「アキラ、一夏、今日も放課後特訓しにいくよね?」
「おう、トーナメントまで日がないからな」
「僕は分からないかなぁ。早く終われば行くけど」
廊下を歩きながら男三人(ほんとは一人女)が今日の放課後の日程について話していると、後からあわただしそうにほかのせいとが走っていく。
「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦やってるってっ!」
「「「えっ!」」」
それを聞いた三人も予定そっちのけで、第三アリーナに向かって走り出した。
アリーナに着くとすでに観客席に生徒がおり、その状況を眺めていた。
「これは・・・・・・」
アキラが感想を漏らしたとき、後ろから別の人が走ってきた。
「箒・・・・・・」
一夏が箒と呼んだ人物はアキラ達三人と並びその状況を見始めた。そのすぐあとだ。大きな音とともに砂ぼこりが上がり、再度注目し直す。
「凰さんとオルコットさんだ」
「ラウラ・ボーデヴィッヒも」
「彼女たちは、いったい何してるんだろ?」
行われているのは模擬戦のはずだ。が、どちらかが圧倒される。もはや喧嘩だ。
甲龍の肩の方にある砲撃をラウラは何事もなかったかのように受ける。
「龍咆を止めやがったっ!?」
「A.I.Cだ・・・」
「そうか、あれを装備していたから、龍咆をよけようともしなかったんだっ!?」
「なんだ、そんなことか」
「A.I.C? なんだそれ?」
「シュヴァルツア・レーゲンの第三世代型兵器、アクティブイナーシャルキャンセラーのことだよ。日本語的には慣性停止能力ともいうんだ」
「ふーん」
「一夏、わかってる?」
アキラは心配になって確認をとる。
「今見た。それで十分だ」
観戦し始めてからだんだん時間は立つが、一向に状況の良くならない英中コンビ。機体相性が完全にラウラ側に傾いているのだ。
甲龍の龍咆を撃ち、そのあとの空白をブルーティアーズが埋める。コンビネーションは機能しているが、相性問題によって、すぐに地に着く羽目になる。シュヴァルツア・レーゲンが大口径レールカノンを構えられるピンチも、セシリアの起点に救われるが二人とも、ワイヤーブレードに首元をからめとられ、一方的に殴るだけの試合展開になった。
「ひどい、あれじゃシールドエネルギーが持たないよ」
「もしダメージが蓄積し、ISが強制解除されれば、二人の命に係わるぞ」
「やめろっラウラっ! やめろっ!」
目の前の惨劇はアキラの琴線に触れるものだった。
(誰も守れない光景に似ている・・・・・・)
ただじっと、耐える。爪で傷ついている掌の痛覚も、今はない。あるのは止めに行きたい自分を押さえるだけの精神だけだ。
ラウラは笑う。ただ、いたぶることに口をゆがめて笑う。
「あいつっ!」
一夏がISを展開し、アリーナのガラスをやぶり、ラウラに切りかかった。
「その手を放せぇっ!」
しかし、A.I.Cで一夏の行動ごと止める。
(な、なんだ? 体が、動かないっ!)
その間に二人のISが解除された。
「感情的で直線的、絵にかいたような愚か者だな」
斬りこもうと力を入れるが、動けない。
「やはり敵ではないなっ! この私とシュヴァルツア・レーゲンの前では有象無象の一つでしかない」
大型レールカノンを一夏に突き付ける。
「消えろっ!」
しかし、そのレールカノンの砲身は、玉を打ち出すことなく方針の向きが変わった。
「なにっ!」
レールカノンには刃のついた大型のハーケンのワイヤーが絡まっていた。
「一夏、下がって。僕が相手をする」
ハーケンを収納する。後ろにはライフルを構えたシャルルのISも追従している。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。今は殺し合いをするときじゃない。剣を収めてくれ」
ツインアイが空色に発光する。アキラの思いに呼応して。
「一夏と、シャルルは二人を連れて外に」
「お前は?」
「いいから下がって」
アキラは二人をアリーナから離れさせた。
「貴様も邪魔するのかっ!」
レールカノンをアキラに向ける。
「邪魔じゃない、下がれラウラ」
「誰に物を言っているっ!」
「わたしを怒らせるな。邪魔をしているわけではない。時と場合を考えろと言っている」
アキラの雰囲気が変わる。それは普段のアキラからは視れないもので。
「あれは、アキラ、なのか?」
雰囲気は近寄りがたいなんてものじゃない。近寄ることすら許さないといわんばかりの重さ、有無を言わさない覇気。
「もう一度言うぞ。戦闘を中止しこの場から離れろ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。これ以上醜態をさらそうものなら、貴様の教官の顔に泥を塗ることとなるぞ?」
「っ!?」
ラウラからしてみればそれはあってはならない事態だ。
「最後の忠告だ。ISをとけ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「・・・・・・仕方あるまい」
「助かるよ」
雰囲気がまた変わり、いつものアキラに戻った。
「織斑先生、あとは頼みます」
「なんだ、気づいていたのか」
アキラの機体の後ろから織斑先生が出てくる。
「模擬戦を行うのは勝手だが、アリーナのバリアーまで破壊する事態となると、教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「教官がそうおっしゃるなら」
「お前たちもそれでいいな?」
「かまいません。お手数をおかけします、織斑先生」
アキラは首を垂れる。
「かまわん。では、学年別トーナメントまで、私闘の一切を禁止するっ! 解散っ!」
この戦闘で死者は出なかった。それが何よりだと、アキラは思った。
そろそろ、アキラ君のプロフィール、公開していきたいと思います。お楽しみにぃ