僕、日本とアメリカのハーフなんだ」
(ほんとは日本とブリタニアなんだけど、地図の位置的にブリタニアはアメリカになるんだよね)
きれいな箸使いで焼き魚を毟る。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
パクっ!
「おいしい?」
「うん、おいしい」
「よかったぁ」
「次はご飯がいいな」
「はいはい。ほら、あ~ん」
パクっ!
「あ、ご飯粒ついてるよ」
アキラがシャルのえくぼあたりに付いたご飯粒を取ってパクリっ!
「あっ!」
シャルルの顔がカァっと赤くなる。
「どうかしたの?」
「何でもない」
(ほんとはそれ、すごく恥ずかしいことなのに・・・もぉ)
シャルルはまだ知らない。アキラがライ以上に朴念仁で恋愛感情に疎いことに。
シャルルがご飯を食べ終わって、アキラが食器を返した後。
「アキラってさ」
「ん?」
「なんでそんなに誰かに優しいの?」
アキラのやさしさの起源を聞いてみた。
「僕は優しくなんかないよ。ただ、そういう行動をとらなきゃって、考えなくても体が動くんだ」
そう言いながら、アキラは己の腕をさする。
「シャル、優しさって何だろうね?」
「うーん」
「僕はね、守りたいものを守ることが優しさだと思ってるよ。例えそれが歪んでてもね」
「そっか、僕はねアキラ。自分以外の誰かを大切にすることだと思うよ」
「シャルがそういうんなら、きっと、そうなんだろうね」
「さ、もう寝よう。明日も頑張らなきゃいけないからね」
アキラは寝ることを促す。
「うん、そうだね」
アキラが部屋の明かりを堕とした。
シャルルはまだ踏み込めないでいるアキラの壁を感じた。その壁は厚く、高く、固い。その壁を越えれたら・・・なんて考えてちょっとうれしくなる自分に驚く。
「アキラは寝ないの?」
「いや、寝るけど?」
「じゃあ、なんでベット使わないの?」
アキラは椅子に座ったままだ。
「僕、ベットで寝る習慣がなくてね。こうやって、刀を抱いて寝るんだ」
アキラは己の持つ刀を見せた。刀は二刀、白い柄に黒い鞘の刀と黒い柄に白い鞘の刀。
「両親からに僕がねだった初めての物だったんだ。今でも大切にしてるんだよ」
声は悲しく、表情の見えない闇の空間でアキラは告げる。照らす明かりは月明かりのみ。
「そっか、じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
明日は何が起こるだろうと、二人は瞳を閉じた。
ささ、アキラの朴念仁っぷりが発揮され始めましたよぉ。・・・綴ってて思うんですけど、これアキラ君、役得じゃないっすかね? いいなぁ、その席よこせっ!
さて、次回あたりで、ラウラさんの仕事がありそうです。ラウラファンの読者様方、首を長くしてお待ちください。
それでは、今後とも良しなに。