「アキラ、お前は無事生還したところだしさ。みんなで何かしないかって話をしててさ」
「何かって?」
「重きを置くのはお前の生還祝いって話らしいんだ」
「えぇっ!? そんなことにお金を割かなくてもいいのに・・・」
「だめだ。そうでもしないとお前、遠慮しっぱなしじゃないか」
「そんなことないのに・・・」
「で、それで今日の放課後、ここに来てくれってさ」
「わ、わかった・・・」
紙にはあの夢で見た場所ではなく、食堂の一角だった。
「「「「「「「「「「「「アキラ、おかえりっ!」」」」」」」」」」」」
パァンっ!
クラッカーの音が響き、アキラに大量の紙吹雪がかかる。
「あ、ありがとう。で、でも別にそんなに生死をさまよったわけじゃないし」
「いいのっ! 異世界の時ですらアキラの生還祝い、してなかったんだから」
(異世界・・・か)
アキラがKMFに乗って戦ったあの戦闘は異世界でのことと認識されているようであり、それはシャルロットだけに留まらず、全員がそろって同じ見解らしい。
「今日のために料理長たちに無理言って作ってもらったんだ」
「ら、ライさんまで乗り気だったんですか・・・」
「当り前じゃないか」
「そうですよぉ、生徒の皆さんだけでなく、私たちも心配だったんですからねぇ」
「ご迷惑をおかけしました」
「生きていればそれでいいじゃないか。な、みんな」
一夏の一声にみんながうなづく。アキラは知らぬ間に、みんなにとってかけがえのない人になってしまっていたようだ。
(これは・・・参ったな・・・)
ずっと死にたくて、ずっと両親の元に行きたくて、そう思って戦場にも出てた。そう思って死にやすいところを自ら志願していった。それはKMF戦の時も変わらない。だけど・・・。
(だけどみんな、僕のことを心配している。大切に思ってくれている)
この状態で両親の後を追うことは、今のアキラにはできない。
食事中、みんなが笑っていられる、その光景を見ていた。主役でありながらも、周りのことが気になって気になってしょうがない。だが、みんなが死に急いでいた僕を祝うという、ただそれだけの席なのに、笑顔が絶えない。
「みんな、ありがとう」
ちゃんと、笑えているだろうか。ぐちゃぐちゃの笑顔になっていないだろうか。みんなにちゃんと、今の僕の気持ちが精いっぱいの気持ちが、伝わっているだろうか。
そんなアキラを、誰一人として不思議な視線を送る者はいなかった。優しい笑顔で、優しい目を向ける。
「何言ってんだよ、そんな顔して」
「そうそう。一人だけ感傷に浸っちゃってさ」
「まったく、お前らしくないぞ」
「らしくないわね。もっとシャキシャキしなさいよ」
「今回は鈴さんと同意見ですわね」
「そんなみっともない顔をしなさんな」
「そうそう。アキラだから、みんなそばにいてくれるんだから」
「アキラじゃない別の誰かだったら、こうはならなかったかもしれないわね」
「そうだな。やはり、お前だからなのだろうな」
「そうだと思いますよぉ」
十人十色、それぞれ違う言葉、違う意見。でも、十人十色でも、その言葉に秘められているであろう思いは同じだった。
「あ、そうだ。アキラはお酒平気なの?」
「僕はお酒は飲めないですね。過去に一度、同席せざるを得ない状況があったのですが、一口でかなり酔ってしまいました。その時の記憶は今でもはっきりしないです」
「あ、ライもそんな感じだったわね」
「僕と一緒だ。だからお酒は・・・」
その席にはワインが一本。すでに開いていて、すでにグラスに注がれた後だった。そしてその液体はアキラが飲んでいる液体に酷似している。
「あれ・・・?」
「アキラ?」
時に、お酒に弱く、すぐによってしまう人間がいることをご存じだろうか。
「心配せずとも大丈夫だ。問題はない」
目がトロンととろけきり、いつものアキラよりもさらに高い色気を醸し出すように頬を染める。
「アキラ、口調変わったね」
「そうだな。いつもからは考えられないほどだ」
いつものアキラの一人称は僕で、さらに語尾はきつめではなく、優しさあふれるような口調だ。
「私はいつも通りだ。・・・それとも、どこかおかしいか?」
いつものアキラからは考えられないセリフだけでも違和感があるのに、行動もおかしくなってしまった。
「なぁっ!?」
「なぁ、ラウラ。私はどこかおかしいか?」
ラウラの視線を己の視線と合うように顎をあげさせた。その状態はまさに顎クイ。
「お、おかしくない、ぞ」
眼はトロンとして、頬が赤い。その上にいつもよりも大胆な行動と男らしい口調。ラウラは、このアキラを前に、確実に堕ちた。
「そうだろう?」
顔がとろけきり、腰の抜けたラウラをよそに、一人満足そうに笑う。
「ライ・・・まさかこれって・・・」
「あぁ、思ってる通りだよ。アキラは酔っちゃったんだ」
「「「「「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」」」」」
「え、お兄ちゃん、お酒そんなにだめなの?」
「うそでしょ? アキラってそんなにお酒弱いの?」
「うん。たぶん二日酔いコースだね」
「アキラ。お前ってお酒駄目だったんだな」
「私が飲食できぬものなどないぞ? それにだ」
酔った人間はたちが悪い。特にライの血を引いているアキラは酔ったときは見境がない。
「こんなにみんなが祝ってくれているんだ。主役がいないのも変な話だろう? なぁ、鈴音」
鈴音を腰から抱き寄せ、そんなセリフを投げかける。
「そ、そうね・・・」
威圧はない。ただただ甘く、とろけるような響きで語り掛けられる。どんな女性でも、疎いか男嫌いでなければ今のアキラに詰め寄られて堕ちない女性はいないだろう。・・・もしかしたら男でも堕とせるかもしれない。
「な、なぁ、アキラ、少し夜風に当たってこようぜ」
「そうだな。私も少し疲れてしまった、少し休憩にしようか」
虚ろな瞳のままアキラはこの状況を打開すべく動いた一夏とその部屋を後にする。アキラに引っ掻き回された後の状態は本当に悲惨で、食器等は無事なのだが人が無事じゃない。腰が砕けてしまって立ち上がれない人が。
「アキラ・・・君って子は・・・」
「すまない。まさかこんなことになるとは・・・」
ワインを開けたのは千冬だ。まさかこんなことになるとは思ってもみなかったのだ。
「僕も、まさかここまでたちが悪かったとは・・・」
「お前もああなってしまうのか?」
「今はもうないですよ。昔はアキラみたいだったんでしょうけど」
「主に被害をくらったのは私だけですけどね」
隣でむすっとした顔のカレンが、ライのそばにいた。
「そんな顔しないで、ね?」
「わかった。許してあげる」
二人の間に桃色の空気が香り始め、そちらもそちらで大変な事態になりそうなので、動ける生徒に腰の抜けた生徒を託し、ここはお開きとなった。
どうも、小説、全巻読んだ方がいいなと感じた白銀マークです。
いやね、この回のサブタイトル決まらなくて悩んで、次の回画いてたら 、次の回で詰まっちゃって・・・。最終巻読んで含ませた内容にするか、最終巻ほっとける書き方にするか悩んでねぇ。
どっちがいいんすかねぇ?
さて、この辺にして、次回もよろしくお願いします。
「安息は突然に」以降のお話について。
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小説読め、複線よこせよおらおら
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含ませなくていいから投稿あくしろよ