長い廊下に足音が一人。
「地図は覚えたつもりだったんだけど」
両手で資料を抱えているこの人は、お困りである。
「僕もまだまだかぁ」
地図として使っている紙には、
『アキラ、ISに関する資料を適当な冊数、ここに運んできてほしい』
の文字が癖のないきれいな字で書かれていた。
「ここを・・・右か」
地図を頼りに進むと、とある部屋の前まで来た。
コンコン。
「返事は・・・ないか」
扉を開けて中に入る。
「失礼します。・・・資料を持ってきました」
仲間で歩を進めるが暗い部屋で何も見えない。
「ここに置いておきますので」
人気のないその部屋から出ようと振り向くと・・・扉が閉まってしまった。
「?」
扉お開けようと押してみるがびくともしない。
「あれ? おかしいな」
(さっきは空いたのに)
仕方なく座ろうとする。地べたのはずのそこにはいつの間にか椅子があった。
「・・・誰かいるの?」
(怪しい、怪しすぎる)
椅子から離れ、扉を背にして立つ。
「誰かいるんでしょ!?」
返事はない。まぁ、あってもらっても困るというものなのだが。
「誰かっ! 誰か開けてくださいっ!」
ドアをたたく。無機質な音だけが部屋に木霊する。その音とは別の、何かが、天井を走る音が。
「開けてくださいっ! 助けてくださいっ!」
聞こえていないのだろうか、アキラはそれでもドアをたたくのをやめない。
「って、こうするとやっぱり降りてくるよねっ!」
ドアの音で足音を消しつつ、対象に近づけるタイミング。しかし、それを知っていれば。ドアの音がどちらか片方の耳で聞き取れるように調整する。そうすれば、近づいてくる足音に気づくことができる。
「はっ!」
対象に向かってけりを入れるが綺麗に躱され、また闇に溶け込まれてしまう。
「だめか・・・」
足を元に戻す。コツっと虚しい音がした。
(数は・・・音の反響から推定は4人。部屋の広さも、大体わかった)
地を蹴り、最初に仕掛けてきた対象が逃げた方向に飛び蹴りを入れる。
「何もいないか・・・」
また、足音を立てて着地する。
(右側に2、正面はなし、左に1、後ろはなし。ということは上に1)
「何が目的? なんで僕がいるの?」
返答はない。仮にアキラ自身のクローンだったなら・・・。
「ギアスを使ってこないなんて、僕らしくないじゃないか」
「ぎ、ギアスとは何だっ!?」
やっと帰ってきた返答は、正直、聞きたくなかった声だ。知っている。この声の主を。
「ら、ラウラ?」
すると、突然何かが顔を覆って、それ以降の意識が、途絶えてしまった。
「う、うぅ・・・」
いったい、どれくらいの時間を過ごしただろうか。まだ浅い意識を無理やりに覚醒させる。周りは見えないが、アキラの周りが明るいことは分かった。
「あれ?」
手足を動かそうとして、気づく。手も足も固定されていた。
「用意周到だな、骨が折れそうだ」
と、すぐに声が聞こえた。
『禁断の花園にようこそ。四十万アキラ君』
(ま、まさか・・・この声は・・・)
部屋の明かりが一斉に灯り、部屋の内部構造がわかるようになった。
小さなステージに、掲げられた横断幕、横断幕には四十万アキラにご褒美対決の文字が。
「な、なんなんだ?」
「はいっ! ついに始まりましたっ! 四十万アキラにご褒美対決っ!」
ステージの上には見知った人たちが。
「進行、司会は僕、蒼月ライと」
「私、紅月カレンでお送りしますっ!」
黒の騎士団当時の服装で、アキラの両親はマイクを持ってそこにいた。
「ど、どうしてあなた達が・・・」
「内容は各自自由。アキラを一番喜ばせた人が勝利ですっ!」
「それではさっそく「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」ん?」
「なんですか一体っ! それに、どうして僕は縛られてるんですかっ!?」
「だって、素直にわかりましたっておとなしくしてるわけないし」
「絶対深読みしちゃうじゃない?」
「そりゃあ・・・そうですけども・・・」
「だったらこれが正解だよね?」
「ミレイ会長がこういうイベント行事好きなの、なんとなく理解できる気がするわ」
「だ、だったらこれは一体何なんですかっ!」
「これは・・・」
「秘密の対決、よ」
「は、はぁ・・・」
「まずは、エントリーナンバー一番っ!」
「シャルロット・デュノアさんの登場ですっ!」
幕が上がっていく。そのさなかふと、アキラは疑問を持った。そう、気のせいでなければ、知っている名前だ。
(シャル?)
