双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

41 / 67
湧き出すは怒り

『動いて、動いてよ紅蓮っ!』

 

『くっ!』

 

 紅蓮と白蓮はダウンする。機体は制御できない。

 

「まだ・・・まだ僕をあざ笑うかっ! V.V.っ!」

 

 泪呪は哀しき翼を、終わりを魅せる刃の矛先を、紅蓮と白蓮に向ける。

 

 

 

 

 

 

『三人とも、こっちだ』

 

 ランスロット・フロンティアが道案内をする。

 

『C.C.』

 

『なんだ?』

 

『君が来て大丈夫? 相手は嚮団なんでしょ?』

 

『奴らの狙いは、遠の昔に変わってしまったみたいだ。もう、奴らにとってコードなんてものはどうでもいいんだよ。コードなんかよりも、もっと簡単にアーカーシャの剣を造れることに気づいたみたいだからな』

 

『いったい何を使うのよ?』

 

「ギアスを特殊開眼させた人間を依代に顕現させるんですよ」

 

『っ! それは君が狙いじゃないのかっ!?』

 

「はい。だから、僕が行くんです」

 

『ふざけるなっ! 君が行ってしまったら・・・』

 

「・・・奴ら、また友人を使ってKMFを動かしてるんみたいなんです」

 

『『はぁっ!?』』

 

「彼が僕を呼ぶんです、解放してくれって。だから、僕が行くんです」

 

『でも、アキラにはまだ帰る場所がっ!』

 

「そんなもの、ないですよ、ずっと。あの日、みんなが居なくなったあの日から」

 

『・・・作ろうとは思わなかったの?』

 

「作れないです。・・・取りこぼしそうなものはもう、手にしないと、そう決めたんです」

 

『取りこぼしちゃうから、かぁ』

 

「守れないかもしれないのなら、この手が届かないのかもしれないのなら。喉から手が出るくらい、欲しかったものだけど、それでも、僕は、それに手を伸ばすことは、ないです」

 

『そうか・・・。』

 

『私も少しは頼れと釘を刺していたのだがな。それでもこいつは何でも一人でかたずけてしまってな』

 

「迷惑はかけれないですよ」

 

『それもそうか・・・。ん、ついたぞ。ここが奴らの本拠点だ』

 

 神根島にそっくりな島。

 

「やぁ、待っていたよ、アキラ」

 

「V.V.」

 

 声に自然と怒気がこもる。

 

「やだなぁ、そんなにかっかしないでよ。君を迎えに来たんだ」

 

「断る、といったら?」

 

「力ずくでも連れていくよ?」

 

 V.V.の背後から人型のKMFに似ているものが出てきた。KMFよりも一回りも二回りも大きい。ガウェインよりも大きな機体。

 

「コックピットのなくなった、人と機械の融合体さ。僕ら嚮団の最高傑作だ」

 

 機体全体がKMFらしくない。流れるような丸みを帯びている。

 

「さぁ、どうする? 抵抗するかい?」

 

「・・・パイロットは誰?」

 

「君の良く知る人物だよ」

 

「だろうね。だから断る」

 

「君は馬鹿だね。また友人を殺すのか、友人と手を取るかの二択で殺すことを選ぶなんてさ」

 

V.V.は機体の胸部に。

 

『アキラ、本当にいいのか?』

 

「やります。今度こそ、彼の願いをかなえなきゃ」

 

 そう、貰ってばっかりじゃだめだ。福音の時も、この機体だって。全部全部、彼に助けてもらったんだ。恩返しをするんだ。今度こそ、願いをかなえて見せる。

 

「行くよ、泪呪っ!」

 

 アンノウンは門に吸い込まれるように消えた。アキラたちもそれを追う。友人を殺すための戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

「織斑先生」

 

「なんだ?」

 

「蒼月から聞きました。四十万のこと、何か知ってるんですか?」

 

「ふむ。知っている、とはどういうことだ?」

 

「蒼月くんがあとは織斑先生に聞けって」

 

「面倒ごとを丸投げしたな。・・・まぁいい、あいつはな、”帰る場所”を持たない人間なんだ」

 

「帰る場所?」

 

「そうだ。蒼月からの受け売りだから正しいかどうかは分からんがな」

 

