旅館内でいろいろ済ませた後、夕食になった。
「アキラは食事後、私のもとにこい」
「わかりました」
実は、鈴音を助けたあの一件、アキラはまだ、千冬に報告に行っていなかった。
(報連相すら忘れる始末だなんて、僕らしくない)
隣にはライがいて、一番端の席に座っているためライ以外に隣はいない。今までなら、少しさびしさを感じたりしたのだろうが、今は違う。自分のことで手いっぱいで、周りを気にする余裕さえない。食事をとる姿も、どこか哀愁漂うものとなっているだろう。しかし、今のアキラにはそれすらわからない。
「四十万くん、何かやっちゃったのかな?」
などと、よからぬことをしているのではないお勘ぐる声もあった。ただ、実際にどんなことか知っている人はいない。それが本当かどうかも、わからない状況だった。
「アキラ、つらいなら代ろうか?」
考えすぎているアキラを気遣う。
「いえ、僕が解決しなければならないんです。だって、僕のことなんだから」
それでも表情はさえることない。ただひたすらに、悩み、苦悩しながら、答えを探す。結局、夕食を取り終えても、結果が出ることはなかった。
廊下を部屋を仕切るものは襖だ。ノックの音も、普段とは違う、かすんだ音が鳴った。
「入れ」
「失礼します」
アキラは制服姿で千冬のもとを訪れた。
「何があったか、答えろ」
「凰さんが沖合で急に暴れ始めたので、危険を感じて向かったところ、おぼれていました」
「そうじゃない」
千冬は鋭い目つきで答えた。
「どうしてお前だけ。終始つらそうなのだ?」
「・・・気づいてましたか」
「当たり前だ」
(この人に、見せてもいいの?)
相手はアキラの過去を知っている。しかし、それすらもかいつまんで、必要とした内容だけだった。あの話は、先に行くにつれて、多くの悲しみを呼ぶ。
「・・・前に、僕の過去をお話ししましたよね?」
「あぁ」
「あれは、僕が体験した、ほんの一部なんです。だから、あの話だけで今の僕の状態がわかるのは、父上ただ一人でした」
制服のブレザーを脱ぎ、ネクタイを外し、Yシャツを脱ぐ。
「・・・話すかどうか迷いましたが、これが、僕の悩みの原因です」
胸元には十字の大きな古傷、それは背中にも同様にあり、腕や足にも古傷が少し。
「これは僕が忘れないためにつけてもらった傷です」
胸の刺し傷は友人に。背中の傷は養母に。ほかの傷はすべて家族に。
「僕の罪の欠片です。これがあるから、僕はずっと逃げてました」
この傷たちに嬉しさこそあれど、悲しさなどない。これはアキラをアキラたらしめる傷だ。これを否定しようものなら、容赦なく切り捨てるだけの覚悟すらあるのだろう。
「お前と言うやつは、つくづく救われないのだな」
曲げれない生き方。救われない生き方。きっと、救われるときは、誰かがその傷ごと、アキラを包み込めるだけの度胸のある人間なのだろう。
「救われてますよ、十分。たぶん、今の僕なら、みんなのために、命を捨てても誰かを恨みはしないでしょう。僕はそういう人間なんです」
すがすがしい顔で、それが当たり前であると、告げていた。千冬はそれを否定することも肯定することもしない。
「なるほどな・・・。お前と言う人間が、少しわかった気がした。それは、蒼月や紅月でも、解決はできないんだろうな」
アキラには”それ”が何を指すのか分かった。だから、それ以上何も言わない。
「一夏、聞いていたんだろう? 出てこい」
予想だにしていないセリフ。アキラはハッと息をのみ、襖の方を見やる。そこには罰悪そうな顔をした一夏がいた。
「いや、部屋に戻ってきたらな。ぬ、盗み聞きするつもりはなかったんだ」
必死に弁解をするがアキラには届いていない。アキラの眼にはギアス独特の紋章が浮き出たり、沈んだりしていた。
「君はどこまで理解した?」
「あ、アキラ?」
「質問に答えてよ、一夏。何を見て、どこまで理解したの?」
アキラは悩む、何も話さなかった自分を、心配してくれた彼を、ギアスの魔の手に掛けることが正しいことなのか?と。
「その傷に、何か特別な思いがあることだけだ。そのほかは分からない。たぶん、今の俺では、その話題に踏み込むことができても、そのあとがないのは分かっているつもりだ」
真剣に語ってくれた。
(話したほうが・・・いや、拒絶されたくない。だったらこのまま・・・。でもいずれは知られてしまうかもしれない)
アキラはまだ、恐怖のはざまに埋もれている。アキラの意識が変わらない限り、アキラは逃げ続けるだろう。意識を変えてくれる何かがあるとすれば、それは、きっと・・・。
アキラが、背中を預けれる、と思ったとき、なのだろう。
書き方、ガラッと変えましたけど、読みづらくないですか? どうも、白銀マークです。
アキラ君の傷が一夏君にばれてしまいましたねぇ。今後どうなっちゃうんでしょうか!?
要望ありましたら依然投稿したものを書き直して再投稿させていただきますが、どうでしょうか?