シーマ・ガラハウに成り代わった女   作:筆先文十郎

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今回も大学時代の親友、柊竜真氏に一部書いていただきました。
(戦闘描写ってどうやったら書けるんですかねぇ汗)


シーマ・ガラハウに成り代わった女~シーマ(クレア)初陣後編~

 このままいけば茨の園を発見する可能性があったサラミス級2隻をリリー・マルレーンは離れたところに誘導することに成功。 この2隻を撃沈しても大丈夫と踏んだクレアは モビルスーツ部隊を率いて出陣した。

 コックピットの画面に上司(副官)であり共謀者のコッセルの顔が映し出される。

「お頭ぁ、大漁を!!」

「あいよっ!!」

 威勢よく応えるとクレアの乗るシーマ専用ゲルググMは片側カタパルトを滑走、一気に飛び出した。

 クレア率いるMS部隊に応戦するためサラミス級2隻から10機のジム改が出撃する。

「よしグルト、カナフ、ケレン、ザナヴは右を相手にしろ」

『お頭は?』

「私は左を相手する」

 グルトからの問いに直ぐ返答すると、クレアは軽く息を吸った。

「いいかお前たち!これは単なる迎撃戦ではない。デラーズ・フリートにシーマ艦隊の強さを見せつける戦いだ!圧倒的な力の差を見せつけ敵を一方的に蹂躙(じゅうりん)するんだよ‼」

 

『『『『ハッ!!』』』』

 

 宣言通りクレア機が左側のサラミスに、グルトを先頭とするゲルググMが右側に展開した。

 グルトらが敵機と応戦し始めたのを確認したクレアは前方を見る。

「さて、やりますか」

 こちらを捉えた敵機も攻撃を始めてきたのを見てクレアはニヤリと笑う。

「はっ!そんな豆鉄砲当たってたまるか!」

 自分に向けて放たれた銃弾をクレアは回避する。

 リリー・マルレーンと2隻のサラミスの間でいくつもの閃光が交錯する。

「さて、避けるばかりも飽きてきたからね。ヤらせてもらおうか」

 クレア機の手には他のゲルググMとは異なる大型の武器が握られていた。

 MRB-110式ビームライフルである。

 単機で相手をしようとするクレアに怒りを覚えたのか、展開したジム改が同時に迫った。

 手持ちのブルパップ・マシンガンを撃ちながら、クレア機との間を詰める。

「甘いわ!」

 クレアはすかさず敵機のマシンガンの弾丸をかわす。

 頭部のバルカンで牽制しつつ敵機の頭部から胸部にかけて撃ち、急加速し距離をとった。

「そいさっ!」

 モニター越しに映し出された照準をロックオン。電子音が鳴り、引き金を引いた。

 ビームライフルから発射された光弾はジム改の胴体を直撃、ジム改は爆散した。味方機の撃墜を目の当たりにした敵機はマシンガンを撃つ。だが

「見え見えなんだよ!」

 クレアは相手の動きが手に取るように分かっていた。

「いただきっ!」

 クレア機は転回しながらもう一機を捉え、撃ち落とした。

「まだまだこんなもんじゃないさね!」

 弾幕を掻い潜りつつ次々と敵機を撃ち落としていく。頭部のバルカンを撃ちながら、すかさずビームライフルを左手に持ち替えて、筒状の装備を起動させた。

 対応したジム改も咄嗟にマシンガンを捨て、抜こうとしたがわずかに遅かった。クレアのビームサーベルが胴体を突き刺したからだ。

 ビームサーベルを腰に戻しビームライフルを右手に持ち直す。

「さぁて……仕上げと行こうか」

 クレアはそう言って敵艦に向かう。

 これ以上クレア機を近づけまいとサラミスの副砲と残ったMS部隊の弾幕を張る。

「っ!」

 敵機のマシンガンがクレア機の肩を(かす)る。

 しかしクレアは落ち着ていた。

「やってくれたね!倍返しだよぉっ!!」

 そう言うとビームが一つ、二つとコックピットをを撃ち抜き撃墜した。

 拡散していくように敵機から膨れ上がる閃光、まるで筆で絵を描くような見事な戦いぶりであった。

(今日はシーマ・ガラハウ(シーマ様)としての初めての戦いだからね。血が(たぎ)って仕方がないね!!)

 クレアは高揚していた。身体全体で宇宙を舞うような感覚、傍から見たら蝶のように舞うという形容が相応しいだろうか。

 自身の高揚に堪能するのもつかの間、ミサイルランチャーやメガ粒子砲による砲撃を潜り抜けたクレア機は艦橋の着地した。

「最後ぉっ!」

 照準を合わせ引き金を引き、離脱した。

 ビームライフルで撃ち抜かれたサラミス級はたった一機のMSを前に宇宙の藻屑へと消えた。

 

  ★

 

 サラミス級 マクシミリアン ブリッジ

「せ、セバスチャン……轟沈!!」

「なんだ、あのパイロットは!!……ば、化け物か!?」

 マクシミリアンの艦長は目の前の光景と震えた声で報告する部下の言葉にただ大きく目を見開くことしかできなかった。

 一機のゲルググMがセバスチャンに向けて突進したかと思うとあっという間にMS部隊を撃破。肩など最小限の被弾でセバスチャンの艦橋に取りつくとビームライフルで撃ち抜いたのだ。

 サラミスは攻撃力では長射程・高火力を突き詰めた対艦決戦用の戦艦・マゼラン級に劣ってしまうが、上面・左右面にまんべんなくメガ粒子砲やミサイルランチャーを搭載し、どの方向からくる敵も迎撃できるように設計された優れた砲撃システムを持っている。その迎撃能力はベテラン兵でも容易に近づけないほどだ。しかしセバスチャンを宇宙の藻屑(もくず)に変えたMSはたった一機でMS部隊とその迎撃システムを突破した。

 

「や、奴は『赤い彗星』や『ソロモンの悪夢』と同じ技量を持っているというのか!?」

 

 単機のMSが戦艦を撃沈させる。これはシャア・アズナブルやアナベル・ガトーなど、エースパイロットと呼ばれる者たちにしかできないものだった。

 そのことを艦長を始めとする一年戦争を経験した者やジム改に乗るパイロットたちは身をもって知っている。だからこそ彼らの心をある感情が支配した。

 

 このパイロットが率いるMS部隊には敵わないという恐怖が。

 

 その恐怖から立ち直る時間を与えるほどクレア率いる海兵隊は甘くなかった。親とはぐれた野生の小鹿と化したMSを早々に片付けるとリリー・マルレーンの艦砲射撃でマクシミリアンは轟沈した。

 

 

 

 

 MSにかすり傷程度の損傷という被害でサラミス級2隻とMS10機を殲滅したという報告にデラーズは満足し、ガトーは渋々その実力を認めずにはいられなかった。

 




柊竜真氏から加筆の小説が届くまで何か書こうと思っても何も思いつかない状況に苦しむこと数日。
篭城する兵士の気持ちがわかる一週間でした。

一週間近く投稿していないにもかかわらず登録数が9月20日時点で230。うれしい反面投稿できなかったことに申し訳なさを感じる今現在です。

戦闘描写を柊竜真氏に頼らざる得なくまた投稿に間隔があくとは思いますが、引き続き読んでくださると幸いです。


【元ネタ】
カナフ、ケレン、ザナヴ
αシリーズ』及び『OGシリーズ』に登場するクストースたち。 鳥型のカナフ、魚型のケレン、獣型のザナヴから成り、その名前はヘブライ語でそれぞれ「翼」「角」「尾」を意味する。

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