そこから先の四十万アキラは、人という域を脱したのではないか、そう錯覚するほどだった。壁を走るわ剣戟戦するわ一夏を抱えて飛び降りるわで。日本刀にクナイで応戦するし軍属とのナイフ戦もさらっとこなすし、ラウラを抱えて転がってくる大岩をかわすしで、もはや、”
「なぁ、アキラ」
「ん?」
「その・・・こんなにめちゃくちゃにしていいのか?」
「う~ん、まぁ、いいんじゃないかな。僕は楽しいし」
「そ、そうか」
いまだにあの時のクナイを使いっぱなしだ。アキラ曰く、非常に使い勝手がいいらしい。
「にしても、こんなところで休憩できるなんてな」
「そうだねぇ」
今は城の上の壁の隙間。さすがに相手も一時休戦らしい。アキラを倒さないと仕事にならない。
「にしても、お前すごいな」
「何が?」
「箒にもラウラにも鈴にだって。お前強すぎじゃないか?」
「僕はこういう訓練をしてきたからね。家族を守るために、ずっと」
「・・・俺も、お前みたいに強くなれるか?」
「無理無理、僕が何年続けてきたと思ってるの。一夏じゃ絶対追い付けない」
冗談めかしながら笑って言うが、実際にアキラの努力は計り知れない。
「そっか。じゃあ、俺は俺なりに、かな」
「そうそう」
今まで笑っていたアキラの表情が急に鋭くなる。
「どうした?」
「さて、そろそろかな」
「は?」
「彼女たち、僕に単騎じゃ勝てないことがわかったから、作戦練ってるんだよ」
「なんでわかるんだよ?」
「だって、誰一人仕掛けてこないでしょ? それに今、近くで物音したから」
「確かにな」
二人が休憩をとれている。それはすなわち襲われていないということ。
「だからそろそろ仕掛けてくるんじゃないかなぁって」
クナイを回す。今あるものは一夏のクナイ一本とアキラのクナイ一本。相手は補充してきただろう。こちらはじり貧だが相手は準備万端だ。
「誰が闇討ち担当で、正面がだれで、後ろは誰かなぁ・・・」
「後ろは確定じゃないか?」
「一人はね。問題はシャルがどこのポジションか。それに応じて僕も取れる策が変わる。万が一後ろなら、今の武装なら勝ち目がないに等しいんだ・・・」
情けなさそうにはははと笑う。
「狙撃が二人・・・前衛は箒と鈴だよな」
「さすが一夏。となると闇討ちはラウラになるんだ」
「あいつ、闇討ちするのか?」
「わからない。ただ、勝つための策には乗ってきそうじゃない?」
「確かに」
「まぁ、そこまでの策が練れてるかはわからないけど。フィニッシャーはたぶん狙撃組だから。あぁあ、一夏が弾切れるだけの反射神経あればなぁ」
「ちょ、無理だって」
「知ってる」
とってもいたずらな笑み。わかってていてるのが丸わかりだ。
「まったく。意地が悪いな」
「そんなことないよ」
笑みは崩れていない。今までは見れなかった表情。
「二人とも、出てきなさいっ!」
外から声がする。
「お、正面から堂々来るかぁ」
「お前の予想は外れだな」
「だねぇ」
アキラだけが顔をだす。
「どうかしたの?」
「おとなしく王冠をよこしなさい」
「えぇ・・・だって電撃貰いたくないもん。あげないよ」
「力ずくで奪わせていただきますわよ?」
「できるの?」
挑発的な笑みで誘う。醸し出されるは絶対的な勝利への自信。強者の風格。
「やってみなくちゃわからんだろう?」
「一夏」
「ん?」
「クナイを二本とも渡しとく。逃げ回って」
「はぁっ!? お前はどうするんだよ?」
「え? 武器は彼女たちから借りるけど」
「借りれるのか?」
「素直に貸してじゃ貸してくれないだろうね」
「ほんとにいいのか?」
「うん。あとで僕も合流する」
「わかった」
一夏を抱えて壁から降りる。
「随分と余裕そうだな」
