双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

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姫君の帰還は、爆発とともに

 作戦は熾烈を極めた。まず、アンノウンの移動能力値が極めて高いこと、ISの持っているシールドを貫通できる武器があること、パイロットを傷つけてはいけないということ。

 

「ポイントに来たわっ!」

 

『ユキネはそのままそいつが逃げないように檻を作ってっ!』

 

 砲撃によって動くことのできない檻を作る。

 

『アキラを囲ってっ!』

 

『はいっ!』

 

 コトノハの指示の元作戦は遂行される。今のところは順調だ。何も問題はない。

 

『保護できたわよっ!』

 

『溶かしてっ!』

 

『『了解っ!』』

 

 アンノウンに向かって最大出力で輻射波動が使用される。あれだけ手を焼いていたアンノウンは簡単に溶け、最後には水が残った。

 

「ふぅ、オペレーション、クリアかな?」

 

「アキラ君っ!」

 

 水の中からマント等を捨てた、王子には似つかわしくない状態でその場に倒れていた。衰弱している。

 

「アキラ君、しっかりして」

 

(私の責任だ・・・私の・・・っ!)

 

「うぅ・・・」

 

 はっ、と声に反応して彼の顔を覗き込むと、ゆっくりと瞼を開け、太陽の光から目を細める。

 

「あれ? 一夏は? 蜘蛛のISはどこ?」

 

 周りを見回しても、それらしきものは一切ない。いるのは両親と妹、生徒会長だけだ。

 

「あれ? どうしてこんなところに? 父上に母上まで」

 

「アキラ君っ!」

 

 彼は死ななかった。五体満足で、また、みんなのところまで帰ってきた。その事実がたまらなくうれしくて、自分のせいで誰かが死ぬことがなくて、その事実が、たまらなくうれしかった。

 

「か、会長っ!?」

 

 感極まる。アキラが生きていることを触れて、体温を感じて確認する。

 

「よかったぁ」

 

「まったく、あなたのせいではないのに」

 

 彼女を抱えたまま、ゆっくりと体を起こす。まだくらくらするが、動けないほどではない。ただ、異常なほど体が重い。

 

「父上、今はどうなっていますか?」

 

「上空にはサイレント・ゼフィルスが。地下ではアラクネが。それぞれ一夏の白式を狙ってきた。現在は二機とも逃げられてどこにいるかわからない状況が続いてる」

 

「そうですか・・・」

 

「そういえば、なんでアレクサンダ・スペリオルに乗ってたんだい?」

 

 アキラはアレクサンダ・スペリオル以外にもう一機、紫星を所持していたはずだ。

 

「あの機体は、校内で使用することができません。機体の有する武装の出力が高いこと、システム補助があること。そのほかにもありますが、主にこの二つが原因です」

 

 補修で実力や性能テストをしたところ、学園の設備が一部使用不可能になるほどのジャミングが検知され、使用には許可が必要になった。高い能力故の代償だ。

 

「なるほどね」

 

「まだ調整もしていないので調整をしてから、改めて使用許可を貰いに行きます」

 

 ライはアキラに手を伸ばす。その手をつかみ、アキラは立ちあがった。

 

「まだまだ体の状態は良くないみたいです」

 

 気丈にも笑って見せる。

 

「さて、戻りましょうか。謝罪を入れないといけない人たちがたくさん・・・っ!」

 

 アキラは見てしまった。見つけてしまった。蜘蛛型のISがこちらに向かってくることに。

 

(まだっ!)

 

 ISを展開しようとして、思い出す。アレクサンダ・スペリオルは二度と使えない。もう、迷惑を駆けれないし、第一乗れるような状態じゃない。

 

(考えろ、まだ、まだ間に合うはずだ)

 

 ライもカレンも、ユキネだって気づいていない。わかったのはアキラだけ。だからといって、今紫星を使うことはできない。

 

(ギアスを・・・)

 

 使おうとして、心臓が痛くなる。ここで初めてアキラはアレクサンダ・スペリオルに乗っている間にギアスを大量に行使していたことがわかった。それは、ライのとは違う、もう一つのギアス。

 

(だめだ、これ以上は僕の命が危うい)

 

 考えても考えても、よい策はない。

 

「父上、うしろっ!」

 

 ライがすぐに振り向くと、アラクネは既にアキラを己の射程距離内に収めていた。

 

「私に手を出したことを、地獄でわびなぁっ!」

 

(僕はまだ、死ねないっ!)

 

 アキラの右の瞳が、紅く羽ばたく。・・・アラクネは、吹き飛ばされていた。

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 目の前にはアキラがたっていた。が、すぐに膝から崩れ落ちる。

 

「が・・・はぁ、はぁ」

 

 息が上がる。呼吸が苦しい。

 

「あ、アキラ、君はまさかっ!」

 

「ばれ、ましたか。まぁ、たくさん、使ってたみたいなので、疑問が、確信に、変わっただけだと、思いますが」

 

「もういい、もうは話さなくていい」

 

 話すのもやっとだろうに。あの時のルルーシュとロロはきっと、こんな感じでルルーシュはこんなに胸を痛めたんだろうなと。ふと、そう思った。

 

「ち、外したかっ!」

 

 搭乗者はアラクネのコアを抜き取り、自爆装置を作動させる。アラクネは武装と装甲だけの状態で、四人に突っ込む。

 

「カレンっ!」

 

「わかってるっ!」

 

 二人が前に立ち、紅蓮と白蓮を使おうとするが、エネルギーが足りない。輻射波動にエネルギーを割きすぎたのだ。

 

(し、しまった。エネルギーが)

 

 アラクネは近づいてくる。

 

 そんな中、アキラは弱り切った瞳でアラクネを見据える。

 

(もう一度、もう一度だけっ!)

