双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

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大切な人は、絶対に傷つく

 学園に着いたアキラは寮の自室に全力で走る。自室には両親から始めてもらった、刀が二振り。白い柄に、白い鞘、でも、刃の黒い刀。黒い柄に黒い鞘、でも刃の白い刀。それぞれを特注の刀用ベルトホルダーに。白と黒の番いの刀。ホルダーを制服のベルトに取り付けると、刀は互いに干渉することなくきれいに抜刀しやすい位置にぶら下がる。

 

(もう、抜くことはないと思ってた。誰も切らなくて済むだろうと思ってたのに・・・)

 

 KMFに乗っていても、最後に頼ることになるのは己の腕だった。どれだけ操縦がうまくなっても、どれだけ相手が弱くても、常にKMFだけで戦闘を行う場面は先代までだったらしく、現代はKMF以外の戦闘が増えたらしい。だから、最後には必ず、武器を使わなければなった。レイのときも、最後は、この刀で決着をつけた。

 

(物思いにふけってる場合じゃない)

 

 部屋を飛び出す。異常を知らせるアラームの代わりに響く、耳障りな笑い声を聞きながら。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 軍の特殊部隊が数名気絶している。

 

「どうして軍が・・・約束を破ったか?」

 

 軍属は必ずドックタグを持っている。特殊部隊は同じ部隊の仲間にタグを回収してもらうのがセオリーだが、回収する暇すらなかったと見える。手にしたドックタグの存在自体が軍が絡んでいることを示す。

 

(相手がわからないと聞いたが、軍が絡んでいるのは確定だな)

 

 裏で何が起こっているのかわからないが、確実に軍が絡んでいる。それだけは分かった、さらにその裏にあるものは今はまだ大きな靄がかかっている。

 

(・・・先を急ぐか)

 

 突如パァンと乾いた音。昔からよく聞いてきた、聞きなれた乾いた音。ここではもう聞くことないと思っていた、乾いた発砲音。自然とペースが上がる。誰かが打たれた。当たったかどうかは定かではないが、それでも、銃は誰かが意思をもって引き金を引くものだ。

 

「何事だっ!」

 

 自然と昔に戻る。状況は、最悪だ。特殊部隊の一名がよく見知った人を撃ち、その人を運んでいた。あのとき、守ってくれて、助けてくれて。何より、アキラのことを第一に考えてくれていた人が。

 

「っ!?」

 

 自然と力む。目の前のやつらが何をしたかは大体想像がつく。守れなかったことへのどうしようもない怒りと、そんな状況になる前にどうにかできなかった無力さを抱えながら刀を抜く。刃は血に染まっていないのに紅く、妖艶に瞳に移りこむ。それは血を吸い続けてきた、妖刀のように。

 

「・・・貴様らを殺してしまってはだめなことは分かっている。だが、今の私は己の殺意を治めれそうにない」

 

 自然と殺気が漏れる。それはごく少量のはずだが、何物にも耐えがたい、トラウマのような恐怖を生み出す。

 

「さて、聞こうか」

 

 瞳は紅くなる。左目が紅く、瞳孔は黒い鳥になる。そのギアスは、ギアスと呼ぶには些かおかしさが滲み出る。ドロドロしい、深い闇をもったギアス。

 

「アキラエル・S・ブリタニアが命じる。貴様たちに命令を下したのは誰だっ!」

 

 ギアスは起呪した。だが・・・()からなかった。ギアスの条件はモノによっていろいろあるが、条件を知っていないと対策はできない。どこから漏れているか、どうやって知ったかは定かではないが、アキラのギアスを無効化できる波長を流しているらしい。・・・たぶん、この鳴り響く笑い声だろう。しっかり波長に被せることができるぐらい、綺麗な波長でギアスを遮る。

 

「・・・だんまりか」

 

 驚きはしたものの、それを表に出せるほど、心は温まっていなかった。だから、相手に話を聞いてもらえなかっただけ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)、そう魅せる。

 

「私も時間がない。話さないのなら、私の怒りのはけ口になってもらう」

 

 うちの一人がライフルを向け、発砲。マガジン交換まで徹底的に発砲したにもかかわらず、アキラは、倒れていなかった。

 

