リリー・マルレーンMS格納庫 ゲルググ
「……うぅん……くー……」
シーマMS部隊副隊長を務めているとは思えない童顔の女性士官、クレア・バートンは見た目通りの可愛らしい寝息を立てていた。
コッセルなどからは『脊髄反射で動いている』と
そんな彼女が見る夢は嫌いなピーマンか、虐殺に手を染めてしまったシーマに何の力になれない無力な自分に苦しむもの。
だが、今見ている夢は少し違っていた。
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宇宙世紀0078年
サイド3 軍事教練コロニー ザハト
ここではシーマ海兵隊など様々な海兵隊が開戦へ向けて出撃準備を行っていた。
連邦軍を倒すんだといきり立つ者、自分の命を失うことに恐怖して体を震わせる者、ただ時が来るのをじっと待つ者。様々な者がいた。
「ふふっ」
その中でクレアは口を閉じぎみに笑い声を漏らした。
(私の手柄はシーマ艦隊の手柄。シーマ艦隊の手柄はそれを指揮するシーマ様の手柄。よって私の手柄はシーマ様の手柄につながる。つまり私が手柄を立てれば立てるほどシーマ様は幸せに……)
尊敬する女性が喜ぶ姿を想像するクレア。しかしその想像は
「そうじゃねぇって言ってるだろ!!」
一人の男の怒声によって打ち切られた。
(誰よ!シーマ様の喜ぶ姿を脳裏に浮かべるという至福の時を邪魔するバカアホは!?)
声のした方を見上げるとそこには二階の手すりから彫りの深い男らしい顔立ちをした金髪の男が指示を出していた。
(あれはグラナダMAUゲール隊隊長、ゲール・ハント中佐……ん?)
視線の先にいる男が誰かに呼び掛けられ振り返る。振り返った先にいたのはクレアが姉のように慕う上司、シーマ・ガラハウだった。
シーマと少し話していただけで不機嫌そうな表情だったゲールの顔に笑みがこぼれる。そんなゲールに釣られるように楽しそうな笑顔を浮かべるシーマ。
「シーマ様……」
そんな二人を見てクレアは笑みをこぼした。
(もしジオンが勝って二人が結ばれたら……私も結婚式に呼ばれるんだろうなぁ。……シーマ様の花嫁姿、きっと綺麗なんだろうなぁ……)
「見てみたいなぁ……シーマ様のウェディングドレス姿」
純白の衣装に身を包む尊敬する上司を思い浮かべながら、クレアは楽しそうに談笑する二人を見ていた。
この時のクレアは知るよしもなかった。
視線の先にいる二人を引き裂くように世界が動いていくことを。
MAU(Marine Amphibious Unit) の略称。意味は海兵上陸戦闘部隊。
(参照『機動戦士ガンダム0083 REBELLION 08』20頁)
ここでは語りませんが『機動戦士ガンダム0083 REBELLION 12』はぜひ見て欲しいです。
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