「まずいな・・・」
ライは前線を貼りながら危険を感じている。僚機はなし。ほか七機は全機撃墜された。今のところ旅館には一切弾は当たっていないが、それも時間の問題だろう。ライのISもシールドがそろそろ底をつく。
「各機、応答せよっ!」
ライは
「指令部、これ以上はっ!」
『撤退命令は出せない。戦闘を継続しろ』
「・・・了解」
なぜだ、なぜ本部から撤退命令が出ないのだ。それを考えても、今のライには答えを導き出すことはできない。
【力が欲しいか?】
ライに機体が語り掛ける。それが幻聴であると理解しても、手を伸ばさずにはいられなかった。
「もう一度、もう一度だけ、力を貸してくれっ!」
白蓮は己の翼をより一層広げ、より緻密で正確な空中での飛行を可能とした。ライの想いに、機体すら答える。それはISになる以前から、ずっと愛馬として駆け抜けてきた、パイロットへの愛情だった。
「まだだっ! まだまだこれからだっ!」
悪あがきといわんばかりに機体を酷使し、目標に向かって飛翔する。
アキラはまだ、霧深い水原に留まっていた。
「そういえばさ、お前の機体、紫星、だっけ? あいつの起動キーに俺、実はちょっとした細工してんだ」
「細工?」
「おう。俺の機体、Rリヴォルノに積んでた人工知能、移植してんだわ」
「えぇっ!」
「だからよ、お前のこと、ずっと、死んでも守ってきたんだぜ? 約束だったからな」
もう会えないのに、悲しいセリフを残す。
「どうしてそんな悲しそうな顔して言うんだよ?」
「もう時間だ。やっぱり、お前は死んでなかったんだ。まだ生きてるんだ」
彼の体が薄くなっていく。足元からゆっくり、そこにいなかったことにされようとしている。
「君、体がっ!?」
「俺は時間だ。そろそろ戻んなきゃいけねぇ。お前もだ、お前ももっといたところに戻んなきゃいけねぇ」
だからよ・・・。そう置いてもう半分消えた体でアキラの背中を押す。
「お前はまだ、やることがいっぱいあんだろ? それ片付けてからさ、一緒に酒でも飲もうぜ」
じゃあな。そう言って笑顔で帰っていった。彼のいた場所を見つめる。
「ありがとう、レイ。僕も行くよ、みんなが待ってる」
彼のおかげで霧が晴れた。晴れたから見える、鳥居が一つ見える。アキラは直感的にそれをくぐらなければならないと理解した。
歩を進め、この、懐かしい世界に別れを告げた。
「・・・・・・」
外から爆撃音がする。どうやら戦闘中のようだ。
「行かなきゃ」
体に激痛が走り、動くなと動きを制限してくる。それでも、行かなければならない。行かなければきっと後悔する。それが今のアキラを動かす原動力だった。
向かう先は指令室となっている部屋。ノックもせずに襖を開ける。
「誰だっ! ここは立ち入り禁止だ、と・・・」
「織斑先生、現状は? 誰が何と戦闘中ですか?」
千冬は、言葉がでなかった。傷だらけの少年が、目の前にいたからだ。常人であれば動くことすらままならない体で、立っていたからだ。
「僕も出ます」
「ダメだ、許可できん」
今、この傷だらけの少年は戦闘に参加しようとする。何がそこまで駆り立てているのか、誰にもわからない。ただただ、今は止めることしかできない。
「戦闘が起こっているのなら、手は多い方がいいでしょう?」
「今のお前では足手まといだ」
「けど、的になることはできる」
「死ぬ気かっ!」
「このぐらいでは死ねませんよ」
思いと思いが交錯し、溝を作る。
「・・・相手は
「山田先生っ!」
「あれは、僕が止めます、止めなきゃいけない」
「今のお前では死んでしまうんだぞっ!」
「死んででも、止めて見せる。あれのパイロットは、今度こそ救わないといけないんです」
そういい残して、ISを起動できるだけの場所まで走る。その間も、戦いは続いていた。
ライはいまだに戦闘を続けることを余儀なくされる。
「しぶといっ!」
「ライ、悪かったな、もう大丈夫だ」
ライの近くを同じように飛行するISが一機。
「一夏」
「俺も戦うぜ」
「その機体、白式だよね?」
白式に似たその機体は、白式とは決定的になにかが違った。
「俺にはわからないけどな」
「僕もやります」
紫星が、ぴったり後ろについてきていた。
「アキラ、君はまだセカンドシフトを終えていない」
「やります。あれのパイロットは、僕が救わなきゃいけないんだ」
救うというワード、ライにも一夏にも分からなかった。けど、それでもライはその真っ直ぐな瞳に、確かな何かを感じた。
「分かった、各機、散開、各個で攻撃だっ!」
「「了解っ!」」
アキラが混ざって戦闘が開始して10秒も立っていないのに、放火の密度が上がった。
「やっと出てきたなぁ、アキラぁ!」
「君を、今度こそっ!」
アキラは空を駆ける。三人よりも劣っている機体で、誰よりも鋭く、激しく。それでも、機体の性能差は埋まらない。被弾は増えるし、肉体にダメージも蓄積される。それでも、人一倍飛び続けた。
「カバーください」
「俺が行くっ!」
「僕がヘイトを引くから、その間にっ!」
(だめだ、今の僕では足手まといにっ!)
アキラは己の限界を感じていた。己の反応速度に機体がついてこない。ついに、砲撃が完全にアキラをとらえきった。機体のシールドがゼロになり、海に逆さまに落ちる。着水まで一分三十秒。
【アキラ。まだ、こんなとこじゃ終われないよな?】
そこにいるはずもないけど、今はもう生きてすらないけど、それでも、どこかで背中を押してくれている。
(・・・そうだよ、こんなとこじゃ終われない。レイが背中を押してくれたんだ、必ず、救って見せるっ!)
【パイロットの強い欲求を確認。人工知能「コトノハ」、起動します】
機械音声とともに、起動キーからデータがダウンロードされる。
『・・・コトノハ正常起動。』
コトノハと名付けられた人工知能は、機体のセンサーから現状を、機体システムから機体の損傷率を読み込んだ。
『随分苦戦してるのね』
「五月蠅い」
『・・・強くなりたい?』
「今度こそ、守るんだ、だからっ!」
『わかった。あなたに力を授けましょう』
「人工知能なのにそんなことできるの?」
『私はレイが創り出してくれた、最も人に近い人工知能よ。このぐらいできるわ。それに、私のおかげでSINKAIシステム、使えるのよ?』
「・・・わかった。君に賭けよう」
激戦の中でも、最善策となりうる選択を。それが、指揮官および戦闘員の使命だ。ならば、少しでも可能性があるのなら、アキラはそれをとると決めた。
完全に海に落下するまで、残り四十秒。
終わりをどんどん先延ばしにしますねぇ、どうも、白銀マークです。
終わりが近づいてきたはずなのになぁ、終わる気配がねぇ・・・。
だんだんあとがきが短くなってきていますが、気にしないでね。もう書くことが無くなってきてるの。
じゃあ、この辺で締めますか。次回もどうぞ良しなに。