デラーズ紛争が終結して数年後。フォン・ブラウン市郊外にある軽食&居酒屋『リリー・マルレーン』は書き入れ時ということもあり賑わっていた。
「ショーン!ディル!……オムライス3人前とミートスパゲッティ2人前、焼き魚定食2人前、 いちごとぶどうとバナナ のシャーベット3人前ずつ、あとコーヒーブレンド、さっさと作っておしまい!」
「「が、合点で!……シーマ様!」」
「はぁ!?シーマ店長と呼べ!!」
『シーマ様』と呼ばれた女店主、シーマ・ガラハウさんは双子の兄弟を怒鳴り付ける。威勢良く双子の兄弟に指示を出す様は飲食店の店主というより「宇宙海賊の女ボス」と言う表現がしっくりくる。
30代後半とは思えない顔立ちに緑がかった黒髪に男の欲情を誘うボン、キュッ、ボンの肉体。
デラーズ紛争でデラーズ艦隊のアクシズ合流を援護するため戦死したシーマ・ガラハウと同じ名前。
そしてその英雄の旗艦と同じ『リリー・マルレーン』という店名が話題となり郊外でありながら賑わいを見せていた。
そんなこともあり『実は本物のシーマ・ガラハウだったりして』という噂は絶えない。しかしエギーユ・デラーズやアナベル・ガトーなど彼女を知る者達が
シーマ・ガラハウはデラーズ紛争で味方の撤退を援護するため戦死した。
と公言しているので『リリー・マルレーン』の女店主を本気で、宇宙海賊としてその名を轟かせたシーマ艦隊の長にしてエースパイロット、シーマ・ガラハウと思う者はいない。
シーマ・ガラハウさん本人も「『リリー・マルレーン』という名前も私と同姓同名の英雄、『シーマ・ガラハウ』の艦から拝借しただけ」と自分が英雄シーマ・ガラハウではないと否定している。
「ふっ、相変わらず騒がしいな。ラトーラにチョコレートケーキを買ってこようと思っていたんだが……今日は無理そうだな」
フォン・ブラウンでジャンク屋を営む片腕の男は料理を作り続ける双子の兄弟とレジ打ち、片付け、接客などを「忙しい!本当に忙しいよ、まったく!」と文句をいいながらどこか楽しそうに仕事をこなす女店主を楽しそうに見る。
「見ていて飽きないな、ここは」
ジャンク屋の親父は少し冷めたコーヒーに口をつけた。
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リリー・マルレーンの営業時間が終わり、全ての作業を終えたシーマ・ガラハウさんは軽い食事とシャワーを浴びた後、ベッドに体を預けた。
彼女は眠るのが嫌いだった。寝れば決まってある出来事が悪夢となって思い出されるからだ。しかしデラーズ紛争でコロニーが北米に落ちたのを境に、その悪夢は見なくなった。
まるで自分を慕う魂がその悪夢と共に昇天したかのように。
ありがとう。
シーマはまぶたの裏に映るコッセルや海兵隊、中央に立つ少女のような女性士官、クレア・バートンに感謝の言葉を述べるとそのまま静かに眠りについた。
いつか帰ってくるであろう、部下達を迎えるために。
ガンダム開発計画を無かったことにしている連邦軍。デラーズ紛争があったと公言するデラーズたち。
書き終わって気づいた矛盾点。どうしよう(-_-;)
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手元が狂って同じ話が二話続けて投稿されてました。お詫び申し上げます。