シーマ・ガラハウに成り代わった女   作:筆先文十郎

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柊竜真氏に「退きのヒイラーってあれじゃあ部下から逃げ回っているから『退きのヒイラー』というタイトルになったと思われたかな?」と聞いたら肯定されたのでこんな話を書いてみました。

本来ならば戦闘シーンも書くべきなのですが、まだ下書きも書けていない状態なので二つに分けて投稿することにしました。
誠に勝手ながら温かい目で見ていただけると幸いです。


シーマ・ガラハウに成り代わった女~ルウム戦役(前編)~

 ルウム戦役。

 一年戦争序盤、宇宙世紀0079年1月15日から16日にかけてドズル・ザビを総大将とするジオン公国と当時中将だったヨハン・イブラヒム・レビルを総大将とする地球連邦軍との間で行われた宇宙戦である。

 この戦いは一週間戦争とも呼ばれるブリティッシュ作戦に次ぐ大規模宇宙戦闘であり、参加艦艇もブリティッシュ作戦を上回り、作戦規模では『ソロモンやア・バオア・クーと同等かそれ以上である』と議論されるほど。

 この戦いは当初の目的だったコロニー落としは達成できず、甚大な艦艇の損失・損傷から再び宇宙で同様の大規模作戦行動を取ることはできないほど消耗したものの、連邦宇宙軍に壊滅同然の大打撃を与えたジオン公国の勝利とされ以後の宇宙での優勢を揺るぎないものとした。

 

 またこの戦いは黒い三連星と呼ばれるガイア、マッシュ、オルテガがレビル中将を捕虜にし、当時中尉だったシャア・アズナブルが本作戦で5隻の戦艦を撃沈し二階級特進を果たし少佐に昇進するという後の世にも語り継がれる伝説となった戦いでもある。

 

 その中で。キシリア・ザビはドズル・ザビの援軍要請を承諾。部下のアサクラに援軍の派遣を命じるとアサクラはシーマMAUとゲールMAUからなる艦隊を先遣隊として派遣した。

 

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 シーマ艦隊所属ムサイ級ギラメル ブリッジ

「れろ……れろ、ちゅ……ちゅぱ……れろ……いやだ。白いのが垂れてきちゃった……もったいない。ちゅ、ちゅちゅ……れろ、ちゅぱ……ぷはぁ……美味しいぃ、このソフトクリーム! ……フガッ!?」

 後ろから艦長であり同期のドラント・ヒイラー中尉の拳骨が直撃し、ギラメルMS部隊を指揮するクレア・バートン少尉は持っていたソフトクリームに顔を(うず)めた。

「何すんのよ、ヒイラー! シーマ様の次に美しい美女の顔がソフトクリームまみれになったじゃないの!!」

「作戦行動中に、しかもMSで待機命令を出しているのにブリッジで、しかもソフトクリーム食べているお前が悪い!!」

 顔を真っ赤にさせて怒る実年齢よりも幼く見える女性士官に、可もなく不可もない顔立ちの細マッチョはピシャリと言い放つ。

「しょうがないじゃない! 私はシーマ様の下で働きたくて人事のトップを一週間寝不足による長期入院になるまで嫌がらせをして希望通りシーマ艦隊に配属されたのに、シーマ様直属じゃなくてアンタの所に配属されたのよ。これが食わずにいられるかってもんでしょうが!! ……キャンッ! 痛いぃぃぃ!!」

 ソフトクリームを拭って反論するクレアに、ヒイラーは無言で再び拳骨を食らわした。殴られた箇所を押さえるクレア。

「この辺りはデブリが多い上にミノフスキー粒子が濃くて敵の動きがわかりにくい。突然敵に挟み撃ちにされていたという事態になっても不思議じゃないんだ! アホなことを言っていないでいつでも出撃できるようにMSで待機していろ!」

「か、艦長!」

「なんだ?」

「前方10000の距離にサラミス級4。後方12000にマゼラン級1にサラミス級5が展開しております!!」

「……!?」

 衝撃的な報告でパニックになるブリッジ。その中でヒイラーは冷静に分析していた。

(どうやら連邦のレーダーはジオン(こちら)よりも優秀だったみたいだな。……先手を取られた。この距離では逃げることは難しいだろう。相手は10。こちらはシーマ様のリリー・マルレーンとムサイ級が3。進むにしろ立ち止まるにしろ下がるにしろ、このままでは挟撃をうけてしまう。この危機を脱する方法は……ッ!)

