双璧の結晶と双璧が行くIS世界   作:白銀マーク

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世界は、忘れる。大切な誰かを

 学園の最下層。誰も知らない、学長ですら、概念として知っている範囲。それは、アキラが、この世界に歯車の一つとして組み込まれてしまったときに生まれてしまった、本来あるべき姿との齟齬を示すそのエリアに、奴は堂々と立っていた。

 

「道中で大切な人を一人、失ってしまったか」

 

「黙れ。貴様、この後、五体満足でこの部屋を後にできると思うなよ」

 

「そんなに怒らないでよ。そもそも、その道中をその子が守ってること自体計算外なんだから」

 

「なんだと?」

 

「そもそもさ、こんな場所知ったの、この学園のマップダウンロードしたときに秘匿情報としてかなり厳重な暗号化が施されてたのが発端だし。正確なマップ情報はここに来てから盗ったものだから」

 

「設計図にはない、特別な場所・・・か。それがきっと、私がここにいることによって起きた変化、なのだろうな」

 

「さて、じゃあ、ここに来たところで、取引を始めようか」

 

「・・・聞こう」

 

「まず話した通り、君に返すのはこの、君が大切だと思っていたすべてだ」

 

「貴様の望む見返りはなんだ?」

 

「君が存在した記憶。君のことを覚えているすべてを消し去る」

 

「っ!? それは私の存在そのものを否定するというのか!?」

 

「そう。君が居ると、すべての歯車が狂い、そしてその狂いすらも潤滑油にして回り始めてしまう。そのたびに、世界の自浄作用が働く。それが今の私であり、この学園の核であり、君という人間を否定し綴るものだ」

 

「・・・その言い草、神がいるとでも言うのか? 私ともあろうものが?」

 

「厳密には君と僕じゃ、その深みを探ったときに違いがしっかりあるけどね」

 

「そんなことぐらい知っている。馬鹿にしすぎると死が早まるだけだぞ?」

 

「そんなことは後回しさ。それより、どうするんだい?」

 

「・・・受け「だめ・・・」・・・刀奈」

 

「そんなのだめにきまってるじゃない」

 

「いいんです。これで、誰も巻き込まれないのなら」

 

「でも、それじゃあ、あなたが救われないじゃないっ!」

 

 傷を無視してしゃべる。アキラをここに縛ろうする、楯無たち仲間の居るこの学園に。

 

(だったら、だったら僕は)

 

「なら僕は、あなたを苦しめるかもしれないけど、それでも、この魔法を掛けようと思います」

 

 クローンに悟られないように、楯無のそばで、彼女だけが、クローンの行動がわかるような立ち位置で。彼女の眼を、しっかりと見据えて。

 

「今は、静かに眠っていてください。僕の決意が揺るがぬために。すべてが終わる、その時まで。」

 

 黒い鳥は羽ばたく。実はギアスの発動条件は二つある。一つは、アキラを認識していること。これは例え視界にアキラが居なくとも、その場にアキラがいると錯覚さえすれば条件はクリアされる。次に、声が届く状態であること。耳の鼓膜を揺らし、脳で言葉であったとして処理されれば条件はクリアされるが、耳が聞こえない人間や、耳栓のある場合は掛からない。更に意識があやふやであったり、聞き取れてもぼんやりとしか理解できなければかけきることができない。途中で命令した内容が捻じ曲がる可能性がある。

 

「し、じま・・・くん・・・」

 

 眠ったのを呼吸から確認して、静かに上着をかける。

 

「・・・ごめん」

 

「別れの挨拶は終わったかい?」

 

「問題ない。それより、早く起こしてやれ。私のギアスの発動条件は知っているだろう?」

 

「知っているとも」

 

 クローンは、その場を動かずに、ポケットからリモコンを取り出した。そして、リモコンの複数あるスイッチの中から一つ、選んで押し込んだ。

 

「これで彼らは目覚める。私は条件を満たしたよ」

 

「わかっている。黙っていろ」

 

「猶予はあげるよ。明日、迎えに上がるから、その時までに終わらせるんだよ」

 

 そのまま、クローンはその場から消えた。

 

「・・・逃げられたか」

 

「あ、あれ? アキラじゅないか」

 

「やぁみんな。体は大丈夫かい?」

 

「俺は大丈夫だ」

 

「わかった、みんなが起きたら連絡して。僕は全校放送とこのうるさい笑い声を治してくる」

 

 アキラは楯無を優しく抱え、最奥地を後にした。

 

「・・・結局、僕は弱いまんまだ」

 

 その後、楯無を救護し、保健室に贈り、笑い声も解消し、全校生徒は解放された。と、同時に、大切な、とある一人に関する記憶が全部なくなった。翌日には、謎に存在している空いた一席も部屋にあったものも、きれいさっぱりなくなった。そのとある一人がその場にいた証拠は何一つ、なくなった。

 

 

 

 

 

 その後、多くの人はいつもと何ら変わりない、他愛ない生活を送っている。でも、そんな多くの人とは違う、謎の悲しみや虚無感にさいなまれる人も、このぽっかり空いて空間の原因を知っていて、その人を血眼で探している人もいる。

 

「ねぇどうして・・・大切なことがあったはずなのに・・・。なのに、どうして何も思い出せないの?」

 

 そう、大事だったはずなのだ。とても大切で温かい日々だったはずなのだ。でも、大切な記憶が抜け落ちていて、それを思い出すことができない。

 

「どこなの、どこに行ったの、四十万君」

 

 空いた空間を埋めることのできるものを探す。

 

「どこ行ったんだよ、アキラ」

 

 空いた空間を示すことができるものを知っているのは、事前に対策を施された、とある男女だけだった。

 

 男が持つは、黒に金の刺繍に入ったシャツ、白を基調としたスーツ、黄色のマント。女が持つは、ある人物が着ていた、黒いベスト。懐かしさと悲しさを感じながら、いなくなった大切なたった一人を探す。

 

 ・・・時は、刻一刻と過ぎていった。

メインヒロイン誰にする?

  • シャルロット・デュノアだろ
  • 更識楯無こそ正義
  • ラウラ・ボーデヴィッヒいいぞぉ
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