「ちょっと抽象的すぎてよくわかんねぇよ」

 

「そうだな・・・。蒼月の場合は紅月の所だ。他はそれぞれあると思うが、誰かの隣、この人のところに生きて戻ってこなければならない、そういう場所がないんだ」

 

「じゃあ、俺たちにも、あるのか?」

 

「たぶん、気づいていないだけで、しっかりとあるのだと思いますわ」

 

「じゃあ、逆に帰る場所がないってどういうこと?」

 

 千冬は少し言葉を探す。アキラに、前のアキラにぴったりの言葉を。

 

「わたしの見立てではアキラはな、死に場所を探しているんだ。誰かの手で殺されたい、そういう思いでな」

 

「じゃあ、アキラ、死にに行ってるんじゃ!?」

 

「アキラのいる場所、分かりますか?」

 

「いいのか? 今のお前たちでは、きっと、後悔するぞ?」

 

「それでも、俺たちはいかなくちゃいけないんだ。織村先生、お願いします」

 

「・・・はぁ、わかった」

 

 全員のISに地図情報を渡す。

 

「あいつの機体には、GPSが組んである。それがあれば、近くまでは行けるはずだ」

 

「ありがとうございます」

 

 指令室を勢いよく飛び出す。目指すはアキラの所、死んでほしくない、大切な人の所に。

 

 

 

 

 

 

「くっ! いい性能してるなぁ」

 

『機体スペックには大差ないのに、神経接続だからなのかしら?』

 

「余裕そうだね、琴!」

 

 パイロットは必死だ。相手の反応速度、弾幕、その他すべてが高い水準を誇る。回避ですら、神経をすり減らすように気を張り積め続けなければならない。

 

『だって、機体制御している訳じゃないもの』

 

「だろうねっ!」

 

 回避しつつ射撃を行うも、精度はいつもよりも格段に落ちている。相手は容易に回避できてしまった。

 

「当たらないか」

 

『残念ねぇ』

 

 バレルロールしつつ、回避行動をとる。

 

「仕掛けますっ!」

 

『わかった』

 

 泪呪の強襲は紅蓮と白蓮のサポートで成り立つ。単機で強襲できるだけの性能をアキラはまだ引き出せていない。

 

『カレンっ!』

 

『えぇっ!』

 

 二人のコンビネーションアタック。高火力の輻射波動をロングレンジで相手の行動を制限する。

 

『行けるよ、アキラっ!』

 

『はいっ!』

 

 上空から太陽を背に、急降下、肘部にある輻射波動を構える。本来なら一撃必殺だ。人間の目は太陽を直視できない。直視すると、強い光で目を背けてしまう。だから、回避すらできない。確実に仕留めれたはずだった。

 

「なっ!」

 

『アキラ、回避っ!』

 

「くっ!」

 

 何と、直視できないはずの太陽を、何のデメリットもなく見上げたのだ。完全に迎撃大成でこちらが来るのを待っていた。

 

「ま、まさか」

 

『パイロットは、目がない状態なの?』

 

『驚いたでしょ? アキラ』

 

「一体彼に何をしたっ!」

 

『この機体を操縦幹で動かしてると思ってたの?』

 

『』

 

「まさか・・・」

 

『この機体はねぇ、レイヴェルの脳で動かしてるんだよ。神経接続よりもさらに伝達速度は高いっ!』

 

「貴様っ!」

 

『その一人称、昔に戻ってきたねぇ。ハハハハハハ、友人を汚されるのがそんなに気にくわないのかい?』

 

「黙れっ!」

 

『君がキレた時の顔、絶望した時の顔、最高にそそるよ』

 

 突如アキラの機体は異常なほど躍動する。人間そのもののようにしなやかに、軽やかに、力強く。

 

『アキラ、だめっ!』

 

「黙れ琴。斬るぞ」

 

 誰の制止をも振り切る。アキラは今、殺意に満たされている。家族を殺したときのような、異常なほどの殺意。抑えきれない怒りとともに。

 

『人間ごときが機械を殺せるでも?』

 

「舐めるな餓鬼。貴様のおかげで私は殺すことしか知らないのでな。生憎様で、機械の殺し方も会得しているのだよ」

 

