双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

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銀の王子は戦場に舞い戻る

 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)はいまだにセカンドシフトすらできていない。しかし、その状態で第四世代含めた第三世代以上のIS八機を覆いに上回るほどの性能を誇っていた。

 

「まずいな・・・」

 

 ライは前線を貼りながら危険を感じている。僚機はなし。ほか七機は全機撃墜された。今のところ旅館には一切弾は当たっていないが、それも時間の問題だろう。ライのISもシールドがそろそろ底をつく。

 

「各機、応答せよっ!」

 

 ライは銀の副音(シルバリオ・ゴスペル)に対し高速軌道で攻撃を当てながら一撃離脱戦法で確実に被弾を減らしつつダメージを与えていく。しかし、銀の副音(シルバリオ・ゴスペル)は変化一つない。

 

「指令部、これ以上はっ!」

 

『撤退命令は出せない。戦闘を継続しろ』

 

「・・・了解」

 

 なぜだ、なぜ本部から撤退命令が出ないのだ。それを考えても、今のライには答えを導き出すことはできない。

 

【力が欲しいか?】

 

 ライに機体が語り掛ける。それが幻聴であると理解しても、手を伸ばさずにはいられなかった。

 

「もう一度、もう一度だけ、力を貸してくれっ!」

 

 白蓮は己の翼をより一層広げ、より緻密で正確な空中での飛行を可能とした。ライの想いに、機体すら答える。それはISになる以前から、ずっと愛馬として駆け抜けてきた、パイロットへの愛情だった。

 

「まだだっ! まだまだこれからだっ!」

 

 悪あがきといわんばかりに機体を酷使し、目標に向かって飛翔する。

 

 

 

 

 

 

 アキラはまだ、霧深い水原に留まっていた。

「そういえばさ、お前の機体、紫星、だっけ? あいつの起動キーに俺、実はちょっとした細工してんだ」

 

「細工?」

 

「おう。俺の機体、Rリヴォルノに積んでた人工知能、移植してんだわ」

 

「えぇっ!」

 

「だからよ、お前のこと、ずっと、死んでも守ってきたんだぜ? 約束だったからな」

 

 もう会えないのに、悲しいセリフを残す。

 

「どうしてそんな悲しそうな顔して言うんだよ?」

 

「もう時間だ。やっぱり、お前は死んでなかったんだ。まだ生きてるんだ」

 

 彼の体が薄くなっていく。足元からゆっくり、そこにいなかったことにされようとしている。

 

「君、体がっ!?」

 

「俺は時間だ。そろそろ戻んなきゃいけねぇ。お前もだ、お前ももっといたところに戻んなきゃいけねぇ」

 

 だからよ・・・。そう置いてもう半分消えた体でアキラの背中を押す。

 

「お前はまだ、やることがいっぱいあんだろ? それ片付けてからさ、一緒に酒でも飲もうぜ」

 

 じゃあな。そう言って笑顔で帰っていった。彼のいた場所を見つめる。

 

「ありがとう、レイ。僕も行くよ、みんなが待ってる」

 

 彼のおかげで霧が晴れた。晴れたから見える、鳥居が一つ見える。アキラは直感的にそれをくぐらなければならないと理解した。

 歩を進め、この、懐かしい世界に別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 外から爆撃音がする。どうやら戦闘中のようだ。

 

「行かなきゃ」

 

 体に激痛が走り、動くなと動きを制限してくる。それでも、行かなければならない。行かなければきっと後悔する。それが今のアキラを動かす原動力だった。

 向かう先は指令室となっている部屋。ノックもせずに襖を開ける。

 

「誰だっ! ここは立ち入り禁止だ、と・・・」

 

「織斑先生、現状は? 誰が何と戦闘中ですか?」

 

 千冬は、言葉がでなかった。傷だらけの少年が、目の前にいたからだ。常人であれば動くことすらままならない体で、立っていたからだ。

 

「僕も出ます」

 

「ダメだ、許可できん」

 

 今、この傷だらけの少年は戦闘に参加しようとする。何がそこまで駆り立てているのか、誰にもわからない。ただただ、今は止めることしかできない。

 

「戦闘が起こっているのなら、手は多い方がいいでしょう?」

 

「今のお前では足手まといだ」

 

「けど、的になることはできる」

 

「死ぬ気かっ!」

 

