「ここは…何処だ?」
俺は見知らぬ場所にいた。白い何もない空間に…まだ夢を見ているのだろうか?
「やあ、ディア・エバレン君。初めまして…と言うべきかな」
「っな!?あなたは!」
まだ俺は夢を見ていて、この空間には一人だと思っていたが俺以外にもう一人いた。その人は俺の心の望みに映し出された、アンバーの瞳をした彼だった。
「ディア、君に話さないといけない事がたくさんある」
「いったい俺に何を…」
彼は意を決したような面持ちで佇んでいた。彼はこれから何を話すのか、俺には想像もつかない。
「まず、ディアは私であり私でない。私はディアであり、ディアでない者なんだ。だから君が見たみぞの鏡に映っていたもの…あれは私の望みだ」
俺は彼の話に、全く頭の回転が付いて行かなかった。それ以前に矛盾している話を、理解なんて出来ない。
「これでは意味が分からないと思う。だから、ディア…君に問いたい。君の真名は何だい?」
「教えるわけがないだろ!まだ話の意味まではわかってないが、あなたのその形貌と真名がある事を知ってるってことはエバレン家の者だろ。なら、俺にエバレン家の掟を破らさせる気か!?」
エバレン家にはある掟がある。そのうちの一つに、主となる者が出来るまで己の本当の名を"真名"を誰かに教えてはいけないというものがある。"真名"を家系の者以外の誰かに知られれば、契約までとはいかないがそれに近いものが結ばれてしまう。
「破らせるなんて、そんな気はないさ。それに、エバレン家の家系の者には名を明かしても意味がないことは知ってるだろ?まあ確かに意味はないとはいえ、それもタブーとされてる…だけど今は話を進める上で必要な事なんだ」
「それはどういうことですか…それに俺はまだあなたの仮名すら聞いてない」
俺がそう言うと、彼はにやりと意味ありげな笑いを顔に浮かべた。
「そうだったね。私はディアの事を知っていたものだから、私の名前も言ったつもりでいたよ。ではディア改めまして、私の名前はバレット。バレット・エバレン、以後お見知りおきよ」
「ウソだろ…だってその名は…」
彼がさっき言っていたことの意味を少し察した。"バレット"その名は俺に深く関わりすぎている。バレットは俺が動揺しているのも気にせず話を続けた。
「バレット…それは私の仮名にしか過ぎない。だからもちろん私にも真名がある。私の本当の名は…"ディア"、ディア・エバレン。そして君の本当の名は"バレット"、バレット・エバレンで間違いないね?」
彼は最後に確信に満ちたように俺の真名を聞いた。俺は頭の中が真っ白になり思考が停止した。
「何処の家系でも、先祖の名にあやかって名付ける事もある。だから君の両親が偶然私の名を付けたのかもしれない。だけど、君にはもう一つ偶然が生まれた…」
俺は固唾を呑んで次の言葉を待った。
「君は私の魂の生まれ変わりだ!」
「っえ!?でも、俺の前世は…」
「この世界ではない、何て言うなよ。それなら君の前世の名は、家族構成は、何処で生まれ生活し、何処で何故死んでからこの世界に来た。何一つはっきり知らないんじゃないか?そもそも、君がよく言うハリーポッターの世界に"エバレン家"何てもの存在しないだろう」
彼に言われるまで、今までおかしいと思いもしなかった。確かに前世の名前も家族がいたのかも、何故死んだのかも思い出せない。だが仮に俺が元からこの世界の住人だったとしても、俺のこの知識はどこからきたんだ。俺が起こるかもわからない未来を何故知っているんだ。
「仮にあなたの言い分が正しいとしよう。それなら俺が別の世界だと思い込んでいた、この世界の未来の知識はどう説明する?未来なんて知る機会がないじゃないか」
「そんなの簡単さ、僕の母方の先祖はバブラツキー家と言う予見者だ。私のこの瞳の色は母方の血を受け継いだ証で、僕は予見者の力を色濃く継いでいた。まあ制御は出来ず、パラレルワールドの未来まで見たこともあったから、そのうちのどれかが消されず君の記憶として受け継がれちゃったみたいでね」
「その記憶を俺が勘違いして理解した結果、別の世界に転生したと思い込んだというのか?」
「ああ、そうだよ」
俺の前世はディアであってバレットなのか…でもそれを否定した理由がまだ残っている。複雑すぎて訳が分からなくなってくる。俺はいったい何者なんだ。
「私の魂の生まれ変わりという事には納得してくれたかな?今から君と私が違う者だという説明をしたい。矛盾しているようだが、これがそうでもないんだ…」
彼はそう言うと話をし始めた。
鏡に映っていたもう一人はやはり闇の帝王で、彼は闇の帝王のサーヴァントとして契約を結んでいたそうだ。契約を結べば主と絆が生まれ、生涯を共にすることになる。主が死ねば絆の影響でサーヴァントも死ぬ。だから彼の主が死の呪いの撥ね返りを受けた時に、彼も絆の影響で死の呪いを受けたことになる。彼は死んだはずだった。彼は主と違って分霊箱を作っていなかったからだ。
だが、"死"に対しての契約の絆はやはり強かった。闇の帝王の魂の一部がハリーに入り込んだように、彼も死ぬ瞬間一緒にいた使い魔に彼の記憶(データ)が入り込んだ。その使い魔が何とアルブスだ。しかし記憶だけでさすがに魂は残らなかったため、彼の魂は浄化された。そして転生した彼の空の魂に、俺と言う新たな記憶(データ)がつくられていった。
同じ魂であるが中身(データ)が違う。だからそれはもう、彼が言う「ディアは私であり私でない。俺はバレットであり、バレットでない者」に繋がるらしい。
「アルブスと猫になった君の瞳の片方が黄色くなるのは、私の記憶(データ)の影響なんだ。ちなみに私の動物もどきの姿は八咫烏だよ。フフッ、本当に偶然が重なるよ。いやもう必然だったのかな…君の杖の芯は私の一部だ。ある杖職人に提供したんだがディアに戻るとはね」
「もう頭がパンクしそうなんで勘弁してください…もうさすがにないですよね?」
今日だけでいろんなことがわかった。本当にこれ以上何かを知ってしまったら、俺自身どうしたら良いのかわからなくなる。しかし彼は、またあの笑みを浮かべた。
「じゃあ、最後に…帰ったら左胸を見るといい。我がマスターとの仮契約印が刻まれているだろう。それはディアが私と接触した影響で、記憶の私と魂が共鳴したからだ。マスターと本契約を望まないなら、マスターに真名を告げるな」
彼は最後の最後にとてつもない爆弾を落としてくれた。そして、白い空間が黒く塗りつぶされるように暗くなっていく。
「ディア、アルブスの両目が青くなった時、私は消える。消えるというより、ディアに同調するという方が正しいのかもしれないが…だからディアに頼みたい。マスターを助けてくれ…トムを…」
その言葉を最後に俺の意識は途切れた。
今回は書いてる私自身が途中で訳が分からなくなりました(笑)
不可解なところがあったら教えて下さい <(_ _)>
次回、ドラゴン