 口調も変わる。軍に入る前の、殺すことで生きてきた、殺しで身を繋いできた人間の成れの果てになる。誰にも頼らない、頼ってはならない。だから、殺すことしかできなくなった人間の成れの果てに。

 

『アキラ、君は本当に馬鹿だね。”紅蓮”、”白蓮”僕を守れ』

 

「なに?」

 

『黙れ、僕がそんなことするわけ・・・白蓮っ!?』

 

『ちょっと、言うこと聞きなさいよ、紅蓮っ!』

 

「貴様、何をした?」

 

『こいつには、ハッキングまでできる機能があるんだよ。OSごと書き換え、人工知能が制御する機体にね。もちろん、その人工知能もレイヴェルの脳から作ったものだけど』

 

「貴様は私をどこまで愚弄すれば気が済む?」

 

『・・・君のせいでラグナレクの接続に二度も失敗したんだ。絶対に殺す・・・ってしたいんだけど、三回目の接続には君の脳がいるみたいだから。もうC.C.を探さなくて済むし、今度こそ壊させないから』

 

「知るか。それが我が家族を奪った貴様への仕返しだ。むしろ感謝しろ」

 

 アキラの額には無数の青筋がたつ。

 

「琴」

 

『なに?』

 

「この機体にも、SINKAIシステムはついているか?」

 

『えぇ、あることにはあるけど?』

 

「含みのある言い方だな」

 

『今のアキラじゃ、機体に呑まれるだけよ?』

 

「この程度に呑まれるぐらいなら、死んだほうがましだ」

 

『・・・わかった』

 

 機体のコンソールモニタに映し出される承認画面。

 

『今度のは、本気で戻れなくなるかもよ?』

 

「かまわん。帰る場所など、当の昔に自分で壊した」

 

コトノハとは違う声音で流れるアナウンス。承認画面をアナウンスが読み上げる。

 

【人であることを、放棄しますか?】【Yes/No】

 

「こんな画面まで用意するのに搭載したとは・・・まったく、どこまでもモルモットにする人たちだ」

 

 指先には迷いがない。確固たる意志を持って、【Yes】に触れる。

 

【承認されました。】

 

 首の後ろにわずかな痛みが走った後、姿勢を保つのが難しくなる。脳からの信号が首より下に届かない。

 

【機体との接続、以上なし。体を固定します。】

 

 体は圧力がかかったように固定される。頭に何かを被せられる。前が、見えなくなった。

 

【バイタル正常。肉体の機能補助、正常起動。頭部視覚バイザー、起動します。】

 

 視界はクリアになる。青い空、目の前には紅蓮と白蓮。その後ろに機械人間。手には刀を持っていて、足は機械じみている。

 

【バイザーの正常起動確認。】

 

『アキラ、聞こえるかしら?』

 

「問題ない。完全に外の景色を見ているがな」

 

『・・・そう。うまくいったのね。・・・その状態で機体の四肢が無くなると、アキラの体にも影響が出るから。足が無くなったら、そのなくなった足に対応している肉体の足も動かなくなる。頭が無くなれば・・・動くことすらできない、植物人間、いえ、完全に死ぬわ。胸部なんかも同じよ』

 

「・・・無傷で生還がmust事項、というわけか」

 

『仮に、四肢無傷で勝ったとしても・・・この機体から神経に傷を与えずに切り離さないといけないし。この機体、機械のくせにコアは人間をベースに作られてるの。だから、機体に意思があるわ』

 

「人間をベースにか?」

 

『そうよ。これは、設計者が願いに則った死を迎えることができたら、自らコアになることを前提に作られた、機体。たぶん、相手も同じことをしているから、共鳴もあり得るわ』

 

「・・・なるほどな。まぁいい」

 

 眼光の先には殺すべき友人と死すべき憎き嚮主。救うべき両親とその機体。

 

「手が届く、まだ届く距離だ。なら、今度こそ、届かせて見せるっ!」

 

 体のように動く機体を駆り、今度こそ、この手にすべてを置けるように、何もない少年の最後の戦いが火蓋を切る。




 コードギアスっぽい要素がここでがっつり来ましたねぇ。え?終わりが近そうだ?・・・君、ちょっと裏に来てください(話をしよう)

 今後ともよろしくお願いいたします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。