「残念だったな。こんな玩具(おもちゃ)程度で死ぬと思ったか?」

 

 刃を一閃。血も噴き出すことなく、護衛をしていた構成員は奇麗に切れた。一刀一足の間合い。きれいに見切られた間合いはライフルなど問答無用でライフルごと切り捨てた。

 

「まだ腕は鈍っていない・・・か。残念だったな、腕が鈍っていれば、痛みを感じることができただろうに」

 

 血を振り払い、運んでいる構成員に刃を向ける。

 

「お前たちは、どう死にたい?」

 

 返答は、あった。無言でライフルをこちらに向ける。・・・わかっていた。何も答えるわけがない。だから切り伏せた。

 

「私の守りたいものを傷つけた罪、死して償え」

 

 刃は踊る。怪しく明かりを反射しながら、血と円舞曲(ワルツ)を踊る。だが、どれだけ踊っても、どれだけ血が舞っても、一向に気分は良くならなかった。それは、たぶん、きっと、失いそうなものが、目の前にあるからだろう。

 

「大丈夫かっ!? 刀奈っ!」

 

 ・・・わからないな、どうしてこんなに焦燥に駆られているのか。ただ、今だけは、この焦燥を無視できないでいた。

 

 

 

 

 

 どこか分からない、夕焼け空の綺麗な平原。金色の草の揺れる、現実味を感じられない平原。

 

「ここは・・・?」

 

 どれだけ見渡しても、何もなくて、ただ、綺麗な金草原と太陽があるだけの草原。

 

(行かなくちゃ)

 

 わからないが、自然と足は動いた。行かなければならない、あの太陽の先に。それは、誰にも言われたことはない、誰にも強要されていない。でも、行かなければならない。

 

「どこ行っている?」

 

 いつの間にか、腕を引かれていた。知ってる、あの大きくて、あたたかな背中を、私は知っている。でも、纏っている雰囲気も、口調も、仕草も知っている人のそれではなくて。

 

「あなたは、誰?」

 

「貴公の口からそのようなセリフを聞くことになるとは思ってもみなかった」

 

 腕を引いたまま、目の前に人物はうなっている。その悩む仕草は、よく知っている人と重なった。

 

「・・・その反応が来るということは奴はまだ話していなかったと、そういうことだな?」

 

「質問の回答になってないじゃない」

 

「質問の回答にはなっている。そもそも、貴公も薄々感ずいているのではないか?」

 

 太陽から遠ざかっているのにだんだん明るくなる視界の中で、腕引きの紳士は、確かにこういった。

 

「私は、もう一人のアキラだったものだ」

 

 そのセリフを最後に、まぶしくてもう、目を開くことはできなかった。

 

「あら・・・? 四十万君・・・じゃない・・・」

 

 次に目を開けば、ひどい顔をしたアキラがそこにいた。返り血で白い頬と制服を紅く染め、つらそうな顔でのぞき込むアキラがいた。でも、不思議と怖くなかった。それ以上に助けてくれたことに、彼が来てくれたことに安堵した。

 

「・・・撃たれちゃった」

 

 いつもと同じイントネーションで、いつも通りに話しているはずなのに、アキラの表情が一向にさえない。泣きそうなほどに、歪んでいる。

 

(・・・まったく。誰を呼び捨てにしてると思ってるのよ)

 

 どの歪んだ顔が、どうしようもなくうれしくて、どうしようもなく愛おしくて。無意識に動いた手が優しく、頬を撫でていく。

 

「あなたは・・・無事なのね?」

 

 頷いて、優しく手をなでてくれる。・・・温かい彼の手。それだけで、この優しくない現実も善いものだと思ってしまう。そんな私を、彼は優しく抱えてくれる。

 

「死ぬなっ! 死ぬな、刀奈っ!」

 

 大丈夫、私は死なないわ。この時、彼の肩から黒い鳥が飛び去って行く姿を、薄れゆく意識の中、ぼんやりと確認した。

 

(あぁ、温かい腕の中・・・)

 

 楯無は安心からか、ひどく強い眠気を感じ、そのまま意識を手放した。

メインヒロイン誰にする?

  • シャルロット・デュノアだろ
  • 更識楯無こそ正義
  • ラウラ・ボーデヴィッヒいいぞぉ
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