アキラはあの後、無事ISを解除し、現在は一夏とシャルルと夕食をとっている。
「でね、今回のことが原因で、学年別トーナメントは中止だけど、成果とかもろもろ見たいから、一回戦はするんだって」
「あぁあ、ライさんとカレンさんと対戦、できなくなっちゃったなぁ」
「アキラ、二人と当たりたかったのか?」
「うん、あの二人にどこまで通用するのか、知りたかったんだぁ」
ちょっと悲しそうな顔をする。露骨に肩を落とす。
「まぁまぁ。それよりもさ、アキラ、体は大丈夫なの?」
「うん、体の感覚のずれもないし、問題なく動くよ。強いて言うなら、体がちょっと重いかな」
と、そんなことを話していると・・・。
「お疲れ様」
発進準備をしてもらっていたライとカレンが三人の前に。
「すいません。感情が昂ったとはいえ、お二人の手を煩わせる可能性のある行動をとってしまい」
アキラは首を垂れる。
「アキラ、遠慮しすぎだよ。もっと頼りなって」
ライはアキラの態度に怪訝な顔をする。
「しかし・・・」
「いいわけはいらないの。わかった?」
「・・・はい」
親子三人の会話。そのことを知らない二人は怪訝な顔をする。
「なんであんなしゃべり方するんだろうね」
「なんでだろうな。少なくとも、あいつは自分のことを語らないからな」
二人にはわかりようのない、三人の関係。
「織斑くん、四十万くん、デュノア君、蒼月くん、朗報ですよっ!」
声の主に視線を向ける。
「山田先生、どうかなさいました? ・・・もしかして、事情聴取とかあります?」
「いえいえ、そうじゃありません。四十万くん、デュノアくんの功をねぎらう素晴らしい場所が、今日から解禁になったのですっ!」
「功をねぎらう場所?」
「そうですっ! その場は・・・・・・」
カポ~ン。
手桶の音と、水の注がれる音、広い室内には大きな浴室があり、部屋中を湯気が覆いつくす。
「・・・こんなものがあったんだ・・・・・・」
大浴場にはアキラ一人だ。シャルルはばれないように部屋のシャワーを使ってもらうようにお願いし、一夏とは時間をずらしている。
「こんなもの、見せるわけにはいかないからね」
アキラの胸元には十字の大きな古傷がある。それは背中にも同様にある。腕や足にも古傷が少し。額には一本だけある。痛むことはもうない。ここに来る前は痛んだりした。幻痛だとわかっていても、それでも、痛いものは痛かった。
(こう、落ち着いて傷を見ると、痛いなぁ)
無論、傷が痛いのではない。この体を知った者の悲しい顔、それを考えると、胸が痛い。
(気にするな。僕がミスらなければいい)
体を流し、湯船につかる。
「ふぅ。今度、僕が見張りをして、シャルにも体験してもらわないとな。せっかくの大浴場なのに、一人だけ部屋はかわいそうだなぁ」
「お、お邪魔します」
「・・・・・・え?」
声のした方を向く。アキラのことだ。声でだれかわかっただろう。しかし、幻聴だと思いたかった。
「あ、あんまり見ないで・・・アキラのえっち」
「ご、ごめん」
しっかりと湯気が立ち込めているため、シルエットぐらいしかわからない。それでも、見られる、ということは恥ずかしいものだ。
「えっと、シャル。どうしてここに?」
「入りたかったから、じゃだめかな?」
「だめではないけど・・・まぁいいや。僕の方は見ないでね」
シャルルは体を流し、湯船に。
「ど、どうしてそんな端っこの方に行くの?」
「えっと、僕の体を見てほしくない、じゃだめかな?」
「僕のは見たのに?」
そうなのだ。アキラはシャルルの裸を不可抗力とはいえ、拝んでいる。
「・・・・・・じゃあ、何も聞かないで。今日の僕だったらたぶん、聞かれたら応えちゃうから」
そう言って、背中を向けているシャルルの方へ、水面を這いながら向かう。
「アキラ」
「ん?」
「僕ね、学園に、ここにいようと思うんだ」
「そっか」
お互いに姿は見えないが、うれしそうな顔をしている。
「アキラがいるから。僕もここにいたいって、思うんだよ?」
「それはうれしいな」
この朴念仁にうまく伝わっているわけもなく、言葉通りに受け取っている。シャルルもわかっている。
「それにねに。も一つ決めたんだ。僕のあり方を」
シャルルが後ろからアキラに抱き着く。
「あり方?」
「うん。僕のことはこれから、シャルロットって呼んでくれる? 二人きりの時だけでいいから・・・」
「シャルロット、それが君の本当の名前なんだね?」
「そう。僕の名前。お母さんがくれた、本当の名前」
「わかった・・・。シャルロット・・・いい響きだね」
「えへへ、ありがと」
シャルルはアキラの傷を見た。ISスーツに着替えるときもこうして素肌をさらしているはずなのに、着替えるときには見当たらなかった古傷がそこにあった。
「ねぇ、アキラ」
「何?」
「どうやって体の古傷、隠して着替えてたの?」
(まぁ、それぐらいならいいか)
「僕ね、そもそも素肌を晒してなかったんだよ」
「どうゆうこと?」
「薄い僕の肌と同じ色の薄いインナーを着てたんだ。だからなんだよ」
「そっか」
シャルロットは知りたかった。アキラについて、もっと、もっと。でも、まだまだ知ることはできないみたいだ。これ以上、今知ろうとすると、アキラはたぶん、離れていくだろう。だから、アキラが話してくれるその時まで、シャルロットはこれ以上聞かないと決めた。
シャルロットちゃん、大胆ですねぇ。でも、アキラくん、鈍いんで伝わりませんよぉ?
さて、そろそろ、アニメ的には夏の海イベント、近そうですねぇ。アキラくん、どうやって古傷隠すんでしょうか?
次回も、どうぞ良しなに。