シーマ・ガラハウに成り代わった女   作:筆先文十郎

39 / 45
密命

 ドラント・ヒイラー。

 シーマ艦隊第2番艦・ギラメルの艦長でありクレアと士官学校時代を共に過ごした旧知の間柄である。

 シーマ・ガラハウの部下でも一、二位を争うほどの頭脳と胆力を持ち、シーマを崇拝するあまりその他の人物には辛口のクレアが『たとえ火の海にいても冷静に状況を見定める冷静さと戦術眼を持つ』と評価するほどである。

 その知将が

「あのクレア(バカ)が!!」

 ホテルに戻ったクレアの護衛役のクルトと、ケリィ・レズナーとのパイプ役を務める諜報工作員・デフキサ・ザケルフの報告に激昂していた。

「大尉、落ち着いて下さい。いくら盗聴されないよう万全の注意を払っているといっても第三者の耳に届く恐れもあります」

「……すまなかった」

 自分を(いさ)めるザケルフの言葉に、ヒイラーは軽く息を吸って荒ぶった精神を落ち着かせる。

「しかし、それほど恐れることでしょうか?」

「恐れることに決まっているだろう」

 クルトの問いにヒイラーは怒鳴りたい気持ちを抑えて説明する。

「まずクレア(あのバカ)がシーマ様ではないと必ず気づく人間は最低でも3人いる。一人はデラーズ・フリートへの参画にシーマ様とモニター越しで要請したエギーユ・デラーズ。二人目はカラマ・ポイントでシーマ様と刃を交えたアナベル・ガトー。そして最後は我々と裏取引をしているアナハイムのオサリバンだ」

「……」

「……」

「デラーズはシーマ艦隊の戦力を計算している。だからクレア(あいつ)の正体を暴いてシーマ艦隊の戦力を削ぐような真似はしない」

「……」

「……」

「ガトーも同様だ。あいつは何だかんだいってシーマ艦隊がいなければ星の屑が成功しないことは理解しているはず。心の底ではシーマ艦隊を軽蔑し嫌悪しようとも。そして崇拝するデラーズに追従するはずだからデラーズ同様バラすことはないだろう」

「……」

「……」

「オサリバンの場合。クレア(あいつ)の正体をバラせば『自分がシーマ艦隊とつながりがある』と自ら暴露するようなもの。追い込まれて交換条件として突き付けられない限りその危険性はないだろう。だがあの男、ケリィ・レズナーは違う!」

 そう言って怒りを抑えて冷静に努めていたヒイラーの顔が憤怒(ふんぬ)(ゆが)む。

「奴の場合はクレア(あいつ)の正体をバラしたところで失うものもない! デラーズやガトーのように野望を達成する駒が無くなるわけでもなく、オサリバンのように自身の身を危うくするわけでもない! むしろ連邦に売ればシーマ艦隊やデラーズ・フリートを揺るがす情報(ネタ)として身の安全を保証するだけの価値はある!」

 そう言ってヒイラーはクルトの方へ体を向ける。

「クルト」

 名前を呼ばれ、クルトは「ハッ!」と真剣な顔で自分を見るヒイラーの瞳をじっと見る。

「お前はケリィ・レズナーを見張れ。もしあの男がこの事をバラすようなら」

「バラすようなら?」

 一つ間をおいて、ヒイラーは決して大きくないが力強い声で言った。

「問答無用で殺せ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。