迎えに来た船には丹波中将が乗っていた。
「本来ならばちゃんとした任命式やら辞令交付やらがあるんだが、お前は特殊な例だから気にするな。着任する鎮守府にも問題があるしな」
いつものガハハ笑いは無く、いたって真面目に説明をしてくれて辞令書と資料、そして一通の手紙を渡された。
鎮守府は地図に無い島に存在していて島民は居ない、物資や食料必需品は定期便で、施設は拡充済みだが希望があれば妖精さんと相談して改築増築は任せるとの事だ。
前任の熊谷提督は家族を人質にされて脅され悩み抜いた末に艦娘を犠牲にした。しかも、その家族すら実験台にされていて最後に生き残っていた筈の弟も実際は既に命を失っていたと発覚した。
この事実をしった日の深夜に自殺を図ったらしく、一命は取り留めたが精神病院へ入院となってしまった。
遺書には鎮守府全ての人間への感謝と謝罪、そして海軍上層部への謝罪と恨みと、新任となるであろう俺への願いが書かれていた。
見ず知らずの君にこんな事を頼むのも筋違いだろう。
ましてや手紙で等と失礼なのは重々承知しているが、恐らくこの手紙が君に届く頃私は口が聞けなくなっているだろう。
本当にすまないと思っている。
私の過ちにより多くの艦娘が鎮守府を去ってしまった。
残ってくれた艦娘が君に失礼な事を言い、行うかもしれない、どうか願わくば寛大な対応を、切に、切に願う。
そして可能ならばあの娘を救って欲しい。
鎮守府に所属していた艦娘は最大時で三十六名だったが、事件の影響や俺が着任する等の理由で移籍して、現在は十一名。
例の研究所に差し出されたのは二名、両名が他の娘が傷つくよりも自分がと立候補した。結果、実験台にされた挙げ句に材料として扱われた。
そう、俺達海軍特別海上機甲隊隊員達の移植された細胞、それどころか目や腕や足等も切りはずされて深海棲艦の物を移植されて実験に使われた。
その過程で出たパーツを継ぎ接ぎされたのが俺となる。
実験により欠損した部位には更に無理やり深海棲艦の余ったパーツを流用して……その過程で一名は耐えられずに轟沈、残った一名は鎮守府に送り返されたが、常に入渠していないと拒絶反応を起こす為にずっと身動きが取れなかったらしい。
そして残った艦娘の名は長門、轟沈した艦娘の情報は書かれていない。
長門は俺が艦娘をやっていた時に一番のお気に入りで、第一艦隊に常に入れていた。
考えてみれば艦これの初期艦も叢雲だし、色々と縁が有るのかもしれない。
その叢雲は難しい顔で考え込んでしまい、何か話しかけても生返事しか返さない。
一つだけ都合のいい考察があって、研究所で轟沈した艦娘は叢雲で、俺が止めを指した深海棲艦も叢雲、しかもドロップして記憶まで持っているなんて、そんな奇跡。
「貴方も被害者なのは分かっているわ。でもお願い。何でもするから、姉に、長門に体を返して!お願い」
「長門さんを助けて下さい。以前のような自信と威厳に満ち溢れた長門さんにもう一度会わせてください」
「長門さんは私達を庇って身を差し出したわ。私も出来る事なら何でもするわ。だから、長門さんを助けて下さい」
「しれえ、雪風は、沈みません!ずっとずっと、しれえの艦隊で頑張ります!だから!長門さんを助けて下さい!」
「長門は大事だ。長門無くしてはこの鎮守府は戦えぬ。我々の仲間をこれ以上奪わないでくれ。どうか長門のやつを助けてくれ」
そして目の前に並ぶ五人の艦娘、陸奥・酒匂・五十鈴・雪風・磯風が言葉は違えど同じ様に、長門に体を返してくれ、助けてくれと懇願される。
叢雲は黙っているが険しい顔で見ているし……
とても、ん?今何でもs……とかネタに走れるような空気では無い。
土下座されしがみつかれて返してくれと言われても、どうすればいいんだよ?助けてくれエラー娘……ぁぁ、こういう時に限って反応が無い、無理だよなぁ。
同じ船でゆかりさんの艤装もようやくメイン武装が修理されたのが届いたので、そちらの調整を船着き場でしているため此処には居ない。船の中からずっといじくり回してるんだけどそんなに時間かかるのか?
「とりあえず一度長門に会わせてくれ」
「む?提督か?すまないな無様な姿を見せた挙げ句にドックを一つ占領してしまっている。解体してくれて構わん……先代は何度頼んでもしてくれなかったんだ」
「長門!?馬鹿な事言わないで!っ、提督!!」
「分かってるから!しないから!睨むなよ陸奥」
南方棲姫の様な左腕
真っ赤な瞳
左側から白く変わり始めている髪
放っておけば今にも深海棲艦になってしまいそうな見た目と、相反した弱気な長門の様子。
エラー娘、頼むから助けてくれ。これは俺にはどうにも出来ない。本当に女神だと言うのなら……助けてくれたら神社作って奉るから。……お願いします。
『えー、この度はご迷惑お掛けして申し訳ありません。姉の杜撰な対応と後回しになってしまった事を御詫びすると共に、これより緊急メンテナンスにはいります!』
土下座の姿で現れた二代目エラー娘、捲し立てるように話し、突然俺も長門の脇に入渠させて、大量の妖精さんを召喚した。
そこ!引っ張るなって!分かった大人しく入るから!?危な!?飛んでくるんじゃない!
色んな方向から引っ張られるし引っ付かれるのでまるでガリバーのような気分だ。
いつの間にか猫をぶら下げたエラー娘が後ろに居て、他にも増えている?
『起きてられると大変だろ?』
『えー、結局姉さんも来たんですか?めんどくさがってたのに』
『まぁまぁ姉さん達、ちゃっちゃとやっちゃいましょ』
『神社、三姉妹でよろしくな?おりゃっ』
馬鹿な……三代目?エラー娘揃い踏みだと?……プスッ?……あれ?何かさされt…………ガクッ………………
起きると全てが終わっていた。