次の朝、いつも通り日が昇る前。
「朝は早いなぁ」
結局、悩みすぎて、一睡もできなかった。三日ぐらい寝なくても活動できるが、気分が落ち込みやすくなる。
「ん?」
(あのうさ耳、どこかで見た気がするなぁ)
「あ、アッキー君だぁっ!」
「誰がアッキーですか。まったく、朝から仕込みですか? 束さん」
「そうだよぉ」
「人騒がせな」
地面に束は自分の耳と同じものを埋めていく。この人はこういうことが好きなのだ。たぶん。
「それよりさ、アッキー君のISのデータ、取らせてくれないかな?」
「どーぞ」
アキラは束に紫星の起動キーを渡す。
「ふ~ん、アッキー君、この機体にこんなもの組み込んでたんだ」
束がSINKAIについて問う。それをアキラは首を横に振った。
「残念ながら。僕はコアにこんなデータ入れてないですよ。第一、輻射波動機構のせいでスロット、かなり埋めてるんですよ? こんな代物、どうやって組み込むんですか」
「それもそっかぁ、ごめんねぇ」
「でも、おかしいですよね。確かに僕も設計に携わりましたけど、ISにこんなもの、要らないんですよねぇ」
「うん、アッキー君のKMFのデータを見る限り、人間の体と機体を神経接続なんて代物だからねぇ。ISはそもそもそんなものいらないんだけどなぁ」
キーボードをたたきながら、ブラックボックスを開けようとする。
「・・・あれ?」
「どうかしました?」
「アクセスを打ち切られちゃった」
「・・・機体が意思を持っている・・・?」
「まぁ、ブラックボックスのアクセスを切られただけだから、データはもらうよぉ」
ISが設計者のアクセスを拒絶、強制切断。この機械は意思すら持つというのか。可能性の獣と化した自機を保存する起動キーを見ながら、アキラは今後、どうするか考えた。
アキラはのちに部屋に戻り、一人、水着に着替える。カバンの中にはISスーツとなったKMFスーツと制服、真刀を入れ、浜に向かった。
心が落ち着かず、体を動かさずにはいられなかった。
「だめだ、刃にも迷いが出ちゃう」
刃は人の心を映す鏡。心の奥の方まで忠実に映す。悩み、戸惑う僕を、刃は示した。
「・・・僕は一体何なんだろう」
心の声が漏れる。家族を殺し、そのあとも殺し続けた。そんな人間は、一体何なんだろう。何になれると言うのだろう。誰が認めてくれるというのだろう。
「守るために強くなるって、決めたのに。弱いまんまだな、僕は」
それでも朝日はアキラを照らす。
裏では専用機持ちが集められ、とあるイベントが開催されつつあった。
「よし、専用機持ちは全員集まったな」
千冬の命令の元、とある河原に集められた。
「ちょっと待ってください、箒は専用機を持っていないでしょう? それにアキラもいませんし」
「四十万は呼んでいない。代わりと言っては何だが、蒼月と紅月を呼んでいる」
「箒の専用機は?」
「そ、それは・・・」
「それに付いては説明しよう実はだな・・・「やぁっほぉぉぉぉぉ」・・・」
猛スピードで崖を下り、華麗なジャンプを決めて、うさ耳をつけた人物がきた。
「ちぃちゃぁんっ!」
笑顔で千冬に突っ込んでいく。しかし、器用に頭をつかみ、腕分の距離を作る。
「やあやあ、会いたかったよぉちいちゃん、さぁハグハグしよう。愛を確かめよう「五月蠅いぞ、束」」
「相変わらず容赦のないアイアンクローだねぇ」
慣れているのか千冬のアイアンクローを受けてなお突っ込もうとし、挙句の果てにはその腕からさらっと逃げ出す始末である。
「じゃじゃぁん、やぁっ!」
「どうも」
岩場に姿を隠していた箒を難なく見つける。そこら辺も何かあるのだろうと勘繰りたくなる精度だ。
「久しぶりだねぇ、こうして会うのは何年ぶりかなぁ?」
嬉しそうにまじまじと箒を見る束。ライは慣れているが、ほかはドン引きである。
