『動いて、動いてよ紅蓮っ!』
『くっ!』
紅蓮と白蓮はダウンする。機体は制御できない。
「まだ・・・まだ僕をあざ笑うかっ! V.V.っ!」
泪呪は哀しき翼を、終わりを魅せる刃の矛先を、紅蓮と白蓮に向ける。
『三人とも、こっちだ』
ランスロット・フロンティアが道案内をする。
『C.C.』
『なんだ?』
『君が来て大丈夫? 相手は嚮団なんでしょ?』
『奴らの狙いは、遠の昔に変わってしまったみたいだ。もう、奴らにとってコードなんてものはどうでもいいんだよ。コードなんかよりも、もっと簡単にアーカーシャの剣を造れることに気づいたみたいだからな』
『いったい何を使うのよ?』
「ギアスを特殊開眼させた人間を依代に顕現させるんですよ」
『っ! それは君が狙いじゃないのかっ!?』
「はい。だから、僕が行くんです」
『ふざけるなっ! 君が行ってしまったら・・・』
「・・・奴ら、また友人を使ってKMFを動かしてるんみたいなんです」
『『はぁっ!?』』
「彼が僕を呼ぶんです、解放してくれって。だから、僕が行くんです」
『でも、アキラにはまだ帰る場所がっ!』
「そんなもの、ないですよ、ずっと。あの日、みんなが居なくなったあの日から」
『・・・作ろうとは思わなかったの?』
「作れないです。・・・取りこぼしそうなものはもう、手にしないと、そう決めたんです」
『取りこぼしちゃうから、かぁ』
「守れないかもしれないのなら、この手が届かないのかもしれないのなら。喉から手が出るくらい、欲しかったものだけど、それでも、僕は、それに手を伸ばすことは、ないです」
『そうか・・・。』
『私も少しは頼れと釘を刺していたのだがな。それでもこいつは何でも一人でかたずけてしまってな』
「迷惑はかけれないですよ」
『それもそうか・・・。ん、ついたぞ。ここが奴らの本拠点だ』
神根島にそっくりな島。
「やぁ、待っていたよ、アキラ」
「V.V.」
声に自然と怒気がこもる。
「やだなぁ、そんなにかっかしないでよ。君を迎えに来たんだ」
「断る、といったら?」
「力ずくでも連れていくよ?」
V.V.の背後から人型のKMFに似ているものが出てきた。KMFよりも一回りも二回りも大きい。ガウェインよりも大きな機体。
「コックピットのなくなった、人と機械の融合体さ。僕ら嚮団の最高傑作だ」
機体全体がKMFらしくない。流れるような丸みを帯びている。
「さぁ、どうする? 抵抗するかい?」
「・・・パイロットは誰?」
「君の良く知る人物だよ」
「だろうね。だから断る」
「君は馬鹿だね。また友人を殺すのか、友人と手を取るかの二択で殺すことを選ぶなんてさ」
V.V.は機体の胸部に。
『アキラ、本当にいいのか?』
「やります。今度こそ、彼の願いをかなえなきゃ」
そう、貰ってばっかりじゃだめだ。福音の時も、この機体だって。全部全部、彼に助けてもらったんだ。恩返しをするんだ。今度こそ、願いをかなえて見せる。
「行くよ、泪呪っ!」
アンノウンは門に吸い込まれるように消えた。アキラたちもそれを追う。友人を殺すための戦いの火ぶたが切って落とされた。
「織斑先生」
「なんだ?」
「蒼月から聞きました。四十万のこと、何か知ってるんですか?」
「ふむ。知っている、とはどういうことだ?」
「蒼月くんがあとは織斑先生に聞けって」
「面倒ごとを丸投げしたな。・・・まぁいい、あいつはな、”帰る場所”を持たない人間なんだ」
「帰る場所?」
「そうだ。蒼月からの受け売りだから正しいかどうかは分からんがな」
「ちょっと抽象的すぎてよくわかんねぇよ」