 

 右目を紅くするが、数秒間も使うことはできなかった。止めることも、逃げることも、ギアスの呪いではできなかった。

 

 ドカァァァァァァンッ!!

 

『何の爆発だ、報告しろっ!』

 

 無線の音声だけが流れる。

 

『大丈夫です。みんな無事です』

 

 ただ一人、この中でみんなを救う手段を持っていた。ミステリアス・レイディの水は、特殊な水。ISのエネルギーを流すことのできるナノマシンで制御された水。だから、この爆発を、水をドームシールドのように展開し、みんなを救った。

 

「か、かいちょう?」

 

「大丈夫よ。大丈夫」

 

 アキラは虚ろな意識のまま、その視線を楯無に向ける。

 

「誰も死んでなんかいないわ。そのまま、少しお休みなさい」

 

 温かい感触が、頭をなでる。虚ろな意識を、今度こそ完全にアキラは手放した。

 

 

 

 

 

 カラスの啼く時間。外はオレンジ色だが、中は真っ白な部屋、近くで機械のピッ、ピッと音がする。

 

「あれ? ここは?」

 

 体を起こす。

 

「無茶をしすぎだ、バカ者」

 

「織斑先生・・・」

 

「まったく。お前のおかげでとんだ災難だったのだぞ?」

 

 近くには千冬だけがいた。

 

「すいません・・・」

 

「でもまぁ、結果として、施設に対する損害だけだったんだから問題はない」

 

「今は・・・」

 

「ほかの生徒は後かたずけをしている。文化祭も終わったからな」

 

「そうですか」

 

「当分はISへの搭乗禁止だ」

 

「そんなっ!? 僕はまだ十分に「だめだ」・・・どうしてっ!?」

 

「お前の右目のことを、蒼月から聞いた」

 

「・・・さすが父上、わかっておられたのですね」

 

「あぁ、お前はまだ体の状態がよくない。このままISに乗ってもまともに動かせんだろう」

 

「確かにそうです。今の僕はボロボロです」

 

「だから、体を治してからと」

 

「でも、それは嫌です。僕が、また無力になってしまう」

 

「なら、少なくとも今日明日のIS搭乗を禁止だ」

 

「・・・わかりました」

 

「はぁ・・・私も甘くなったものだ」

 

「全然、お変わりないですよ、先生は」

 

「私も仕事に戻る。ある程度体がよくなったら、医師に伝えて自室に戻れ」

 

「了解」

 

 千冬は部屋を後にする。そのあとすぐに、扉が開く。

 

「体の方はどうかしら?」

 

「会長・・・はい、大丈夫です」

 

「ごめんなさいね。まさかあんなことになるなんて」

 

「そんなことはないですよ。あれは偶然の結果です。必然の結果ではないですから」

 

「それでも「それ以上はなしです」っ!?」

 

 唇に指が当てられる。指の持ち主は優しい笑顔で、その先を制した。驚いた顔で頬を染める会長。

 

「それ以上責めてはだめです。今回はしょうがなかった、それでいいんですよ」

 

 アキラは体を元に戻す。

 

「・・・あなたは気になりますか? 僕の眼」

 

「いいえ、と言えば嘘になるわね。でも、聞かないわ。それは野暮ってものだもの」

 

「さすが会長ですね」

 

 会長と呼ばれた。それは正しいのに、みんなにはない壁を感じてしまう。

 

「・・・刀奈」

 

「・・・え?」

 

「私の名前。本当は楯無じゃなくて、刀。更識刀奈よ」

 

「刀奈・・・いい名前ですね」

 

 復唱してみても、良いなだと思う。

 

「そ、そうかしら・・・?」

 

「はい。・・・でもなぜ楯無の名を?」

 

「更識家では代々、当主を継いだ者が楯無を名乗るの。だから「楯無」という名前は本名じゃなくて、襲名して、今の「楯無」の名を名乗っているの」

 

「なるほど・・・会長のお家柄、というわけですか・・・。それを僕に伝えてもよかったんですか?」

 

「あなただから大丈夫だと、私は思ったのよ」

 

「わかりました。僕も共犯者ってわけですね」

 

「そうよ。・・・そ、それとは別の話になるんだけど・・・」

 

「なんですか?」

 

「ふ、二人の時は・・・その、刀奈って、呼んでもらえないかしら?」

 

 拍子抜けしたアキラは驚いて目を丸くさせた。

 

「あ、ごめんなさいね。わ、忘れて頂戴」

 

 目をぱちくりさせていたものの、すぐに優しい笑顔に変わる。

 

「わかりました。刀奈さん」

 

 妹を見るときのような、あの優しい顔。

 

(あぁ、私は、この顔を向けられたかったんだ)

 

 なんでこんなことを言ったのか理解できなかった。でもきっと、何か理屈では片づけれない何かが働いたのだと。そう、結論付けた。




 はい、どうも、白銀マークです。

 アニメ本編なら一夏君が守られていたのですがぁ、一夏君、今回は仕事ないので、アキラくぅん、に代わっていただきましたぁ。
 いやね、恋のライバルを増やすのは楽しいよ、ほんとに。

 今後ともよろしくお願いいたします。
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