シーマ・ガラハウに成り代わった女   作:筆先文十郎

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シーマ・ガラハウに成り代わった女~ゲルググ・M対ガンダム試作1号機③

 クルドらを引き連れ出撃したクレアは前方を見る。そこでは鼠一匹逃さないほどの包囲網を形成したシーマ艦隊が袋の鼠と化した連邦軍に襲い掛かる状況だった。

「ふふっ」

 防戦一方になる連邦軍に向けてニヤリと笑う。

「ふふっ、選り取り見取り……どちらから落とそうかね」

 クレアはアルビオンとナッシュビル、二つの艦を交互に見る。

「メインディッシュは後に取っておこうかしらね」

 クレアは狙いを定める。獲物を狩る野獣の目をしたクレアの視線の先、わずかになりつつも何とか抵抗を続けるMS部隊に守られているサラミス改級巡洋艦、ナッシュビルだった。

「まずは前菜よね?」

 舌なめずりをしたクレアは機体を走らせる。クレアの突撃に気づくナッシュビルMS部隊だが、すでにシーマ艦隊所属のMS部隊の迎撃に手いっぱいで対応出来ず、簡単に突破を許してしまう。

「ハハハッ!!」

 サラミス改級は全包囲に迎撃できる装備をしているとはいえ、一部がMSにより破壊されMS部隊の護衛がない状況。

 茨の園に接近しつつあったセバスチャン&マクシミリアンを迎撃した戦いで、一機で護衛MS部隊5機とサラミス改級を撃沈したクレアにとってナッシュビルの艦橋に取りつくのは朝飯前だった。

「これでお終い!」

 クレアがビームライフルの引き金を引くとナッシュビルは火だるまと化した後、爆散した。

「さて。メインディッシュといこうか!」

 ナッシュビルの撃沈を確認した後、クレアは先の奇襲で落とすことが出来なかったペガサス級強襲揚陸艦・アルビオンに狙いを定め突撃を開始する。

 シーマMS部隊が四方から襲い掛かる中。アルビオン所属MS部隊隊長、サウス・バニングはクレアの動きを察知し部下のチャック・キースを率いて迎撃する。しかし他のシーマ艦隊MSの攻撃に邪魔されてクレアの突破を許してしまう。

「ふふっ」

 クレアの目の前には先の戦いで打ち損ねたペガサス級強襲揚陸艦アルビオン。そしてクレアに狼狽(うろた)えるジムキャノンⅡ一機。

 ジムキャノンⅡはこれ以上クレアを近づけまいと弾幕を張る。そんな攻撃をクレアは鼻で笑う。

「そんな()ぬけた弾に殺される私じゃないのよ!」

 クレアはジムキャノンⅡの攻撃を容易く回避し間合いを詰めた。自分の攻撃を軽々回避し間合いに入った敵にジムキャノンⅡのパイロットは恐怖で思考を停止させてしまった。

「メインディッシュの引き立て役として、死にな!!」

 恐怖とパニックで動きを止めてしまったジムキャノンⅡに向けてクレアはビームサーベルを振り下ろそうとした。その時だった。

 

「ッ!?」

 

 クレアの本能がビームサーベルを振り下ろすよりも先に機体を後退させた。先ほどまでクレアがいた場所をビームが通過する。もしクレアが後退させていなければ直撃を受けていた。

「どこからだ!? ……ッ!!」

 ビームが飛んできた方向に目を凝らしたクレアが見た光景、それは長距離ビームライフルを搭載したブースターベッドを操作する、宇宙戦使用に換装されたガンダム試作1号機Fb(フル・バーニアン)だった。

「この前墜とし損ねたガンダムか」

 クレアはジムキャノンⅡから離れて適度な間合いを取ると、猛烈なスピードで包囲網を突破したブースターベッドを切り離し自分に向かってくる1号機に照準を合わせる。

「墜ちな!」

 普通のMSでは出すことのできない速さで向かう1号機に向かってクレアはビームライフルの引き金を引いた。凄まじい速度で迫る1号機。

 命中する。そう思った瞬間、1号機はその加速を維持したまま大きく跳ねて攻撃をかわした。

 

「なっ! バッタか!?」

 

 MSではあり得ない、バッタのような動きにクレアは大きく目を見開く。しかし驚く暇はなかった。1号機がすぐ目の前まで迫っていたからだ。

「くっ!」

 1号機の光刃を盾で受け流したクレアは周囲を見る。圧倒的な数で圧されていたはずのアルビオンのMS部隊は精気を取り戻し、シーマMS部隊を押し返そうとしていた。先ほどクレアが仕留めそこなったジムキャノンⅡもアルビオンの防衛に回り、迫り来るシーマMS部隊を迎撃していた。

 桁違いの機動性を駆使してビームライフルを撃つ1号機の攻撃を、クレアは持ち前の反射神経と盾で回避する。

「……ったく。忌々(いまいま)しい奴だよ、ガンダム!」

 ジムキャノンⅡ撃墜を邪魔したばかりか消沈しかけていた敵の士気を高揚させた1号機にクレアは目を怒らせる。

 ビームライフルを乱射させながら自身に突っ込む1号機にクレアも機体を走らせる。

「その並外れた機動力には舌を巻くけど、その機動力に攻撃の正確さがついてないんだよ!」

 1号機の攻撃を紙一重で(かわ)したクレアがビームサーベルを抜く。

「もらった!!」

 間合いを詰めたクレアはビームサーベルを振り下ろす。1号機はビームライフル以外何も持っていない。クレアの攻撃を防ぐ手段はなかった。

 

 ()った!! 