「そうだな・・・。蒼月の場合は紅月の所だ。他はそれぞれあると思うが、誰かの隣、この人のところに生きて戻ってこなければならない、そういう場所がないんだ」
「じゃあ、俺たちにも、あるのか?」
「たぶん、気づいていないだけで、しっかりとあるのだと思いますわ」
「じゃあ、逆に帰る場所がないってどういうこと?」
千冬は少し言葉を探す。アキラに、前のアキラにぴったりの言葉を。
「わたしの見立てではアキラはな、死に場所を探しているんだ。誰かの手で殺されたい、そういう思いでな」
「じゃあ、アキラ、死にに行ってるんじゃ!?」
「アキラのいる場所、分かりますか?」
「いいのか? 今のお前たちでは、きっと、後悔するぞ?」
「それでも、俺たちはいかなくちゃいけないんだ。織村先生、お願いします」
「・・・はぁ、わかった」
全員のISに地図情報を渡す。
「あいつの機体には、GPSが組んである。それがあれば、近くまでは行けるはずだ」
「ありがとうございます」
指令室を勢いよく飛び出す。目指すはアキラの所、死んでほしくない、大切な人の所に。
「くっ! いい性能してるなぁ」
『機体スペックには大差ないのに、神経接続だからなのかしら?』
「余裕そうだね、琴!」
パイロットは必死だ。相手の反応速度、弾幕、その他すべてが高い水準を誇る。回避ですら、神経をすり減らすように気を張り積め続けなければならない。
『だって、機体制御している訳じゃないもの』
「だろうねっ!」
回避しつつ射撃を行うも、精度はいつもよりも格段に落ちている。相手は容易に回避できてしまった。
「当たらないか」
『残念ねぇ』
バレルロールしつつ、回避行動をとる。
「仕掛けますっ!」
『わかった』
泪呪の強襲は紅蓮と白蓮のサポートで成り立つ。単機で強襲できるだけの性能をアキラはまだ引き出せていない。
『カレンっ!』
『えぇっ!』
二人のコンビネーションアタック。高火力の輻射波動をロングレンジで相手の行動を制限する。
『行けるよ、アキラっ!』
『はいっ!』
上空から太陽を背に、急降下、肘部にある輻射波動を構える。本来なら一撃必殺だ。人間の目は太陽を直視できない。直視すると、強い光で目を背けてしまう。だから、回避すらできない。確実に仕留めれたはずだった。
「なっ!」
『アキラ、回避っ!』
「くっ!」
何と、直視できないはずの太陽を、何のデメリットもなく見上げたのだ。完全に迎撃大成でこちらが来るのを待っていた。
「ま、まさか」
『パイロットは、目がない状態なの?』
『驚いたでしょ? アキラ』
「一体彼に何をしたっ!」
『この機体を操縦幹で動かしてると思ってたの?』
『』
「まさか・・・」
『この機体はねぇ、レイヴェルの脳で動かしてるんだよ。神経接続よりもさらに伝達速度は高いっ!』
「貴様っ!」
『その一人称、昔に戻ってきたねぇ。ハハハハハハ、友人を汚されるのがそんなに気にくわないのかい?』
「黙れっ!」
『君がキレた時の顔、絶望した時の顔、最高にそそるよ』
突如アキラの機体は異常なほど躍動する。人間そのもののようにしなやかに、軽やかに、力強く。
『アキラ、だめっ!』
「黙れ琴。斬るぞ」
誰の制止をも振り切る。アキラは今、殺意に満たされている。家族を殺したときのような、異常なほどの殺意。抑えきれない怒りとともに。
『人間ごときが機械を殺せるでも?』
「舐めるな餓鬼。貴様のおかげで私は殺すことしか知らないのでな。生憎様で、機械の殺し方も会得しているのだよ」
口調も変わる。軍に入る前の、殺すことで生きてきた、殺しで身を繋いできた人間の成れの果てになる。誰にも頼らない、頼ってはならない。だから、殺すことしかできなくなった人間の成れの果てに。
