出立する前日、荷物を纏めて廊下に出た瞬間に違和感に気付いた。
消火栓の赤色灯が消えていた。
普通であれば常に点灯していて、ポンプ起動時には点滅する仕組みになっている。
昨日寝る前には間違いなく点灯していた。実は彼方の世界では消防設備士として働いていたために、火災報知器や消火器や誘導灯や避難器具等の消防設備と言われる器具には、癖で目が行ってしまうのだ。
赤色灯の球が切れている可能性はある。だが一ヶ所だけでなく他の消火栓の物まで消えているとなれば、消火栓ポンプの電源が落ちているとしか考えられない。
点検しているならば問題ないが今は朝の五時、普通そんな時間に点検はあり得ない。嫌な汗が背中を流れた。
執務室に駆け込むと、既に正克が書類仕事に手を出していた。
「兄ちゃん?何かあった?」
「今日消防設備の点検なんてしてないよな?」
「予定にはないけど」
「消火栓ポンプ室ってどこだ?電源落ちてないか?」
「……大淀、明石と夕張に繋いでくれ」
「はい!」
『はい、明石ですけど』
「消火栓ポンプ室を確認してくれ」
『消火栓ポンプですね?了解しました』
『夕張です!』
「前に遊びで使ってたウォーターバズーカと巨大水鉄砲ってまだある?」
『あります』
「人選は任せるから使えるようにして待機して」
『了解です!』
「大淀、警戒体制に移行、不審者がいないか探し出せ」
「俺と叢雲も捜索に加わろう」
「お願いする」
『提督!消火栓ポンプの電源が入りません!』
ジリリリリリリリリリ!!
非常ベルが鳴り出したのは明石からの報告とほぼ同時だった。
「場所は!?」
「工廠と入渠施設で同時に発生しました!」
「非常警報発令!他の場所も狙われるかもしれない、厳戒体制!」
「はぁ?抜き打ちテスト?」
「舞鶴統括による不測の事態にしっかり対応出来るかのテストなんだ」
「火事は?」
「妖精さんが協力してるから」
「なんだ妖精さんか」
「はぁ!?火報が直せない?」
「火報?うん、間違って火災報知器の配線ある場所燃やしちゃったみたいで、妖精さんも専門外だからごめんなさいだって」
「工廠の消火栓脇の壁だよな?」
「うん」
「……工具持って来い」
あー、幹線燃えただけだからストレートジョイントだけで大丈夫そうね。
ん、断線が消えない?
感知器も熔けてるじゃねえか……廊下の感知器外して付けとこう。どーせ階段の感知器あるし警戒面積足りてるし。
「直った!?」
「ああ、とりあえず応急措置な。寄せ集めた電線使ってるから業者にちゃんと直して貰え。あと感知器も熔けてたからそこの廊下の取ってつけたぞ」
「あ、ありがとう?」
一月の平均睡眠時間三時間になるぐらいハードな現場をこなし、一週間徹夜したこともある。
学校の教室で感知器点検してるの見て、メッチャ楽そうとか思って気軽に入社したのが間違いだったよ。
建築関係はどこもブラック予備軍みたいなものだ……二度と建築関係の仕事には就かないと心に決めていた。
知人の職歴を参考にしています