上がり切った暗幕の奥には、テーブルが一つ、椅子が二つの小さなコテージのセットが。その中には、なぜかきわどい衣装を身にまとったシャルロットがいた。
「えへへ」
「あれ? シャル?」
「や、やぁ、アキラ」
「こ、これは一体・・・。それにその格好は?」
「これ? これは、トイプードルだよ?」
耳も動くし、尻尾もしっかりある。
「す、すごいんだけどさ・・・。その、僕はどこを見ればいいのかな?」
いささか、露出度が高すぎて、目のやり場に困ってしまう。いくらアキラが朴念仁とはいえ、こういうことは困る。
「あ、アキラのエッチっ!」
「えぇ・・・」
もう、アキラはどうしていいやら。すでに頭がパンクしそうだ。
「あ、そうだ。クッキー持ってきたんだ。お茶にしない?」
「そうだね。そうしようか」
腰を下ろし、シャルルが包みを開く。
「お茶持ってくるね」
一端舞台裏に戻ったシャルロット。
「よく造りこまれてるなぁ」
「お待たせ」
両手でお盆を持って戻ってきた。丁寧に机に置かれるティーセット。
「じゃぁん」
丁寧に結わえられた包みを開く。
「おぉ」
中にはきれいに形作られた白と黒のハートのクッキーが。
「さすがシャルだね」
「えへへぇ」
(本当に、上手だなぁ)
「あ、食べさせてあげるね。アキラ、目をつぶって口開けて?」
「わかった。・・・こう?」
「うん、そう」
シャルロットはアキラが目をつぶったのを確認すると、口にクッキーを咥えた。そして体を乗り出し、ゆっくりと、クッキーを口に運ぶ。しかし、彼女は忘れていた。
「こらっ!」
シャルロットの唇からクッキーを手で取る。
「間違えて僕が噛んじゃったらどうするの」
クッキーは・・・うん、おいしい。
「ご、ごめん」
シャルロットの耳がわかりやすく垂れた。いや、耳は耳でもコスプレの耳だが。
「そんなにしょげられたら僕が悪い事したみたいじゃない・・・。ほら、いくら暖房聞いてるとはいえ、その格好は寒いでしょ?」
上着を脱ぎシャルロットの肩に羽織らせる。
「あ、ありがと」
服の袖をを通してみる。さっきまでアキラが着ていたものであるからとても暖かい。サイズもシャルロットが普段着ている物よりも大きい。
(なんだか、後ろからぎゅってされてるみたい)
言葉にできない幸福感を抱きつつ、アキラと紅茶を楽しんだ。
「あ、そろそろ時間だ。じゃあね、アキラ」
「クッキー、おいしかったよ。ありがとう、シャル」
「どういたしまして」
「それではアキラは席に戻ってください」
「あ、戻らないといけないんですね」
「そうだね。次はだれなのか楽しみに待っててよ」
「わかりました」
「さて、続きましてエントリーナンバー二番「だめだぞ。それ以上は」」
「なっ!?」
「私を抜きにしてこいつを弄ろうなど」
「「「C.C.(さん)っ!?」」」
「どうしてこちらにっ!?」
「決まっているだろう? アキラ、お前を弄りに来たのだ」
「それでもタイミングよすぎでしょ、あんたっ!」
「当たり前だ。わかるからな」
「え? なになに? どうかしたの?」
奥から、出演者が四人が。シャルロット、ラウラ、楯無、ユキネだ。
「「「「えぇっ!」」」」
「お前たちもか」
「ご無沙汰してます、C.C.さん」
「ユキネか。久しいな」
「な、何しにっ!?」
「ど、どちらさまかしら?」
「私か? 私はC.C.だ。差し詰め魔女といったところだ」
「は、はぁ」
「会長、気にしたら負けです。たぶん、考えたら余計混乱しますよ」
「わ、わかったわ・・・」
「アキラ、ピザを作ってくれ」
「えぇ、急すぎて場所も食材も」
「お前ならどうにかなるだろう?ほら、行くぞ?」
アキラ腕に絡まり、急かす。
「「「あぁっ!?」」」
「ん? どうしたお前たち? まさか、こんなこともできないのか?」
そう、まだ少女たちはこんなことはできてないのだ。それも奥手というか、なんというか。C.C.が大胆すぎるというが、なんというか。
「僕ならどうにかなるって、そんなめちゃくちゃな・・・」
「ならないのか?」
C.C.はさらにアキラに体を寄せる。
「まぁ、近くで確保してましたけど・・・」
「ほらな?」
「ちょ、ちょっとC.C.、今アキラを連れて行かれるのは・・・」
「今回はライやカレンのお願いでもダメだ。私としては死活問題だ」
「確かに君からしたら死活問題かもしれないけど・・・」
「校内に部外者がいるのは許せないですね」
「おや、それがアキラの育て親に対するセリフか?」
「えぇっ!?」
「あ、そういえば会長には言ってませんでしたっけ?」
「い、言われてないわよっ!?」
「だからかぁ」
そんな平和な日々が続けばいいなと、こんな日々が壊されることはないと、そう思っていた。
『ほら、そろそろ起きなさい。アキラ』
懐かしい声がする。今はもう聞くことのない、懐かしい聲。同じ名前でも、同じ思い出を持っている人は一人としていない。だから、そんな懐かしい思い出だと涙が伝う。
「どうした?」
「昔はこう、集まってわちゃわちゃするのが好きで、よく家族総出で出かけたりしていたからね」
『起きなさいって、お父さんが起きちゃうよ?』
(今起きます)
だんだん意識が遠のいていく。もう朝だ・・・。
「おい、どうしたアキラっ!? 大丈夫かっ!?」
「え?」
起きると日が昇り切っており、刀が濡れていた。
「あれ?」
目尻が濡れている。
「僕は・・・泣いてたの?」
「そうだよ。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫。ここにきて、初めてまともな夢を見た気がするよ」
「そ、そうか・・・」
「うん。・・・さ、行こうか」
今日も学園生活は続く。
さて、うちはアニメ本編を主軸としているので進まないときはなかなか進みません。というわけで、どういう風に変わるか想像できるぞ?
次回もよろしくお願いいたします。