後ろは最も勝ち筋の少ない、セシリアとシャルロットが担当のようだ。これは、骨が折れる。
「余裕なんてないよ、一番勝ち筋の少ない陣形じゃないか」
前衛三人、後衛二人。1on5としては最も最悪な組み合わせ。それでも
「でも、僕はこれを覆すよ?」
「あら、人数不利が理解できておいでですか?」
「うん、一対多なんて嫌というほどやってきたしなぁ」
「へぇ」
「だからまぁ、余裕があるわけではないけどさ・・・来なよ、僕が相手になってあげる」
その言葉を皮切りに、ラウラ、鈴音、箒はアキラに向かって刃を振った。
「あいつ、大丈夫かな?」
一番最初にいたロビーの真ん中で一人、腰を下ろす。手にはアキラから渡された二本のクナイ。
演劇のフラッシュも照明もすべてアキラたちに注がれている。わずかに確認できるのは白い内装だけだ。
「おわぁっ!」
突如として足が引っ張られ、地面に吸い込まれた。
「いたた・・・」
場所は・・・どこか分からない。暗くて見当もつかない。
「あ、あなたはあの時の・・・」
休憩中に押しかけてきて、白式にオプションをつけないかと持ち掛けてきた企業に属する人が近くにいた。
「ここに来れば安全ですよ」
「はぁ・・・」
「白式をいただきにまいりました」
「はぁっ!?」
「・・・だからさっさとよこせってんだよぉっ!」
一夏は何をされたのか分からなかった。ただ、背中に激痛が走った。
「ぐはぁっ!」
ここで一夏は初めて自分が蹴られたんだと分かった。後ろのロッカーが衝突に合わせて大きな音を立てる。
「何ぐずぐずしてんだよ、さっさとよこしな」
女は背中から八本の足が生える。
「くっ!」
一夏も反射的に白式を展開する。
「いいねぇ、そいつを待ってたんだよ」
女と一夏は狭い空間で対峙する。
一夏を変わってアキラは、ほぼフルメンバーの専用機と対峙している。
「はぁっ!」
振り下ろされる刃を持つ手を手で打ち払い、別の相手を見据える。刀もナイフも中国刀も、アキラには関係ない。当たれば即死の一撃必殺をいなしつつ、後方から狙撃をされないように、狙撃手との間に置く。
「くっ!」
「う~ん、期待してたのになぁ」
いなすだけのアキラには余裕があった。刃物もライフルも脅威だが、アキラの服すらかすめることがない。
「さすが私の嫁だけあるなっ!」
「本気で殺しにかかってもいいんだよ?」
「はぁっ! あんたまだ余裕とか言うのっ!?」
「そりゃぁ、ねっ!」
箒の持っている刀を抜き取った。しっかり握っていたのに、するりと、布を引くように、するりと。
「なっ! わたしの刀がっ!」
「借りるよ」
獲物は十分すぎるほど。中国刀の刃を折り、ナイフを弾き飛ばし、ライフルを切り捨てた。
「僕の勝ちぃ」
刀を肩に乗せ、余裕満点の笑み。少女たちは一太刀すら、当てれなかった。
「つ、強すぎでしょ、あんた」
「本当に、同じ人間か疑いたくなるな」
「か、勝てる気がしないぞ」
「撃っても全然当たらないよぉ」
「狙った場所を予測されるなんて・・・」
上から順に鈴音、ラウラ、箒、シャルロット、セシリア。三者三葉、いや、五者五葉の方がいいだろう。
「まぁ、諦めてよ」
ふと、一夏の位置が気になたアキラは辺りを見回す。
(あれ? どこまで逃げたの?)
きょろきょろするも見当たらない。
(これは・・・困ったことになったな)
今まで以上に走り回り、一夏を探し始めた。
さて、だんだん筆が乗らなくなってきました。最終話見ちゃったからね、妄想がストップしてちゃいましたが、書き切りますよ、心配しないでください。
今回はとある劇をぶっ壊していくアキラ君のお話ですが・・・・・・書いててすごいですね、これ。化け物ここに極まれりって感じです。
今後ともよろしくお願いいたします。