『アキラ、君は本当に馬鹿だね。”紅蓮”、”白蓮”僕を守れ』
「なに?」
『黙れ、僕がそんなことするわけ・・・白蓮っ!?』
『ちょっと、言うこと聞きなさいよ、紅蓮っ!』
「貴様、何をした?」
『こいつには、ハッキングまでできる機能があるんだよ。OSごと書き換え、人工知能が制御する機体にね。もちろん、その人工知能もレイヴェルの脳から作ったものだけど』
「貴様は私をどこまで愚弄すれば気が済む?」
『・・・君のせいでラグナレクの接続に二度も失敗したんだ。絶対に殺す・・・ってしたいんだけど、三回目の接続には君の脳がいるみたいだから。もうC.C.を探さなくて済むし、今度こそ壊させないから』
「知るか。それが我が家族を奪った貴様への仕返しだ。むしろ感謝しろ」
アキラの額には無数の青筋がたつ。
「琴」
『なに?』
「この機体にも、SINKAIシステムはついているか?」
『えぇ、あることにはあるけど?』
「含みのある言い方だな」
『今のアキラじゃ、機体に呑まれるだけよ?』
「この程度に呑まれるぐらいなら、死んだほうがましだ」
『・・・わかった』
機体のコンソールモニタに映し出される承認画面。
『今度のは、本気で戻れなくなるかもよ?』
「かまわん。帰る場所など、当の昔に自分で壊した」
コトノハとは違う声音で流れるアナウンス。承認画面をアナウンスが読み上げる。
【人であることを、放棄しますか?】【Yes/No】
「こんな画面まで用意するのに搭載したとは・・・まったく、どこまでもモルモットにする人たちだ」
指先には迷いがない。確固たる意志を持って、【Yes】に触れる。
【承認されました。】
首の後ろにわずかな痛みが走った後、姿勢を保つのが難しくなる。脳からの信号が首より下に届かない。
【機体との接続、以上なし。体を固定します。】
体は圧力がかかったように固定される。頭に何かを被せられる。前が、見えなくなった。
【バイタル正常。肉体の機能補助、正常起動。頭部視覚バイザー、起動します。】
視界はクリアになる。青い空、目の前には紅蓮と白蓮。その後ろに機械人間。手には刀を持っていて、足は機械じみている。
【バイザーの正常起動確認。】
『アキラ、聞こえるかしら?』
「問題ない。完全に外の景色を見ているがな」
『・・・そう。うまくいったのね。・・・その状態で機体の四肢が無くなると、アキラの体にも影響が出るから。足が無くなったら、そのなくなった足に対応している肉体の足も動かなくなる。頭が無くなれば・・・動くことすらできない、植物人間、いえ、完全に死ぬわ。胸部なんかも同じよ』
「・・・無傷で生還がmust事項、というわけか」
『仮に、四肢無傷で勝ったとしても・・・この機体から神経に傷を与えずに切り離さないといけないし。この機体、機械のくせにコアは人間をベースに作られてるの。だから、機体に意思があるわ』
「人間をベースにか?」
『そうよ。これは、設計者が願いに則った死を迎えることができたら、自らコアになることを前提に作られた、機体。たぶん、相手も同じことをしているから、共鳴もあり得るわ』
「・・・なるほどな。まぁいい」
眼光の先には殺すべき友人と死すべき憎き嚮主。救うべき両親とその機体。
「手が届く、まだ届く距離だ。なら、今度こそ、届かせて見せるっ!」
体のように動く機体を駆り、今度こそ、この手にすべてを置けるように、何もない少年の最後の戦いが火蓋を切る。
コードギアスっぽい要素がここでがっつり来ましたねぇ。え?終わりが近そうだ?・・・君、ちょっと裏に来てください(話をしよう)
今後ともよろしくお願いいたします