コウ・ウラキを離れさせたケリィ・レズナーはシーマ艦隊の三人を倉庫に案内していた。
「シーマ様。そこは段差になっていますのでお気をつけください」
「ありがとう、ザケルフ」
小太りな男の言葉にシーマ艦隊を率いる女傑、シーマ・ガラハウは礼を言う。
「ほう、これが例の!」
手すりに手を置いたシーマが眼前の機体に感嘆の声を漏らす。
「これは上物だ。まさかこんなものが眠っていたとはね」
浅黒い
「MA06
シーマ艦隊の情報工作員、デキフサ・ザケルフが補足するように呟く。
「ところで。これは動くんですかい?」
挑発するように尋ねるクルトの問いに、ケリィは気にする様子もなく淡々と答える。
「機体は九分九厘完成している。片腕でも動かせるようにコックピット周辺も改修済みだ」
「ふ~ん、なるほどね」
「ッ!?」
考えるよりも先に、ケリィの身体はとっさにシーマの方へ振り向き身構えた。なぜ自分がそうしたかわからなかった。しかし戦士としての本能がいち早く危機に反応した。そしてそれは正解だったことを悟る。なぜならば
「ではこの機体はありがたく頂戴するよ。シーマ艦隊のためにね」
いつの間にか左手に銃を握ったシーマが見下すような笑みで銃口を向けていたからだ。シーマの予想外の行動にケリィだけでなく、シーマの後ろに立つクルトとザケルフも目を大きく見開いたまま固まっていた。
「何のつもりだッ!?」
目をカッと開き、怒声を上げるケリィに、クルトとザケルフは無意識に後ずさる。そんな怒声に怯むことなくシーマは続ける。
「私の目的は最初から
「……なん、だとッ!!」
パイロットとして終わった。
ケリィ・レズナーという男の全てを否定したシーマの言葉にケリィは激昂した。
「俺はまだ終わっちゃいない!!」
倉庫が震えるのではないかと思うほど怒鳴る。しかし今すぐにでも飛びかかりそうな衝動を抑えて、その場に踏みとどまり、ケリィはシーマを睨み付けた。
不用意に動けば
パイロットとしてのカンが目の前の女から漂うオーラを感じ取り、怒りに燃える肉体を制止させた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
倉庫内が無音に包まれる。永遠にも思えた無音を打ち破ったのは
「……ふふふ、ふははははははっっっ!!」
無邪気な子どものように笑うシーマの笑い声だった。シーマはケリィに向けていた銃を隠していたホルダーへ戻す。
「どういうつもりだ?」
シーマから殺気が消えたことに戸惑いつつも、ケリィは怒りの炎を瞳に宿したまま尋ねる。
「ふふっ、ごめんなさい」
後ろに立つ男二人が怯むほど強烈な視線に動じることなくシーマは答える。
「正直に言うと。実は大尉を殺して
「「ッ!?」」
シーマの発言にクルトとザケルフが体をビクッ! と震わせ、固まる。
「……」
無言で自分を見るケリィにシーマは続ける。
「私達は明日出航する。その時に大尉とヴァル・ヴァロを出迎える。期待してるわよ」
そう言うとシーマの名前を騙った赤い髪の女は部下を引き連れ倉庫を後にした。
「明日までに……か」
一人になった倉庫で、ケリィは焦燥の顔で未だ動かない愛機に視線を移した。
次回はヒイラーがザケルフ達の報告を聞いてブチキレる話を投稿する予定です。