シーマ・ガラハウに成り代わった女   作:筆先文十郎

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以前柊竜真氏に「デラーズは(シーマがクレアに)刷り変わったことを知っているのか?」と聞かれたので書いてみました。

色々調べた上で書いてはいますが、もしかしたら間違えている所があるかもしれないので気づかれたら教えて頂けると幸いです。(毒ガスを撒いた日が違うとか)

あと星屑の女神で終わらせる予定だったのですがある方から続きは書かないのか?と希望されたのでこの話を書きました。この場を借りてお礼申し上げます。


シーマ・ガラハウに成り代わった女~暗躍の暗躍~

 リリー・マルレーンの通路で、赤い髪をショートヘアーにした童顔の女性士官、クレア・バートンは宇宙を見ていた。

「人は死ねば星になる、そう聞いたことがあるけど。私はどれほどの()を作ってしまったのだろうな……」

 

 

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 宇宙世紀0079 1月4日 サイド2、8バンチコロニー アイランド・イフィッシュ

「何だ……なんだよ、これは?」

 自身が操縦するザクⅠのコックピットで、クレアは目の前の光景に目を疑った。

 コロニーの老若男女が苦しみ、バタバタと糸が切れた人形のように崩れ落ちる姿を。

 

 先ほどまで生きていた住人が、死んだ。

 戦う術を持たない民間人を、殺した。

 罪のない無抵抗の人々を、殺害した。

 

「軍人とは力なき者を守る盾、そう考える私が……」

 

 殺した殺した殺した……。

 

 認めたくない事実に、クレアは顔を強張(こわば)らせた。その時だった。

『あ……あたしは、知らなかった……』

 尊敬する上司の聞いたことない声にクレアは我に返る。

「し、シーマ様?」

『毒ガスだなんて知らなかったんだよぉぉぉっ……!!』

「お気を確かに!シーマ様……シーマ様ぁぁぁっ!!」

 発狂するシーマにクレアは呼び掛けることしか出来なかった。

 

 

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(リリー・マルレーンに4年。今なおシーマ様が苦しまれているのをただ見ているしかない無能さを思い知らされて、はや4年。シーマ様のために何も出来ず、あるべき軍人からも遠ざかる。いつまで続くのか、この地獄は……)

 そんなことを考えながら、クレアはブリッジへと足を進めた。

 

 

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 トリントン基地に潜入したアナベル・ガトーが現地の残存部隊と共にガンダム試作2号機の奪取に成功。追撃するカレント小隊とまるでガトーらの動きを読んでいたかのように(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)出撃した特務部隊を撃破し、潜水艦と合流するため動いていた頃。

 

 コロニー暗礁宙域

 リリー・マルレーン ブリッジ

『貴公とはカラマ・ポイント以来であったな。シーマ・ガラハウ中佐』

 通信先のデラーズにシーマはフッと笑みを浮かべる。

 そんなシーマを頼もしそうに見ながらデラーズは続ける。

『一度は(たもと)を分かつことになりはしたが、元は同じ大義を掲げる同胞として貴公のシーマ艦隊にデラーズ・フリートへの参画を要請したい!』

「戦犯となって誰からも見向きもされなかった私たちに声をかけて貰えるとは……このシーマ、感動で声も出ません」

そう言って一礼した後、「ところで」とシーマは続ける。

「何やら閣下は地球で策動を始められたとか?」

『さすがに情報が早いな』

「いえいえ」

 シーマは持っていた扇子(せんす)を肩に置く。

「あのガトー少佐がオーストラリアに降り立ち、現地の残存部隊とともに何やら派手に始めた……そう小耳に挟みまして」

 その通りだ、とデラーズは続ける。

『今現在デラーズ・フリートにはある作戦が始動している。この作戦が成功した(あかつき)には必ずや散り散りになったスペースノイドの心は再び一つになるであろう』

 そう言うとデラーズは静かに、労わるようにシーマを見る。

『シーマ中佐。そなたもいつまでも蜻蛉(かげろう)のように宇宙をさまよっていても成り立つまい』

「蜻蛉ですか……確かに我々はB級戦犯の海兵隊として(うと)まれ、弾かれて。その中で多くのことを学びました」

 髪をかきあげながらシーマは続ける。

「その3年間で得た一番の教訓は。大義だけでは(・・・・・・)部下たちを(・・・・・)食わしては(・・・・・)いけない(・・・・)、ということです。デラーズ閣下」

『つまりは見返りが欲しいと……』

 デラーズは苦笑する。

『まあ、それもよかろう。この作戦が成功した暁には儂の出来うる限り望む物を用意させることにしよう』

「ふふっ、催促したようで申し訳ございません」

 そう言ってシーマは持っていた扇子をパンッと鳴らし左手に持ち換えると

「これよりシーマ艦隊はデラーズ・フリートの傘下に入ります。なんなりとご命令を!!」

 見事な敬礼を返した。

『貴公の参画、心から感謝する!共に事を成そうぞ!……(いばら)(その)で待つ!!』

 満足な顔で頷いたデラーズがそう言うと通信が切れた。

「やれやれ、グアデンと一戦(まじ)えるのかとヒヤヒヤしましたよ」

 そばで控えていたコッセルが画面が暗くなったのを確認してから「ふうっ」、と大きくため息をつく。

「なんだいそりゃ?」

 持っていた扇子を肩にかけ首をかしげるシーマにコッセルは続ける。

ガトーの件(・・・・・)ですぜ。情報を連邦(ヤツら)(リーク)したのがバレたのかと」

「そんなつまんないことを気にしていたのかい、コッセル!」

 シーマは持っていた扇子をトントンと叩く。

「ようやくシーマ艦隊にも運が向いてきたところなんだ!そんなつまんないことを気にしてやってきた幸運を喜ばないでどうする?」

「幸運?デラーズ・フリートへ編入されることがですかい?シーマ様」

「ああそうさ!」

 白い虎の毛皮が敷かれたソファーに腰を下ろし、シーマはバッと扇子を広げた。

「せいぜい利用させてもらうさ!!デラーズも……連邦も……。私たち(・・・)のためにねっ!!」

 左手を口元に寄せ高笑いするシーマは気づいていなかった。

「そうですね、シーマ様」

(ふふっ。()もこの状況を利用させてもらいますよ。私の望む世界を作るために)

 コッセルの反対側に立つ赤いショートヘアーの女性士官、クレア・バートンがほくそ笑んでいたことを。

 

 そのツケをシーマは支払わされることになる。数日後。クレアに軍人シーマ・ガラハウとしての全てを奪われ、リリー・マルレーンを追い出され、挙げ句の果てには月に軟禁されるという形で。

 




今作を書くにあたり夏元雅人氏の『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』を読みました。
感想は

シーマ様が上品にエロい!!

です。

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