茨の園 デラーズ・フリート旗艦『グワデン』。
豪華な造りと壁面に掲げられたジオンの軍旗、ギレンの胸像がある白亜の大ホールで地球圏最大のジオン軍残党『デラーズ・フリート』の
「「!?」」
扉の前に立つ一人の女性を見て固まっていた。
「デラーズ閣下。
さもそうするのが当たり前のように行う謎の女性にデラーズは軽く咳払いをする。
「う、うむ。待っておったぞ、シーマ・ガラハウ中佐。……ところで。貴公は本当に
尋ねるデラーズであったが、彼はモニター越しでシーマと直接会話をしている。
その時のシーマは背中まである艶やかな黒髪が印象の成熟した色気の漂う女性。しかし
「これは面白いことを聞かれますね、デラーズ閣下」
デラーズの疑問に謎の女性は微笑を浮かべる。
「シーマ艦隊とはシーマ・ガラハウという女性が指揮する艦隊。そして私はシーマ艦隊を指揮している。よって私がシーマ・ガラハウ。……これに何の疑問がありましょう?」
「……」
何かを言おうとしたデラーズの言葉を塞ぐように、謎の女性が口を開く。
「閣下。閣下は『とある名工が作った
「……!」
デラーズは悟った。目の前の女性が『シーマ艦隊を追い出された本物のシーマ・ガラハウ』と『シーマ艦隊を指揮する
「フフフ、フハハハハハハッ!」
自分がシーマ・ガラハウではないと見抜かれているにもかかわらず自分の重要性をアピールする謎の女性の豪胆さに、デラーズは気に入った。
「
口髭を触りながらデラーズは尋ねる。
「貴公が一年戦争後の3年間で得た一番の教訓。あれは何て言っていたかな?」
「『
「……ふふ、そうだったな」
デラーズは苦笑する。
大義だけでは部下たちを食わしてはいけない。
これはデラーズが『そなたもいつまでも
それをあたかも本人のように答えた目の前の赤髪の女性はあの場にいた。つまりシーマの側近だとデラーズは悟った。
「ではデラーズ閣下」
「うむ。星の屑の詳細はすぐに貴艦のリリー・マルレーンに届けさせる」
謎の女性はデラーズに一礼するとガトーに歩み寄った。
「お久しぶりですガトー少佐。カラマ・ポイント以来でしょうか?」
意味深な笑みを浮かべる謎の女性にガトーは嫌悪感を露にした。
シーマ艦隊がデラーズ・フリートの傘下に入ったと知った時のガトーは不快な感情しか持たなかった。
一方でガトーはシーマを『常勝の武士』とその実力を認めていた。
今目の前に立つ女性はシーマに成り代わった、シーマにも劣る偽者でしかなかった。
「……虎の威を借る狐め」
お前のような偽者とは話す舌を持たん。
ガトーは謎の女性を睨み付ける。だが目の前の女性は予想だにしない行動を取った。
「虎の……ふふ、あはははははは!」
腹を抱えて笑いだした。それは侮辱や本音をつかれて動揺するのをごまかす笑いではなく、楽しいことに純粋に笑う子どものようだった。
「……」
呆気にとられるガトーに謎の女性は目に溜まった涙をぬぐう。
「まさか少佐がここまでユニークな方だったとは……もっと早くお会いしたかったですね」
そう言って謎の女性は二人に「それでは、失礼致します」と一礼すると何事もなかったかのように退席した。
ガトーは知らなかった。シーマが座るソファーには白い虎の毛皮が掛けられていることを。謎の女性が身に纏った赤いジオンの軍服は本物のシーマの物であったことを。そして謎の女性が『虎の《威》を借る狐』を
と脳内で変換したことを。