「このぐらいでは死ねませんよ」

 

 思いと思いが交錯し、溝を作る。

 

「・・・相手は銀の副音(シルバリオ・ゴスペル)です」

 

「山田先生っ!」

 

「あれは、僕が止めます、止めなきゃいけない」

 

「今のお前では死んでしまうんだぞっ!」

 

「死んででも、止めて見せる。あれのパイロットは、今度こそ救わないといけないんです」

 

 そういい残して、ISを起動できるだけの場所まで走る。その間も、戦いは続いていた。

 

 

 

 

 

 

 ライはいまだに戦闘を続けることを余儀なくされる。

 

「しぶといっ!」

 

 銀の副音(シルバリオ・ゴスペル)はまだ健全だ。しかし、セカンドシフトは終えていた。ライが一度大ダメージを与えたのだか、セカンドシフトの発動条件にしかならなかったのだ。

 

「ライ、悪かったな、もう大丈夫だ」

 

 ライの近くを同じように飛行するISが一機。

 

「一夏」

 

「俺も戦うぜ」

 

「その機体、白式だよね?」

 

 白式に似たその機体は、白式とは決定的になにかが違った。

 

「俺にはわからないけどな」

 

「僕もやります」

 

 紫星が、ぴったり後ろについてきていた。

 

「アキラ、君はまだセカンドシフトを終えていない」

 

「やります。あれのパイロットは、僕が救わなきゃいけないんだ」

 

 救うというワード、ライにも一夏にも分からなかった。けど、それでもライはその真っ直ぐな瞳に、確かな何かを感じた。

 

「分かった、各機、散開、各個で攻撃だっ!」

 

「「了解っ!」」

 

 アキラが混ざって戦闘が開始して10秒も立っていないのに、放火の密度が上がった。

 

「やっと出てきたなぁ、アキラぁ!」

 

「君を、今度こそっ!」

 

 アキラは空を駆ける。三人よりも劣っている機体で、誰よりも鋭く、激しく。それでも、機体の性能差は埋まらない。被弾は増えるし、肉体にダメージも蓄積される。それでも、人一倍飛び続けた。

 

「カバーください」

 

「俺が行くっ!」

 

「僕がヘイトを引くから、その間にっ!」

 

 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)との戦いはいまだに熾烈を極める。

 

(だめだ、今の僕では足手まといにっ!)

 

 アキラは己の限界を感じていた。己の反応速度に機体がついてこない。ついに、砲撃が完全にアキラをとらえきった。機体のシールドがゼロになり、海に逆さまに落ちる。着水まで一分三十秒。

 

【アキラ。まだ、こんなとこじゃ終われないよな?】

 

 そこにいるはずもないけど、今はもう生きてすらないけど、それでも、どこかで背中を押してくれている。

 

(・・・そうだよ、こんなとこじゃ終われない。レイが背中を押してくれたんだ、必ず、救って見せるっ!)

 

【パイロットの強い欲求を確認。人工知能「コトノハ」、起動します】

 

 機械音声とともに、起動キーからデータがダウンロードされる。

 

『・・・コトノハ正常起動。』

 

 コトノハと名付けられた人工知能は、機体のセンサーから現状を、機体システムから機体の損傷率を読み込んだ。

 

『随分苦戦してるのね』

 

「五月蠅い」

 

『・・・強くなりたい?』

 

「今度こそ、守るんだ、だからっ!」

 

『わかった。あなたに力を授けましょう』

 

「人工知能なのにそんなことできるの?」

 

『私はレイが創り出してくれた、最も人に近い人工知能よ。このぐらいできるわ。それに、私のおかげでSINKAIシステム、使えるのよ?』

 

「・・・わかった。君に賭けよう」

 

 激戦の中でも、最善策となりうる選択を。それが、指揮官および戦闘員の使命だ。ならば、少しでも可能性があるのなら、アキラはそれをとると決めた。

 完全に海に落下するまで、残り四十秒。




 終わりをどんどん先延ばしにしますねぇ、どうも、白銀マークです。
 終わりが近づいてきたはずなのになぁ、終わる気配がねぇ・・・。
 だんだんあとがきが短くなってきていますが、気にしないでね。もう書くことが無くなってきてるの。
 じゃあ、この辺で締めますか。次回もどうぞ良しなに。
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