『ねぇ、ライ』
『ん?』
『私たちがあの子にしてあげれることって何かしら?』
あの子、とはもちろんアキラのことだ。アキラが失った人と、同じ名前、同じ顔をしているのに、何もしてやれないのか。それが嫌だから、アキラに対して、何かしてあげることはないのか。
『僕も同じことを思ったんだ。・・・でも、僕らは彼のことを知らなすぎる。仮に僕やカレンに似ていたとしても、育て親がわからなければどんな風に育ったかもわからない』
『でも、それでも私は、あの子のために、何かしてあげたい』
二人は考えた。アキラに今の自分たちができることを。明確な答えは出せぬまま、時間は過ぎていくが、それでも考えることをやめなかった。
・・・どれだけ時間がたっただろうか。長い時間をかけて、一つの結論を導いた。
『アキラが道を踏み外しそうになったとき、アキラに何かあったとき、アキラが壊れそうになった時、そばにいてあげるって言うのはどうかしら?』
『そうだね・・・今の僕たちにできることはそれぐらいかもね』
『でも、いつかアキラが心をちゃんと開いてくれて、自分を許せるようになったら、その時は私たちは彼の親として、しっかり支えていこう?』
『そうだね、僕らはそれぐらいしかできなさそうだ』
『どうして、同じ名前なのに、こんなにも差があるの?』
同じ名前、同じ顔をしているのに、今の二人には届かない何かが、高い何かがある。
『それは、僕たちよりも未来の僕たちの方が大人だったんだろう』
それでも、だからといって見捨てたりしない。だから
『だったら、未来の私たちの代わりに誓うわ。アキラを必ず守るって』
『僕もだ、君と一緒に、アキラを必ず・・・』
まだ、育て親が誰かも、周りに馴染み切らないアキラの居た、アキラが入学して間もなくのころ、二人がアキラに誓った、誓いだった。
アレクサンダ・スペリオルはいまだに健在。機械的でありながら流暢に獣のように部屋を駆け巡り、敵味方の区別もつかぬまま、ウルナエッジ改で傷をつけていく。それに対応した高速戦闘を繰り広げるが殺すことが目的の機体に殺さないことを前提で立ち回らなければいけない機体の方が圧倒的に不利を背負わされる。
「カレンっ!」
「わかってるっ!」
二人の機体の方が断然反応速度もいいはずなのに、アレクサンダ・スペリオルはそれをも凌駕する速度で行動をとる。右に振り向けば左に回られ、後ろをとられたと思えば正面にいる。まるで・・・
「僕たちは、幻覚でも見ているのか?」
アキラの機体は元いた位置とは反対の位置に出現し、シールドにダメージを与えていく。
「でも、アキラはちゃんと・・・くっ!」
「ライっ!」
「大丈夫だ」
振り向きざまにMVSを振るうが、空を切り、アレクサンダ・スペリオルは目の前に姿を現す。
(似ている、あのギアスに・・・ロロのギアスに・・・)
しかし、有り得ない。連続行使はロロのギアスの場合は死をもたらす。さらに、一人の人間に複数のギアスが宿るなんて聞いたことがない。だがもし、もしも一つの肉体に二つのギアスを宿す方法があるなら、もしも一つの体に二つのギアスを宿せる体質であったなら。
(可能性はあるな)
「カレン、アキラに肉薄してくれ」
「わかったっ!」
紅蓮はアレクサンダ・スペリオルに向かって飛翔する。呂号乙型特斬刀を煌めかせ、目標を切断するように、鋭く、振り切る。
「やっぱりっ!」
白蓮は左前腕部を射出、自在な軌道を描きながら紅蓮の背後で何かをつかんだ。
「えっ!?」
「アキラは、一つの体に複数のギアスを宿してるっ!」
「えぇっ!?」
紅蓮の背後で白蓮の左手はアレクサンダ・スペリオルをしっかりとつかんでいた。
「シールドを削り切るっ!」
そのまま輻射波動を鎧袖伝達で起動させる。アレクサンダ・スペリオルのシールドはデータ上ならしっかり削れていっているはずだ。
「よし、データー上なら問題ないな」
左前腕を回収し、アレクサンダ・スペリオルに近づく。
「ライっ! 下がってっ!」
「くっ!」
アレクサンダ・スペリオルは立ち上がった。シールドは削り切った、しっかり機能停止まで追い込んだはずだ。しかし、異様な駆動音を立てながらもアレクサンダ・スペリオルは動く。
「あれは、本当にISなのか?」
「なんで、どうして?」
アレクサンダ・スペリオルの装甲がすべて剥がれ落ちると、機体のフレームが出てくる。フレームは血が通うように紅い筋がいくつもあり、鼓動するように発光を繰り返す。パイロットは装甲とは別の謎の電磁バリアで守られており、顔は謎のデバイスによって目の部分だけ確認できないが、全身に力の入っていないアキラが映った。腕や足は機体につながれたままだ。どうやって機体が動いているのかもわからない。
「なんなんだ・・・これは・・・」
いささかISと呼ぶにはおかしな機体がうなり声をあげる。機体が膨れ上がり、パイロットを取り込みながら肥大化し、やがて、黒い塊となった。
「アキラがっ!」
「させないっ!」
塊に輻射波動を当てるが傷一つどころかさらに肥大化し、黒い塊がはじけた。
「なっ!?」
中から黒いISが顔を出した。
「ランスロット・・・」
ランスロットを模したシルエットの、黒い機体。すらりとシルエットと背中にある一本の刀。太もも部と二の腕部にはクナイが合計で12本。
「司令部っ!」
ライはとっさに司令部に通信を入れた。
『見えているっ! なんなんだあれはっ!?』
「VTシステムに酷似していますが、データはっ!?」
『該当するデータなしっ!』
「アキラの周りには、いったい何があるっていうんだっ!」
戻ってこれないお姫様は、王子様の助けを求め、黒い棺の中で眠る。呪いはまだ消えない。
現在筆が乗っております。どうも、白銀マークです。
アキラ君、白雪姫になってしまいましたねぇ。毒リンゴならぬ毒ISと、いやはや、良い感じに仕上がりました。さて、お姫様を助けることのできる王子さまはどなたかな?
次回もよろしくお願いします。