目を覚まして最初に飛び込んできたのは、陸奥がワンワン泣きながら長門に抱き付いている姿と、暖かい目で見守っている他の艦娘達の姿だった。
エラー娘達は居ない様だ。
あとから妖精さんに頼んで神社作らないとな。
御神木は桜がいいかな?
それとも周りを桜で囲むか?
三つ作るか一つに纏めるか、リクエストとかあれば参考にするんだけどねぇ。まぁどうせそのうちまた頭の中に語りかけて来るでしょ。
最初のお供え物は羊羮とお茶でいいかな。
「気が付いた?アンタ大丈夫なの?」
「まだダルいかな」
「もう少し、ダルいのが抜けるまで入ってなさい。ほら、これ」
「あぁ、ありがとう」
麻酔の影響なのか体がダルく感じるが動くぶんには問題なさそう、怒られそうだから大人しく入渠している事にした。そんなことを考えながら、叢雲が差し出してくれた手鏡を軽く礼を言いながら受け取ったのだが、容姿がまた変わってしまっていた。
半分だけが白かった髪は完全に白髪に変わり、オレンジっぽかった両瞳は片目が赤になり、両手両足が継ぎ接ぎされた感じなのは変わらなかったが、尻尾は多少可愛げはあるがレ級の様になり、尚且つ二尾になってしまった。
何故かこの尻尾見てると犬を連想してしまうんだが、エラー娘何か変なことしてないよね?
顔風呂から出して気持ち良さそうにしてない?
え?別な意識とか宿ってないよね?あ、こっち見た……尻尾振ってるビジョンが見える……取り敢えず頭撫でとく……あー、目茶苦茶喜んでるわ。もう一匹もこっちも撫でろって頭押し付けてくるし、あー、よしよし。
これ大丈夫なのか?艦娘見ても破壊衝動とかないみたいだけど、俺自身も最早深海棲艦の見た目だぞ?オヤジ顔な以外。
「……はぁ、なんなのよそれ?完全に犬ね。……それにしても信じられないわ、提督がこんな状況なのにあんなにはしゃいじゃって」
「しょうがないんしゃないか?久しぶりにまともに動けてるんだろうしな。腕は治せなかったのか」
そう、長門の目や髪の色は治っているのだが、左腕はそのまま南方棲鬼の様な形になっている。
だが問題なく動けてはいるようだ。
「……アンタの体、それ以上深海棲艦のパーツ入れたら比率が片寄って危ないそうよ」
「だからか……叢雲にも返したかったんだがな」
「っ!?何の……いえ、気付いてたの?」
予想は当たっていた様だ。
おかしいとは思っていた。叢雲の右目が赤いことと片足がやけに白っぽい気はしていたのだから。
「やっぱりかぁ」
「かまかけたわけ?」
「だったら良いなとは思ってたよ。何か言いたそうにしてたし」
「……ごめん。後でちゃんと話すわ」
なんとなしに周りを見渡して長門と目が合うと、こちらに向かってきた。
「提督、ありがとう」
深々と頭を下げ礼を言う長門は言葉を続けた。
「早速だが、直ぐにでも出撃させて欲しい」
イキイキとした表情で自信たっぷりに言われたが、答えは決まっている。
「却下、絶対駄目」
「何故だ」
いやいや、驚くなよ?普通に考えれば理由なんて分かるだろうに。
「そうよ!せっかく姉さんがやる気なのに!」
あらあら、この娘、残念な娘?陸奥は持ってなかったからよく分からないのよね。
姉が復活して嬉しすぎておかしくなってるだけなのを祈ろう。
「馬鹿たれ、長いこと動いてなかった奴を前線に出せるか……暫くはリハビリと演習だな」
「私はやれるぞ!」
「いい加減にしなさいよ!」
ついに我慢出来なくなったのだろう。
バチンという大きな音がして、長門が頬を押さえて後ずさる。
「ちょっと!?なんなの!?」
頬を押さえて立ち竦む長門と、対照的に大声を上げて叢雲に詰め寄る陸奥。
「陸奥!アンタは引っ込んでなさい!……長門!私との約束忘れたわけ?今のアンタ、みっともないわよ?」
「む、叢雲?……っ!?まさか、いや、しかし……お前、なの、か?」
「さあ?どうかしらね……提督、執務室で待ってるわ。五十鈴、提督の案内よろしくね」
「はい!……ぇ?ぁ、ぁぁ」
シャキッと姿勢を只して返事をする五十鈴、昔からそういう関係だった故の条件反射だろうか、自分の行動に驚いた後に理解して泣き出した。
呆然としていた長門も両目から涙が止まらない。
その一方で何があったのか理解が追い付かない他の艦娘も、五十鈴の様子からある程度は察したのか泣き出す娘ばかりだった。
つまり、風呂に入ってグッタリしている俺の回りには泣いている娘しかいないわけで、かといって何て声をかければいいかも分からずに、気まずい時間を過ごしていた。
「五十鈴です。提督をお連れしました」
「五十鈴には悪いんだけど、提督だけ入って」
「はい、どうぞ提督」
五十鈴が頷いたので俺だけが中に入る。
叢雲がいたのは入って正面にあるソファーの方、既にお茶が用意されていた。
「座って?」
「ああ」
「どこから話そうかしら、やっぱり最初からの方が分かりやすいわよね」
「確かに、なるべく時系列があってた方が分かりやすいな」
それから叢雲は語り始めた。