双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

29 / 67
夏の準備(後編)

 不思議な夢を見た。きれいな銀髪小さな男の子が大人二人と、男の子より小さな女の子、四人で手を繋いで歩いているところだった。逆光で小さな男の子の髪色しかわからないが、とても幸せそうで、穏やかな風景。

 

 そこまで見て目が覚めた。

 

「おはよう」

 

 透き通った優しい聲に、寝ぼけ眼なシャルロット聲が上から降ってくる。

 

「あ、アキラ」

 

「シャル、倒れちゃったんだよ」

 

「そ、そうだったんだ。ごめんね」

 

「いや、僕はいいんだけど」

 

 アキラは言いにくそうに言葉を濁らせる。シャルロットが周りを見ると、シャルロットに対し地面が平行に映る。

 

「ご、ごめんねっ!」

 

 シャルロットは飛び跳ねるように体を起こした。

 

「重たかったよね、ごめんね」

 

「いや、そんなことはなかったよ?」

 

 気にするなと立ち上がる。

 

「さ、行こうか、シャル。ラウラも待ってる」

 

 手を刺し伸ばす。

 

「うん」

 

 二人で、ラウラを探し始めたのだが、二人とも見つけられない。近くにいる目立つ銀髪はアキラだけだ。アキラの脳裏にフラッシュバックする。

 

「どこ行っちゃったんだろ?」

 

「探そっか」

 

 まだ、穏やかにいられる。そう心で己を縛りながら。捜索を開始した。

 ラウラはどうやら一夏たちと合流していたらしい。探し出すまでに30分はかかった。見つけてから心から安堵する。

 

「ラウラ、見つけた・・・」

 

「遅かったではないか」

 

「あれ、アキラじゃないか」

 

「あぁ、一夏。君は何しに?」

 

「水着を買いにな。一緒に回るか?」

 

「一夏も一人じゃないでしょ?」

 

 一夏以外にも鈴音とセシリアもいる。

 

「みんな、悪いけど、アキラと回ってもいいか?」

 

 ちょっと不機嫌そうな顔をした。アキラはその顔を読み取れたが、アキラの後ろでも不穏な空気が流れてるため、何も言いだせない。・・・こういう経験、アキラは多いため、黙っているのが吉と知っている。

 

「ね、ねぇ一夏。やっぱり、二人に悪いから・・・」

 

「かまいませんわよ」

 

「あたしもいいわよ」

 

 不穏な空気とともに許可を出してしまわれた。

 

(僕、あとで寝首係れるのかな・・・。暗殺者にすら寝首係れたことないけど)

 

「シャル、ラウラ、ごめんね。僕は逃げられないみたい」

 

「ふ~ん」

 

(うぅ、そんな怒りの笑顔を向けられても・・・)

 

 

「シャルロットさん、ちょっと」

 

 シャルロットがセシリアに呼ばれ、彼女の元へ。そして何かを話した後、はっとしたような顔をして、今度は。

 

「行ってきなよ、アキラ」

 

 普通の笑顔で送り出してくれた。

 

「わたしは構わん。行ってこい、アキラ」

 

 ラウラは気にしないとばかりに送り出してくれた。

 

「じゃあ、行ってくる。あ、シャル」

 

「ん?」

 

「会計の時、これ使ってよ」

 

 カードを手渡す。

 

「えっ!」

 

「おごりは確定事項だったんだよ。そのカードには10万ほどはいってるから、使い切ることはないと思うけど」

 

「じゅ、10万っ!?」

 

「じゃ、それでシャルとラウラの二人分の会計に使ってね」

 

 アキラは一夏と共に男性用水着売り場に向かった。

 

「アキラ、その紙袋は?」

 

「僕の私服。持ってなかったからさ」

 

「そういえばお前、ずっと制服だったもんな」

 

「うん。これか別の一着しか持ってないからね。どっちも私服じゃないんだけど」

 

「そうだな。もう一着がどんなものかはわからないけど、アキラが言うからそうなんだろ」

 

 そこから水着を選ぶが、そこで気づいてしまった。アキラは己の肉体事情を加味して選ぼうとしていなかった。水着はまだ買っていない。

 

「どうした? 水着、買わないのか?」

 

「いや、買うけども・・・」

 

 テキトーに何か選んで、体を隠せるものを探し始めた。しかし、どうしても体の一部が出てしまうため、かなり困り果て、長い時間探した結果、長そでの上着を着用することに決めた。足は丈の長めの水着を選ぶと、傷が隠せたため、あとは肌と同じ特殊なスーツでごまかすことに決めた。

 

 のちに合流し、ちょっとだけ回った後、寮まで戻った。

 

「久しぶりにたくさん買ったな」

 

 服をハンガーに通しながらしみじみ思い、つい出てきてしまったセリフ。

 

「ん? どうかしたか?」

 

「僕ね、あまり欲がなくて。自室は質素になるし、買わないからお金は貯まるしで。こんなにお金使ったのは久しぶりだなって」

 

「確かに、アキラの物って少ないよな」

 

「不思議だよね。僕も思うんだ」

 

「そういえばさ、アキラ、自分のこと語らないじゃん? なんかあんの?」

 

「えっとまぁ、ね。難しい内容が多くて、ね」

 

 あいまいに濁す。それは無味いることのできない壁。超えることは、今の一夏には無理だろう。

 

(やっぱり、何も話してくれなねえか)

 

 アキラは己を語らない。・・・怖いのだ。自分のことを知って、離れていくのが。大体の人がそうだった。アキラを怖がって、疑って、離れていったのだ。だから怖い。何も教えない人間を受け入れてくれている人たちから拒絶されるのが。

 

 その恐怖を胸に。日の近い臨海学校に備えた。

 




 この小説の評価に、読みづらいとの指摘がありました。
 作者のわたくしからしても、書きづらい書き方でしたので、今回のことを機に、アンケートを取らせていただきます。
 詳細は活動報告に乗せておりますので、そちらをご覧いただけたらなと思います。
 URLは以下の通りです。ご協力、お願いします。
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=223023&uid=164210
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。