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とある夏の日の思い出
とあるマンションのエントランス。手に持っている地図とネットの画像を見比べる、上は黒に胸元の部分にだけチェックがあしらわれているポロシャツ。下はチェックの丈の短めのスカートの少女が一人。
(あれ? 場所間違えたかな?)
中から出てくるのは男女ともにセレブな人ばっかり。マンションもそれに合わせて輝いて見える。
「あれ? シャルじゃん」
よく聞きなれた声に振り向く。
「えっ!? えぇえぇぇっ!?」
そこにはアキラが買い物袋を抱えて立っていた。上は白に黒縞柄の半袖のYシャツ、赤いネクタイ、黒のベスト。下には黒のスラックス。お堅い、というか。ホストクラブかバーテンダーでもしてそうな格好だ。けど、それが異常なほどに合っている。
「あ、アキラっ!?」
咄嗟のことで対応できない。びっくりさせようと思って連絡を入れずに来たのだ。
「ほ、本日はお日柄もよく」
「え?」
「じゃなくて・・・あ、あの、IS学園のシャルロット・デュノアですが四十万君、いらっしゃいますか?」
「いやいや、僕だって。・・・大丈夫?」
どうしていいかわからずうろたえるしかない。
「えっと・・・来ちゃった///」
「・・・」
こうなるとアキラもどうしようもなくて、混乱してくる。
(あぁっ! 僕の馬鹿僕の馬鹿っ! なに彼女みたいなこと言ってるのさっ!)
「あ、あぁ、そっか。じゃあ、上がっていきなよ」
「えっ! 上がっていいのっ!?」
「そのために来たんでしょ? 変なの」
(へ、変なのって言われちゃった///)
うれしいような困ったような不思議な表情を浮かべて止まっているシャルの手を引き、エントランスホールを通り、エレベータで8階まで上がる。
「そういえばシャル」
「ん?」
「前も思ったけど、服選びのセンスすごいね。よく似合ってるよ」
「あ、ありがと///」
(に、似合ってるって言われちゃった///)
幸せそうなシャルを見て、アキラは不思議そうにその顔を見ることしかできない。そのままシャルは8階でエレベータが留まるまで幸せそうにしていた。
エレベータから降り、そのままアキラが借りている部屋まで。
「ただいまぁ」
荷物を持ったまま器用に靴を脱ぐ。靴も革靴のようだ。
「お、お邪魔します」
「そこ掛けといて。今飲むものだすから」
「うん、ありがとう」
部屋はセンスのいいインテリアでまとめられており、かなり小綺麗に掃除されている。玄関から見て扉は5つ、現在いるダイニングで一つ扉の先が決定する。そのほか四つの扉のうち二つがトイレと脱衣所だとすると、残る二つのうちどちらかがアキラの部屋となっているはず。
(ここがアキラの家かぁ)
「ねぇアキラ」
「ん?」
「お家のことってアキラがやってるの?」
「そうだよ、一人暮らしだからね」
「えぇっ!」
「学園に入る前に借りてたんだ。父上はこの階の別の部屋に母上と一緒に住んでるよ」
「へぇ」
(アキラって、いい旦那さんになりそうだよね・・・。だ、旦那さんっ!?)