「大きくなったねぇ、箒ちゃんっ! 特におっぱいが・・・」
言い切る間もなく木刀で一閃。血を垂らしながら空に舞い上がる。まるで漫画のようだ。
「殴りますよ?」
もう殴っている、というのはその場にいる全員が思っただろう。
「殴ってから言ったぁ、箒ちゃんひどぉい」
頭を押さえる。あまり委託はなさそうな反応だが、受けてみたいとは思わない。
「ねぇ、いっくん、ライくん、ひどいよねぇ?」
「は、はぁ」
「スキンシップが過度なんですよ、あなたは」
ライと一夏とではまったく違う反応を見せる。ライは子供をとがめる父を連想させるようだった。
「おい束、自己紹介ぐらいしろ」
束を知っているのは千冬、一夏、ライぐらいだ。ほかはポカンと、誰ですか状態だ。
「えぇ~、めんどくさいなぁ」
めんどくさいながらもやる様子だ。
「わたしが天才の束さんだよぉ、はろぉ~、おわりぃ~」
皆一様に反応は異なるがそれぞれ篠ノ之束、という人物を知っているようだ。
「ふっふっふぅ、さぁ、大空をご覧あれっ!」
空からはひし形の黒い物体が落下してくる。着地には当然砂ぼこりが舞うわけで。
視界が少し悪くなった。
「じゃじゃぁん」
ひし形状のコーティングを解除、中からはカレンと同じ、深紅の機体が。
「これぞ箒ちゃん専用機こと、紅椿ぃ。全スペックが基本的に現行ISを上回る、束さんお手製だよぉ。なんたって紅椿は天才束さんが作った、第四世代型ISなんだよぉ」
第四世代。それはやっと第三世代の試作機を作り上げた各国からしてみれば異常なのだ。
「各国で第三世代型の試作機ができたばかりの段階ですのよ?」
「なのにもう・・・」
「そこはほれぇ、天才束さんだから」
まんざらでもない顔をしている。やはり、すごい人だとライは思った。
「さぁ箒ちゃん。いまからフィッティングとパーソナライズを始めようかぁ」
「な、なにっ!?」
異常な音。いや、実際、人には聞くことはできないのだが、風がざわついているからわかった。このざわつき方は異常だ。大体こういう時は良くないことが起こる。紫星を起動し、索敵、拡大観測する。
「あれは・・・」
(資料で見たことが・・・。確か、
アキラの知るデータなら、現在、試験稼働中のはずだ。パイロットの確認のために拡大解析を行う。
(パイロットがいる!?)
アキラは機体を煌めかせ、
旅館内では専用機持ちを集め、作戦会議が行われていた。
「なるほどね」
人と通りの事情を確認したライは既に脳内で戦術の立案を行っていた。
「蒼月、解決策はあるか?」
「機体のスペックデータ、それて、現在の飛行速度が知りたいです。そこから逆算して、罠を貼ります」
「わ、罠?」
「そう。現時点で、この海域通貨が50分を切っているのなら、一回に掛けるしかない。だったら、緻密な罠を貼ればいいはずだ」
ライの説明に異論ある者はいなかった。
「ライ、それだと、一撃に掛けるしかなくなるわよね?」
「その通りだよ、カレン。僕とカレン、それから一夏の機体で今回の締めを担当するよ」
「え? 俺も?」
「一夏の零落白夜、あれはかなり威力のあるものだ。現在、このメンバーだと、僕とカレンと同等ぐらいの火力があるよ」
「蒼月、これが
資料から読み取れた情報は、さらに異常なものだった。
(これは・・・僕予想をはるかに超えるな。急いだほうがよさそうだ)
「僕とカレンはセカンドシフトするよ。束さん、できますか?」
「あ、ばれてた?」
天井から束が現れる。
「できるけどぉ、いっくんはどうやって運ぶのぉ?」
「適任がいるじゃないですか」
ライの視線の先には箒。
「束さんが作ったんですから、どうせ隠し種、あるんでしょ?」
「その通りだよぉ。じゃあ、さっそく、調整に入ろっかぁ」
これから、
ちょっと長くなりました。どうも、白銀マークです。
次回から
今後ともどうぞ良しなに。