 

 クレアの顔に狂喜の笑みが浮かぶ。だがその笑みは一瞬で消え失せた。ビームライフルに搭載されたビームジュッテで防がれたからだ。

「チッ!」

 ビームサーベルを弾き、ライフルを撃とうとした1号機をクレアは蹴飛ばして回避する。

「一体何なんだよ、お前は!!」

 再び間合いを取ったクレアは目を血走らせサーベルからライフルに持ち替え再度攻撃をしようとする。その時だった。

「え?」

 視界の横に見えた爆発にクレアは言葉を失った。

 アルビオンとナッシュビルの退路を塞ぐ位置に展開していたシーマ艦隊所属の軍艦メラメルが、帰る母艦(ふね)を失ったナッシュビルMS部隊の捨て身の特攻によりメインエンジンに直撃を受けて爆散したのだ。

「おのれ……おのれ!!」

 アルビオンを撃墜することに気を取られ敵MSを撃ち落とさなかった自身の過失にクレアは下唇を噛む。

 連邦軍壊滅を目論んでいたクレアは戦場の鉄則を忘れていた。それは戦意ある敵には完全包囲しないことという鉄則を。

 窮鼠(きゅうそ)(ねこ)()む。どんなに弱い敵でも戦意が充分にある敵を追い詰めれば思わぬ力を発揮し一矢(いっし)(むく)いることもある。

 もしこの場に権謀術数のシーマが認めるクレアの同期でありシーマ艦隊2番艦ギラメル艦長、ドラント・ヒイラーがいれば完全包囲することなく一方向だけわざと空けさせていただろう。そうすれば敵は戦うことよりも逃げることを優先しやすくなり、その脇腹を突くことができる。

 完全殲滅を目論み敵に背水の陣を敷かせた緩みと敵MSを放置した油断。自身が招いた二つの失態により圧倒的戦力と心理的優位という優位性を無くさせた上、目標の撃沈を未だに出来ないばかりか貴重な戦力であり苦楽を共にした仲間を失った。

「シーマ様なら、シーマ様ならこのような失態は……!!」

 身体の奥底から湧き上がる抑えることの出来ない怒りに、クレアは目を大きく見開き歯を喰いしばる。

『お頭、そろそろ弾薬の残りが!』

『こちらの損害も大きくなっています。撤退を!』

「ふざけるな!!」

 クルトとカナフの進言を跳ね除ける。

「こんなに優位な状況で撃沈出来なかったなんて……許せるものか!! 全軍──」

 突撃しろ!! そう命令を発しようとしたのを

 

『クレア!!』

 

 お頭と呼ばず部下を叱りつける、モニターに映るコッセルの険しい顔と怒声が(さえぎ)った。

 その怒声にクレアはハッと気づく。

 敵を誘き出した所を一気に叩くという作戦は破綻(はたん)し、メラメルの撃沈と消耗により味方の士気は激減。対する連邦軍は友軍のナッシュビルとそのMS部隊を失ったものの1号機の参戦とナッシュビルMS部隊の捨て身の特攻により士気は向上。戦力は消耗しつつも戦うだけの力はまだ残されていた。

 このまま攻め続ければ殲滅は可能だがそれ以上に味方の戦力が(いちじる)しく損なわれるのは火を見るよりも明らかだった。

 クレアは決断した。

「撤退する! 殿(しんがり)は私とリリー・マルレーン!!」

 断腸の思いで命令を発すると追撃しようとした1号機を牽制(けんせい)しつつクレアは後退した。

 シーマ艦隊ほどではないが損傷が激しいアルビオン及びアルビオンMS部隊も撤退するシーマ艦隊を追撃することはなかった。

「おのれアルビオン! ……おのれガンダム試作1号機!」

 クレアを回収するとシーマ艦隊は瞬く間に暗黒宙域に姿を消した。




投稿が遅れて本当に申し訳ございません。
遅れた理由は他に書いていたというのもありますが最大の理由は途中まで書いていたのを誤って消してしまい、完全にやる気を失っていました。

最低でも一か月に一度くらいのペースで書けるように頑張ってみますので、読んでくださる方がいらっしゃいましたら温かい目で見て下さると幸いです。
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