「はい、麦茶でよかったかな?」
コースターの上に麦茶入りのグラスが置かれる。
「うん。ありがと」
外は暑かった。それもあり冷たい麦茶はおいしく感じた。
(アキラと二人っきりかぁ)
幸せな気分に浸りながら麦茶でのどを潤す。
「ケー・・・。誰か来たみたいだね」
何かを言いかけたアキラはチャイムの音で、ドアホンに意識を向ける。
「はぁい、どちら・・・って君か、ラウラ」
『来てやったぞ』
「わかった。8階の・・・」
(はうぅぅぅ・・・)
もっとこのままがよかったと残念なシャルロットだった。
初めのチャイムとは違う、ベルの音がする。
「上がってきたね」
アキラが玄関先に向かう。
「やぁ、よく来てくれたね」
「お邪魔するぞ」
玄関で靴を脱いだラウラから箱を渡される。
「手土産だ」
「ありがとう・・・ってここかなり並ぶお店じゃなかったけ?」
「我が優秀な副官が進めてきたのだ、手土産にもっていってはどうかとな」
「そっか、いい副官がいるんだね」
「そうだろうそうだろう」
(あ、ものすごく誇らしそう)
誇らしそうなラウラが何だかかわいく見えてしまう。
「ふふ、可愛いねぇラウラは」
「きゅ、急にそんなことを言うな、バカものぉ///」
発言にいつもほどの切れが無く、声も若干裏返ってる。褒められてないのだろうな、なんて考えているとふと、ラウラの服装に気づいた。肩を出した黒のミニドレスのような服、普段のラウラからは想像もできないが、よく似合っている。
「その格好も。よく似合ってるよ、ラウラ」
廊下を渡りながら、そうこぼす。
「なっ!」
そのままドアを開ける。
「シャル、ラウラが来たよ」
「ん? シャルロットが来ているのか?」
「うん、ラウラより少し先にね」
「シャルの隣に腰掛けといて、今飲み物を出すから」
アキラがまた台所の方に。
「考えていることは同じようだな」
「皮肉にもね・・・はぁ」
「はい、ラウラ。あと、これ、ラウラからのだよ」
三種類、それぞれ違うケーキが並べられる。
「ラウラ、ありがとぉ」
なんというか、こう見ると姉妹のようだと、ふとそう感じた。
「ケーキは二人が先に選んでよ。あと、飲み物、紅茶とかの方がいいかい?」
「ううん、わたしはこのままでもいいよ」
「わたしもかまわんぞ」
「わかった」
アキラは台所に。たぶん、自分の分の飲み物を取りに行ったのだろう。
「シャルロットから選べ」
「いいの? じゃあ・・・これ」
シャルロットが選んだのはベリー系をふんだんに使ったケーキ。
「わたしはこれだな」
ラウラはいちごのショートケーキ。
「二人とも、選んだ?」
フォークを人数分と自分の分の麦茶をもってアキラが戻ってきた。
「決まったよ」
「わかった」
二人にフォークを渡し、それぞれケーキをとってもらう。
「じゃあ、僕はこれだね」
アキラはチーズケーキになった。
「あ、おいしい」
「うん、ホントにおいしいね。せっかくだし、少しづつ交換してみる?」
「それはいいな」
「食べさせあいっこ、みたいな?」
そこまで言ってシャルロットとラウラはハッとする。これはもしかしたら、食べさせても貰えるのではないかと。
「うん、いいんじゃないかな」
二人の表情が目に見えて嬉しそうになる。
「あ、でも、僕の口がついちゃってるのは困るよね」
今度は逆に落胆する。信号のように目まぐるしく変わって行く表情。
「だったら、二人だけで・・・」
そこまでいって話を遮るほどの勢いで否定する。
「そんなこと、ノープロブレムだよ、アキラっ!」
「わたしは気にしないぞっ!」
アキラは少し驚いた表情を見せる。普段からは想像できな過ぎてちょっと驚きだ。
「わ、わかった」
なにかわよくわからないが、別に気にしないから一口食わせろ、ということだと思うアキラをよそに、フランスとドイツでは今まさに協定(仮)が結ばれた。
「じゃあ、まずはアキラの分を食べさせてくれ」
「わかった、先にラウラからね」
フォークを綺麗に使ってケーキを一口大に切る。
「はい、あ~ん」
「あ、あ~ん」
パクっ! と、そのまま幸せそうな何とも言えない表情になる。
「おいしいな」
(声も若干上ずっているけど、まぁ、おいしかったんでしょ)
「つぎ、シャルね」
「うん」
「はい、あ~ん」
シャルも同じように何とも言えない表情になった。
「僕、これ好きだなぁ」
二人とも、はにゃぁんという効果音がぴったりな顔になった。買ってないし、持ってないけど、猫耳カチューシャをつけてみたい。
「じゃあ、僕も貰おうかな」
