月 フォン・ブラウン市
『地球連邦軍、並びにジオン公国の戦士に
「……何だ、いったい?」、「……デラーズ・フリート?」、「……何が始まるの?」
突然映し出されたテレビの映像に、困惑の声を漏らしながら立ち止まる人々と同様に
「……」
眉間を中心に傷跡があり、右の口元が引きつったように
ゲール・ハント。
元ジオン公国軍の軍人で、恋人のシーマ・ガラハウ同様にB級戦犯として追われる、グラナダMAUゲール隊隊長を任された男である。
『このガンダムは核攻撃を目的として開発されたものである!! 南極条約違反のこの機体が密かに開発された事実をもってしても、呪わしき連邦の悪意を否定出来得る者がおろうか!?
今、
「……」
ゲールは画面のデラーズに一瞬も目を外すことなく耳を傾ける。
『
デラーズの熱を帯びた演説は終わり、テレビはキャスターがすぐに『デラーズ・フリートと名乗るテロリスト集団に電波を乗っ取られた』ことへの謝罪の映像へと変わる。そんなキャスターの謝罪を余所に、演説に耳を傾けていた者達の間でデラーズ・フリートの宣戦布告に対する論議があちこちで起こっていた。
「……」
そんな中、ゲールは聴衆から離れるようにその場を後にする。そして
「エギーユ・デラーズ!!」
自分の顔が自分以外の人間に見られる心配のない自宅に戻った瞬間、ゲールは顔を大きく歪ませた。 演説を聴いた彼の心の中ではデラーズへの嫌悪感、絶望、拒絶感、相容れない感覚、怒り……抑えることができない、ありとあらゆる黒い感情が駆け巡った。
「シュヴェリーン……カイト……ツィーラン……マンシュタイン……ザイドリッツ……」
自分と苦楽を共にした部下達の顔が一人一人ゲールの頭によぎる。
「俺はあいつらに何かしてやれたか? 部下達を全員戦死させてしまった俺は……あいつらが誇れるようないい隊長だったのか?」
ゲールは鏡に映る自分に問いつめる。
「あいつらは何のために戦い……そして死んでいった? おめおめと自分だけが生き残ってしまった俺を……全員戦死させてしまった無能な
どれくらい時間が経っただろうか。鏡に映る自分自身を睨み付けていたゲールはかねてから考えていた贖罪を選ぶ決断をすると身支度を整え、ある場所へと向かって歩き始めた。
数日後。地球連邦政府からB級戦犯として指名手配された元ジオン公国軍ゲール・ハントが当局に出頭し、死刑判決が下されるというニュースがフォン・ブラウン市を駆け巡った。
ガンダム試作2号機に関するデラーズの台詞が抜けていたことに気づき、訂正しました。すでに既読された読者の皆様。本当に申し訳ありません。