 ヒイラーにある考えが浮かぶ。自分と目の前でうずくまるクレアがいればこの壊滅必定の危機を勝利に変えられるかもしれない策を。

「急いでシーマ様に繋げ!」

 ヒイラーの命令に部下は迅速にリリー・マルレーンに通信を繋げる。

「シーマ様!」

『なんだ、ヒイラー!!』

 眉間にしわをよせて対策を考えて苛立っていたシーマが怒鳴りつける。そんなシーマに怯む様子もなくヒイラーは冷静に考え出した提案を伝える。

「シーマ様は前方の連邦軍を駆逐してください。シーマ様が前方を排除するまでの間、我が艦は後方の連邦軍を足止めします」

『……! わかった。ヒイラー、アンタは後方の連邦軍を足止めしな。すぐに駆けつける!』

 そう言うと通信は切れた。それを見届けるとヒイラーはすぐに命令を下す。

「これより我が艦は反転。後方の連邦軍を迎え撃つ。クレア! 今すぐお前は──」

「く、クレア少尉なら報告の時点で格納庫に向かわれました」

 

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 MS格納庫

「……」

 真剣な表情で格納庫の扉をくぐったクレアに

「大変なことになりましたねぇ。どうしましょうか、クレア少尉?」

 絶体絶命ともいえる圧倒的不利な状況に諦めたケレン・コルト軍曹が笑いながら話しかける。

「……」

 クレアは無言でケレンに近づくと

 

 ガチャッ! 

 

 ヘラヘラと笑う角刈りの体格のいい男の喉元に拳銃をつきつけた。

「しょ、少尉!?」

 クレアの突然の行動に体を小刻みに震わせ目を大きく見開くケレン。自分よりもはるかに大きい部下に拳銃を突きつけたまま、クレアは口を開く。

「この戦いはシーマ艦隊、そしてシーマ様の存亡がかかっている」

「……ッ!?」

 クレアの声に、拳銃を突きつけられているケレンだけでなく、同じMSパイロットのカナフ・ナックラー伍長やザナヴ・サーペ伍長、その場にいた整備士らが驚愕(きょうがく)する。その声はわたあめのように白くてフカフカな体毛の犬が発するような可愛らしい声ではなかったからだ。その声はシーマ艦隊に所属する者ならば誰もが知っている並外れたMS技術とカリスマを兼ね備える女傑、シーマ・ガラハウのものだったからだ。

「ヒイラーはシーマ様にギラメルだけで敵を足止めすると言った」

 シーマの声色でクレアは続ける。

「あいつは出来ないことは出来ないとキッパリという奴だ。そのあいつがギラメルだけで足止めすると自分から言った。つまりあいつはギラメルとMS部隊(われわれ)が一丸となればそれが可能だと考えている。そんな状況でその浮ついた態度で『大変なことになりましたねぇ。どうしましょうか、クレア少尉?』だと? ……ふざけたことを言うな!!」

「……ッ!?」

 落雷のような怒声にケレンだけでなくその場にいる者が体を震わせる。

「全員、よく聞け!!」

 大柄な部下から拳銃を下ろすとクレアはその場にいる全員の顔を見て言い放つ。

「これより我々は十死(じゅっし)零生(れいしょう)の戦場へ向かう。だがたとえ火の海にいても冷静に状況を見定める冷静さと戦術眼を持つヒイラー、ギラメルとMSを最高の状態に保つ整備、ギラメルを支える船員、そしてMS部隊とシーマ様の次に美人で強い私。これらが一丸となればシーマ艦隊壊滅が連邦艦隊壊滅に変わる。……気を引き締めてかかれ!!」

 

「「「ハッ! 了解であります、シーマさ……クレア少尉!!」」」

 

 部下たちの返事に満足した顔で愛機に乗り込む。

「クレア・バートン。ザク、出るッ!!」

 愛機と共に宇宙(ソラ)の漆黒を切り裂くクレアの顔は、先ほどまでブリッジでソフトクリームを食べていたとは思えないほど自信と厳格に包まれていた。

 

 

 

 

 




色々調べてみたのですが。キシリアの突撃起動軍がルウム戦役に参加したかってわからなかったのでシーマとゲール・ハントからなる海兵隊をルウムに向けて派遣しました(ルウムで負けたら他の兄弟に勝つどころか自分の首も危うくなると思ったので)。

現在色々と艦の動きなどの情報を集めている状況です。遅筆、申し訳ございません。

追記
クレアのソフトクリーム食べていた時とマジモードの落差が激しい・・・。

ヒイラー、フラグ回収早すぎ。

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