アキラは麦茶で口を流す。
「どっちからにしようかな・・・」
(ベリーとチーズだと、チーズの方が濃いよねぇ。となると、下に覚えさせたいから、先にベリーかな)
「ベリーからにしよ。フォークは僕ので突っついても大丈夫?」
「あ、待って。せっかく食べさせてもらったから、今度は僕たちが食べさせてあげるよ」
「わかった。じゃあ、シャルのから頂戴?」
シャルが自分のフォークで切り分け、アキラの口に運ぶ。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
すっきりとしたベリーとソースの酸味が突き抜け、控えめなクリームの甘さが混ざり、絶妙な甘さが口いっぱいに広がる。
「おいしい」
「よかったぁ」
もう一度麦茶で口をゆすぐ。
「じゃあ、ラウラの頂戴?」
「あ、あぁ」
切り分け、口に。
「あ、あ~んだ」
「あ~ん」
しっとりとした記事から、甘いチーズの香りが口に広がる。ただ甘いだけじゃない深みもある。
「これもおいしい。二人とも、ありがと」
ここでチャイムが鳴る。ラウラが来た時に聞いた、ドアホンのチャイムだ。
「今日はやけに人が来るなぁ」
ドアホンを確認すると、一夏、箒、セシリア、鈴音が。
「みんな」
『遊びに来たぜ』
『お邪魔してもよろしいかしら?』
「うん、僕は大丈夫だよ。一夏は部屋分かるよね?」
『おん』
「じゃあ、よろしく」
『わかった』
「アキラ?」
シャルロットが何かあったのかと少し心配そうな顔を向けてくる。
「一夏たちが来たんだ。やけに人が来るなぁ、今日は」
(本当に、人が来るなぁ)
実は一夏が来るのは知っていたのだ。元々そういう話をしていたし、その為の道具も揃えていたのだ。
「けどまぁ、暇じゃなくなったかな」
シャルロットもラウラも優しそうに微笑む。アキラが嬉しそうに微笑んでいる。それだけで嬉しい。
「よかったね、アキラ」
「うんっ!」
と、ここでドアベルがなる。
「お、来た来た」
玄関のドアを開ける。
「おはようアキラ」
「おはよう、みんな。さ、上がって」
玄関先には女物の靴が二足分。
「先誰か来てるのにお邪魔してもいいのか?」
「それ、ラウラとシャルのだから」
「そうか」
リビングに通し、ソファーに腰かけて貰う。
「一夏は知ってたけど。まぁ、よく連絡なしで来たねぇ・・・」
人数分のお茶を準備しながらみんなに呼びかける。
「一夏が行こうって言ったからあたしたちは来たのよ」
と、来たばっかりの一夏一行。
「わたしは驚かそうと思ったのだ」
と、その前に来たラウラ。
「えっと・・・あははは・・・」
と、一番最初に来たシャルロット。
「まぁいいや。なんとなくそんな予感してたし」
リビングから離れて、何かいろいろ入っている袋を持ってきた。
「なんだ、これ?」
「一夏がくるのは知ってたから。外に出る気はなかったし、何か家の中で楽しめるものって思ってみんなが来る前に買い物に行ってたんだ」
袋の中身はいろいろな玩具。日本、アメリカ、イギリスフランスドイツ。各国を代表する数々の玩具。
「僕のチョイスだからちょっとあれかもしれないけど、まぁ、無いよりはってことで」
「意外と買ったんだな」
「お金に糸目はつけない主義でね。まぁ、いっぱいあるし」
「いっぱいって・・・。どのくらいあるんだ?」
「う~ん・・・アメリカの国家予算三年分ぐらいかな。もしかしたら、もっとあるかも。全然意識してなかったからわからないや」
ここにきて、アキラは大富豪説浮上。
「何したらそうなるんだよ・・・」
「えっと、働くだけ働いて、全然使わなかったらこうなった・・・かな。欲が低くてね。こうやって人が来るかもとか想定してなかったら最低限の家具だけで済ませちゃうから」
そんなのありなのかと考えるが、もともとオーバースペック気味のアキラを思い出し、有り無し関係なしに諦めた。
「で、何する?」
「これなんかどうだ?」
「それはドイツ発祥のゲームだね。みんなもそれでいいかい?」
「おう」
満場一致。このゲームをすることになった。
時は経ち、日も暮れ始めたころ。時計の針は1830を指している。
「そろそろ夕飯の支度だなぁ・・・。みんな、何食べたい?」
「え? アキラが作るのか?」
「嫌かい?」
「意外だなと思って」
「それは心外だよ一夏。料理できる方なんだよ、僕」
「じゃあ、お任せで」
みんなも賛成のようだ。
「お任せかぁ・・・意外と困るんだよなぁ」
そのまま台所の方に向かう。
「みんなはそのままくつろいでて」
水場の音や包丁の小刻みな音。台所からはいろいろな音色が響く。
「あいつ、ホントにできるのかな?」
「後ろ姿は様になってるな」
「なんか以外よねぇ」
「意外とできそうじゃありません?」
「僕はてっきり料理できないと思ってたのに」
「わたしはできると思っていたぞ」
上から順に一夏、箒、鈴音、セシリア、シャルロット、ラウラ。それぞれ口々にアキラが料理をするということに意見を出す。
「みんなぁ、聞こえてるよぉ?」
だから、ちょっと大きめの声で。
「ほんと、かぁなり心外なんだけど。一夏に至ってはできない前提じゃん」
ものの40分で作り上げた。
「困った挙句にパスタにしました」
ソファーの前のテーブルにきれいに盛り付けられたスパゲッティ・アッラ・カルボナーラが人数分。フォークとスプーンを添えて出てきた。
「アキラさん、これ、生クリームは使いましたの?」
本場を知るイタリア代表セシリアは疑問に思う。
「え? 使わないものじゃないの?」
アキラは生クリームをカルボナーラには使う者でないと思っていた。つまり、これは一切生クリームを使っていないものとなっている。
「へぇ・・・でも、生クリーム無しで作れるものなのか?」
一夏も料理をしてきたが、カルボナーラには生クリームを使うのが一般的だと思っている。
「確か、卵の凝固を防ぐための生クリームなんだよ。だから、本場イギリスでは使わないものだと思ったんだけど・・・」
先に一口食べてもらう。口に入れた瞬間、セシリアの表情が変わる。
「どうかな、セシリア?」
「お、おいしいですわ。すごいですわ、一流シェフに作らせてもここまでの物は作れませんわ」
本場イタリアの代表からのお墨付きもいただけた。
「そ、そんなにすごいのか?」
「えぇ。わたくしも、ここまで完成度の高いものは滅多に口にできませんでしたわ」
おいしそうに一口一口味わって咀嚼する。
「よかった。みんなも食べて食べて」
「「いただきます」」
日本文化で生活している者から出てくる。
「ほんとだ、おいしい。すっごい濃厚」
それぞれ称賛の言葉が上がる。
「アキラ、どうやって覚えたの?」
料理部部員として、アキラの腕前の高さに驚かされる。ぜひ、聞いてい見たいものだ。
「確か、フランスからシェフを招いて、本を見ながら味の指南をしてもらったかな。ある程度完成できるようになったら、そこからは味の研究って感じ」
ここでも能力値の高さが。
「もともとは生クリームを使うように教えてもらってたんだけど、本場の味を知ってからなんか違うなと思って、使うのをやめたんだ」
つまるところ、独学で生クリームを使わないカルボナーラを作り上げたようだ。
「もう、僕が料理部にいるのがおかしく感じてくるなぁ」
普通は、料理本を見ながら何回も作っては失敗してを繰り返すものだ。アキラはもう、創り始めの過程がもう違う。
「いやいや、シャルも頑張ってるじゃん。部活どう真面目にしてるの、知ってるんだよ?」
「そ、そうなんだ///」
意外とみんなの活動状況をアキラは知っていた。どこまで隙がないのだと、完夫駅長人に見える。
そんなこんなで夕飯を食べ終え、アキラが食器をしまう。
「あ、そうだ一夏」
「ん?」
「今日、どうするの?」
「そうだな、千冬姉から許可も貰ったし、泊っていこうかな」
「えっ!? 一夏、アキラのところに泊まっていくの?」
「そうだけど・・・」
もともとそういう話でアキラが千冬に話を通していたのだ。
「えぇっ!? アキラずるいっ!」
「ずるいって、なんでさ?」
「別に、ずるいもんでもないだろ」
朴念仁ズは分からない。まぁ、それゆえの朴念仁という称号なのだが。
「みんなは近くの駅まで送っていくよ」
アキラは革靴を履く。時間はもう20時を指している。
「僕のマンションにこんな大勢泊れるほどの広さの部屋も数もないし、ね」
さ、行くよ。と玄関を開ける。後ろ髪を引かれる想いで女子組はアキラ宅を後にする。
「あ、一夏は待ってなよ。合鍵は預けとくから」
「わかった。みんな、気をつけてな」
その後、駅まで送って、マンションに戻る。
「アキラ、お前の昔話、色々聞かせてくれよな」
「それが目的だったんでしょ? もう」
(ほんとに君は。どこまでも僕を知ろうとする)
無邪気に僕のことを聞いてくる、今は亡き友人の影が重なる。
「アキラ、早く早く」
せかしてくるのも友人にそっくりだ。今晩はなかなか眠れそうにないな。
「わかったわかった」
アキラの部屋でアキラの話を。これは夢じゃないと、噛みしめながら。